白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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Master対棋士 第41局

2017年06月01日 23時59分59秒 | Master対棋士シリーズ(完結)
皆様こんばんは。
本日はMasterと金志錫九段(韓国)の対局をご紹介します。



1図(実戦)
金九段の黒番です。
黒7の後は、もちろん白AやBからの定石ではなく・・・。





2図(実戦)
例のMaster流(?)に進みました。
この型は黒△の1子を取れますが、白△の活力がほとんど無くなる上に、白✖が宙に浮いてしまうことが理由で、白で打とうとする棋士はほとんどいませんでした。
ただ、白11が以前は無かった発想です。
黒の厚みに近寄った手に見えますが、ここに打つことで白✖の石に大きな意味が出て来るとみているのですね。





3図(実戦)
後に黒は1と割って入り、白△を攻めようとしましたが、白2が軽快な一手です。
自分の石を補強しながら、次に白Aと打って白✖を助け、逆に黒△を攻める手を見せています。
白は右上の黒一団を、必ずしも厚みとは見ていないのです。

次に黒がAと受ければ無事ですが、一手かけることで全体の石の効率が落ちてしまいます。
そこで実戦は・・・。





4図(実戦)
黒1から反撃して行きました。
ただ、これは無理矢理こじ開けに行った感じです。
黒石がばらばらになり、白Aも残っているので、黒が苦しい戦いでしょう。

もっとも、それは金九段も承知の上でしょう。
これは41局目の対局ということもあり、既にMasterの力は分かっています。
ここで手堅く打っているようでは、チャンスは生まれないとみたのだと思います。





5図(実戦)
とはいえ、白1、3が実現した実戦は黒が苦しくなりました。
要石の黒〇が動けなくなり、△、✖、□の石も弱くなっています。
一方、右下白△は取り切られておらず、白の優位は明らかです。
大勢決した、と言って良いでしょう。

本局の白の打ち方も、一種の壁攻めと言えます。
人間とMasterは、壁の強弱の判断に大きな違いがありますね。