白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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攻めの方向

2016年08月20日 17時04分27秒 | 仕事・指導碁・講座
皆様こんにちは。
本日は指導碁を題材にします。
テーマは「攻めの方向」です。
置碁で上手の石を攻めるのは大事ですが、有利な戦いのはずなのに何故か失敗してしまう事があります。
その原因として良くあるのが攻めの方向を間違えてしまうケースです。
それでは実例を見て行きましょう。



4子局、白△と動いた場面です。
周囲には黒石が多く、有利な戦場と言えます。
黒、どうやって攻めますか?





実戦は黒1、3でした。
このような打ち方をされる方は非常に多いですが、不正解です。
何故でしょうか?





実は黒△の一団も根拠の無い弱い石でした。
白3が中央へ進出しながらのモタレ攻めになっています。





白のモタレに受けていると、白4と閉じ込められて黒危険です。





そこで止む無く黒1と脱出しましたが、白2と連打されてしまいました。
白10まで好形に進出されてもう攻めは利きません。
黒は左下に僅かな地を増やしただけで、攻めは失敗です。
左下の強い石から動いたのが方向違いでした。





正解は弱い石から動く、黒1のボウシです。
左下は強い石で、守りは黒5の一手だけで十分です。





白1から下辺で生きられますが、気にする事はありません。
念のため黒8、10と薄みをカバーしておいてから黒12の大場に向かいます。
碁盤の左上を中心に、大きな黒模様が出来ているように見えませんか?
2つ前の図と比べてみてください。





なおボウシまで行くのが怖いという方には別解もあります。
黒1、3はやはり弱い石から動く発想で、モタレ攻めでもあります。
白10まで交換しておいてから黒11とケイマすれば、安全に白を閉じ込める事が出来ます。

いずれにしても弱い石から動くという事に気を付けていれば、有利な戦場で逆に攻められるという事は無くなります。
攻めが苦手な方は、この原則が守れているかどうか確認してみましょう。