白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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阪急納涼囲碁まつりin東京

2016年08月14日 20時05分01秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日から明日にかけて、阪急納涼囲碁まつりin東京が行われています。
本日は女流デーという事で、女性が中心のイベントになりました。
大阪同様、様々な企画が行われたそうです。
当ブログでは女流トーナメントにスポットを当ててみましょう。
ご紹介するのは第2局、謝依旻女流五冠(黒)対万波奈穂三段戦です。



穏やかな序盤戦でしたが、左辺白△の打ち込みから戦いが始まりました。
黒としてはこの白を攻めたい所ですが、その方法は?





黒1のコスミツケは根拠を奪う攻めですが、この場合は良くありません。
白△に石が来ており、左辺に黒地を作る余地がないからです。
白10まで黒模様を消しながら治まられ、黒は得たものがありません。
それどころか白Aあたりから上下の絡み攻めさえ狙われています。
これは完全に方向違いの攻め方でした。





攻めの方向としては黒1とケイマして中央を止めるのが正解です。
上辺の黒模様を大切にしなければいけません。
ただし白4と打たれるとあっさり左下白と繋がってしまい、これ以上攻めが続きません。
黒はこれでは物足りないと判断しました。





そこで実戦は黒1のツケでした。
いわゆるモタレ攻めで、先にこちらの逃げ道を塞いでおこうという作戦です。
次に黒Aのハネがきついので・・・





実戦は白5までと受けました。
そこで黒6とかぶせ、白Aと打っても繋がりません。
戦上手の謝女流五冠らしい打ち回しでした。
なお、黒△や黒4が繋がっていないのが気になる方もいらっしゃるでしょうが・・・





もし白が取りに来れば捨ててしまえば良いのです。
黒6まで、白△を大きく飲み込んでは断然黒良しです。





実戦は白も左下には目もくれず、白1と左辺でサバキに入りました。
ここで黒は上辺の模様が大切なので、AやBで白を閉じ込めようとするのが一般的なプロの感覚です。





ところが実戦は黒1と下をハネました。
これはかなり意外な選択でした。
というのは白2、4が常用のサバキ筋で、黒が良くないとされているからです。
次に黒Aと後退するようではいけませんから・・・





黒1、3と切りましたが、白4と出られて上辺を破られてしまいました。
黒Aと押さえても白Bと切られ、傷だらけの黒はどこかを取られます。





しかし謝女流五冠としては当然予定の行動でしょう。
あえて白に上辺を破らせ、その上で白石を強攻する作戦のようでした。
実戦白6と打たれた場面を見ると、上辺黒も弱くて心配です。
それでもこの進行を選ぶという事は、余程攻めに自信があるのでしょうね。
この迫力が五冠の原動力かもしれません。





しかし万波三段も手の見えには定評があります。
黒の取りかけに対して巧妙なシノギを見せました。
白△と切り、黒にはAの傷があるのでどこかの石が取られます。
こうなっては白大優勢になりました。

しかし、ここで終わらないのが公開対局です。
万波三段がサービス精神を見せ、戦いは延々と続きます。
最後は巨大なコウ争いになり、謝五冠の大逆転勝ちとなりました。


明日の2日目には井山七冠をはじめとする一流棋士が多数出演します。
当日券もあるそうなので、ぜひご参加ください。
なお私は有楽町で通常の指導碁を行っておりますが、暇になる予感がします
あえて私の方にお越しになる方も大歓迎です!