白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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世代別トーナメント

2016年08月15日 22時40分14秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日は有楽町囲碁センターにて指導碁を行いました。
ご来場頂いた方々、ありがとうございました。

また、本日は阪急納涼囲碁まつりin東京の2日目が行われました。
様々なイベントが行われましたが、当ブログでは世代別トーナメントの1局を振り返ってみましょう。
決勝戦、山下敬吾九段(黒)対井山裕太七冠戦です。



目外しからの大斜定石が2つと、見たこともない序盤です。
山下九段、早くもサービス精神を発揮しているようです。
さてここで白番ですが、孤立した下辺星の白石をなんとかしたい所です。
どういう方針で行くべきでしょうか?





白1、3は堂々の一間飛びですが、この局面ではやや鈍重な印象です。
大斜定石2つで黒は外勢を得ているので、白としては正面から戦うのは得策ではありません。
黒4の後は白が一方的に攻められそうです。





そこで実戦白1とは飛躍した発想でした!
軽快に打って黒を閉じ込める狙いです。
黒Aのハザマが気になりますが、もちろん対策はあります。





黒1、3には白4と切って戦いです。
局地戦なら白も石数が多いのでやれそうです。





黒1、3ならお互いに突き出し合う分かれになります。
黒地が大きく見えるかもしれませんが、厚みから地を増やした形なので嬉しくありません。
白が厚くなった事には大きなメリットがあり、例えば白Aあたりに打ち込んだ時には心強い援軍になるでしょう。






では黒がどう打つかという事になりますが、実戦はなんと黒1!
これまた飛躍した発想です。
白Aの切断が気になりますが、実は黒はそれを待っています。





白1ならそこで黒2を決行する予定でしょう。
白11までの結果は黒△と白1の交換が大きな利かしになっています。
2つ前の図と似ているように思われるかも知れませんが、トッププロには決して見過ごせない差があります。





そこで実戦は白も切断に行かず、白1から黒を大きく攻める作戦を取りました。
黒Aと繋がらせてまとめて攻めようという事です。
しかし黒も白の手には乗りません。
黒6と仕掛けて行きました。
この手も離れた手で危ないようですが・・・





白1から切り離して来れば黒6、8の出切りを決行するつもりでしょう。
白9には黒10とハネ、白は隅の利き筋を見られていて不自由です。





前図の後黒10までとなって白潰れです。
ちょっと黒に都合が良すぎる図ではありますが、大体こんなイメージでしょう。






白も黒の狙いが見えているので、実戦は先に白1と切りました。
この手の狙いは・・・





黒1から素直に取ってくれれば黒9まで利かしておいて白10を決行します。
黒Aからの出切りが無くなっているので、白は安心して戦う事が出来ます。





そこで実戦は黒1と備えました。
白2と連打されたのは痛いですが、代わりに黒3を決行して下辺で強く戦うつもりです。
最初の図からは思いもよらない大変化になりました。
この後も白Aから戦いが続き、さらなる変化に進んでいます。

戦いは延々と続き、最後は山下九段が大石を仕留めて中押し勝ちを収めました。
観戦者の方々も大喜びの面白い碁だったと思います。