白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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幽玄の間

2016年08月18日 19時18分01秒 | 幽玄の間
皆様こんばんは。
木曜日は棋士の手合日です。
幽玄の間でも多数の対局が中継されましたが、その中の1局をご紹介しましょう。



マイケルレドモンド九段(黒)対小林覚九段戦です。
黒のツケ切りは上下を連絡する狙いです。
白はどう応戦しますか?



白1、3は筋の悪い打ち方です。
白5と連絡にもう一手かかるので、黒6となっては黒にサバかれています。





この後白1から黒2子を取る事は出来ますが、黒に鉄壁の厚みを作られてはいけません。
おまけに左下の白まで心細くなって来ました。





ツケ切りに対して白1は筋の良い手です。
黒2と取ってくれば白11まで、これなら白もそれなりの戦果です。





しかし白1には黒2、4と打ってくるでしょう。
周囲の配石を生かした手段で、この後白は意外と手が出せません。





白1、3で1目取る事は出来ますが、6手かけて1目取るのではポン抜きとは呼べません。
団子を作っただけの結果に終わってしまいます。





かといって白1からあくまで分断を目指すのは、黒10となってAとBが見合いです。
どちらかの白が取られてしまいます。





実戦は白1でした!
余計な手は一切打たず、これだけで渡っています。
美しいと思いませんか?
今まで長い前置きがありましたが、この手だけご覧頂ければ十分です。
どう打っても白△が取れないのをご確認ください。





実戦進行です。
白が余計な手を打っていないので上の白石も取られません。
白4まで戦いに持ち込みました。





結果白14までとなりました。
白の形がのびのびしており、有利な戦いでしょう。


余計な手は打たず、必要な手だけを打つという発想でした。
皆様の参考にもなるでしょう。