小学生の頃、高崎の町にあそびに行って帰って来る時に利用できるバスには系統が4種類あった。里見経由室田行き、権田行き、川浦行き、そして薬師温泉行き。薬師温泉行きのバスは旧式も良いところで、排気ガスで車体全体が真っ黒になっているような、足の重そうなバスが使われていた。
薬師温泉行きのバスが無くなってからもうしばらく経つが、上記のように、私にとっては昔からなじみ深かった薬師温泉だが、今日、生まれて初めて行ってみた。
「薬師温泉かやぶきの郷旅籠」-廃れてしまった温泉宿を、数十年前にどこかの資本家が買い取って、日本各地の古民家を移築したりしてリニューアルした山中の一軒宿。日帰り利用は1,000円だが、優待利用が出来てラッキーだった。
数棟の古民家はさすがに素晴らしいのだが、それ以上に温泉棟の高級感・清潔感は、伊香保や草津のちょっとした高級宿並で、意外だった。さらに温泉もさっぱりする泉質で、温度もちょうどよく、30分以上ずっと浸かっていてよく温まった。
開湯300年くらい経つ湯治場だったらしいが、バスが出ていた頃の温泉宿はどんなだったのだろうか。
温泉街など無い秘湯だが、自宅から1時間かからないこの宿に泊まり、こまかく古民家や古民具を見てまわり、あとはなにもせずのんびり過ごすのもよいなと思った。すこしお高めの宿なのだが、従業員の方のサービスも上質だし、広大な施設の維持費・冷暖房費などを考えれば、高いのも妥当だろう。
館内のそば処で忍者そばを食べたが、使ってあるいかすみの風味はあまり感じなかった。また、雛人形の展示が始まっていた。
無くしたくない素晴らしい温泉だ。こういう発見ができた休日は、とても充実感がある。