白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

本日の問題

2018年08月20日 23時59分59秒 | 問題集
<本日の一言>
最近、ツイッターのアカウントが凍結されやすくなっているようですが・・・。
囲碁界の人は危ないんじゃないかというツイートが流れてきて、定番ネタとは言えクスリときました。
殺すとか眼を取るとか、物騒な言葉がありますからね。


皆様こんばんは。
本日は時間が無いので、例によってストックしている問題を出したいと思います。



いかにも実戦を元ネタに作りました、という問題です(笑)。
白先ですっきり生きてください。

個人的に、問題の石数は必要最小限である方が美しいと思っているのですが、これは無駄石が多いですね。
また、さらに大きな問題点もありまして、それは生きることのできる初手が1通りではないということです。
良し悪しで言えば正解は1つですが、詰碁として出したら失題になってしまいますね。

このような手抜き作品ですが、手筋の問題として考えて頂きたいと思います。
解答は明日発表します。

子供の指導方針

2018年08月19日 23時22分21秒 | 囲碁について(文章中心)
<本日の一言>
大谷翔平選手、凄いですね。
世界レベルのパワーの持ち主なんて、ハンマー投げのあの人ぐらいかと思っていましたが。


皆様こんばんは。
最近、子供に囲碁を教える機会が増えています。
1つは学校などでの回数限定の入門教室です。
もう1つは、個人的な指導です。
後者の方は、ある程度長い期間に渡っての指導なので、人間的にも色々と変化を感じます。
ある時は、数カ月会わなかっただけなのに、大きく背が伸びて雰囲気が変わった子にビックリしました。
またある時は、幼い雰囲気だった子に急に大人びた印象を受けました。
他にも、いつも自信無さそうにつぶやいていた子が、急にはきはきと喋るようになっていたということもありました。
皆しっかりと成長してくれていて嬉しいですね。
育てたのは私ではありませんが(笑)。

さて、今回は子供たちへの囲碁の指導方針についてのお話ししたいと思います。
まず結論から言ってしまいますと、「なるべく教えない」ということになります。
これは囲碁に限らずあらゆる分野に言えることだと思いますが、人に教えられたことより、自分で気が付いたり身に付けたことの方が、遥かに自分のものになりやすいのです。
ですから、私はなるべく子供たちに答えを教えません。
では何をやっているかというと、「気付き」の機会を提供するということになります。
単純な言い方をすれば、「ここでこう打てば良かった」と教えるのではなく、「ここでどう打てば良かったと思う?」といった問いかけをしています。
究極的には、私が一切口出しをせず、子供たちが全て自力で答えに辿り着いてくれるのが理想ですが、それは現実的には不可能なので多少の手助けをするということです。

これは指導法の基本ですから、多くの方が理解していることでしょう。
ところが、実際にはついあれはダメ、これはダメと教えてしまう方も多いようです。
気持ちは分かりますが、これは逆効果になってしまいます。
こうしろああしろと言われて、その通りに打つのでは自分で考える機会、学ぶ機会を失ってしまうのです。
良い手を打つにしても悪い手を打つにしても、全て自らの意思で決定するべきです。
そうでなければ、上達の問題だけでなく、対局も楽しくなくなってしまうでしょう。

ところで、棋士は自分の子供に強くなって欲しい時、どうしているかご存知ですか?
あれこれ教えてはいけないことは分かっています。
でも自分の子供である以上、囲碁の才能がある可能性が高いので、期待してつい口を出したくなる・・・。
そんな時、多くの棋士は自分以外の棋士の元に子供を預けます(笑)。
そうすれば自分が余計なことをする心配も無く、子供ものびのびと囲碁に取り組めると考えているのでしょう。

もちろん、全ての棋士がそうしているわけではありません。
中には自分で囲碁を教えて成功している人もいます。
ただ、それにはかなりの忍耐力が必要になるということなのでしょう。
親子ですと反抗期の問題もありますから、相性もあるでしょうか。

さて、今まで子供の話をしてきましたが、これは大人を指導する場合でも全く同じだと思います。
ただ、大人の場合、教わる側が答えを欲してしまいがちです。
その原因としては、教われば強くなると勘違いしている、分からない状態が恥ずかしい、講師を待たせては申し訳ないと思っている、などといったことがありますね。
しかし、それは上達に大きくブレーキをかけてしまう原因になると考えています。
あれこれ考え過ぎず、子供のように純粋に囲碁に取り組んで頂くと良いでしょう。

話が脱線し始めたので、本日はこれぐらいにしたいと思います。
大人も子供も、楽しみながら自然に上達して頂きたいですね。

書評・第18回 囲碁手筋大事典

2018年08月18日 23時40分46秒 | 書評

<本日の一言>
昔から視力が低く、目の疲れには悩まされています。
30代に入ってから、ますます酷くなったような・・・。
原因はスマホとパソコンだと思われるので、ブルーライトカットメガネを作ろうと思います。
おすすめのお店やブランドなどありましたら、教えて頂けると嬉しいです。


皆様こんばんは。
本日は囲碁の本をご紹介します。



「囲碁手筋大事典」 著・石田芳夫 1890円+税

辞典ではなく、事典です。
囲碁の「じてん」は、こちらで表記されていることが多いですね。
辞典は言葉や出来事の意味を解説するものですが、囲碁においては名前が無いものを解説することが多く、また意味よりも使い方を解説することが多いので、こちらの方が適切でしょう。

さて、言葉の定義はともかく、「じてん」です。
一般には国語辞典、英和辞典、百科事典など色々とありますが・・・。
これらを1ページ目から順番に読んでいく人は、かなりの少数派でしょう。
いわゆる読み物とは一線を画するものです。

しかし、囲碁の事典ではそれを読者に要求します(笑)。
これ以上なく硬派な部類の本と言えるでしょう。
もちろん、1割だけ読んでみるということならそう苦労はありませんが、それでは1割しか学ぶことができません。
これが例えば私の本だと、読み進めるごと難易度が上がっていく仕組みになっているので、とりあえず分かりやすいところだけ読むという方法も有効なのですが。

そして、この本は1つのテーマ図を示す度に、正解図・失敗図(または変化図など)が1つずつ付いてくるという形式ですが・・・。
テーマ図の数、なんと668!
大事典と名乗るだけのことはありますね。
内容の方も、石を取る手筋、死活、攻め合い、石の形など多岐に渡ります。
さて、この本の読み方ですが・・・。

①まずテーマ図を見て、正解を少しだけ考えてみます。
②正解図・失敗図(変化図)を確認します。

ということになるでしょう。
解説も付いていますが、図で何が起こったのか分からなかった時に確認する程度で良いと思います。
種類にもよりますが、手筋は理屈で覚えることが難しいものが多いです。
ですから、形そのものを覚えてしまうことが最も確実です。
そのために大事なのは、数をこなすことです。
ですから、必ずしもじっくり読み込む必要はなく、テーマ図と答えを確認したらどんどん先に進んで良いのです。

もちろん、最初はそれでも時間がかかるでしょう。
なにしろ668図ありますからね。
ですが、以前にもお話ししたように、繰り返し練習することが大切です。
そうすれば、テーマ図を見た時に答えが浮かぶようになってくるでしょうし、1周にかかる時間も短くなっていくでしょう。
例えば最初に5時間かかったとしても、2回目は3時間になり、3回目は2時間に・・・といった具合です。
本書の場合、私でも流石に3分というわけにはいきませんが(笑)。

ちなみに、失敗図・変化図に関しては、できれば一度ぐらいは読んでおいた方が良いと思います。
ただ、2回目以降は必ずしも必要ではなく、飛ばしてしまっても構わないでしょう。
これも時間節約のためです。
かなり手数が長いものもありますからね。
これは覚えておきたい、と感じたものだけやって頂ければ良いでしょう。

最後に少し補足しておきましょう。
まず、本書で覚えるべきはテーマ図からの数手の手筋です。
中には正解図が20手以上あるようなものもありますが、それを丸暗記するような必要は全くありません。

また、解説を見てもよく意味が分からない手筋もあるかと思いますが・・・。
「ふーん、そういうものか」と流しておいてください(笑)。
高度な手筋を無理に理解する必要はありません。
それでも、目に焼き付けておくだけで感覚は養われるでしょう。


囲碁の本には色々な種類がありますが、本書はとにかく囲碁が強くなりたい方向けと言えます。
ハードですが、効率の良い学習ができるでしょう。


本日のLeelaZero

2018年08月17日 23時59分59秒 | AI囲碁全般
<本日の一言>
最近の世界はトランプ大統領を中心に回っているかのようです。
良くも悪くも、歴史に名前が残ることになるのでしょう。


皆様こんばんは。
本日は幽玄の間で行われている、棋士とLeelaZeroの対局をご紹介しましょう。
対局相手はわさび(9P)です。



1図(テーマ図)
LeelaZeroの黒番です。
白△と挟み、右下黒を攻撃されましたが・・・。





2図(実戦)
即座に黒1と反撃!
狭い所に入ったようですが、白×の壁攻めを狙っています。
AIは序盤で隅に潜ることが多いですが、壁攻めの狙いとセットなのです。





3図(実戦)
黒1~7はモタレ攻めです。
このようにベタベタくっ付けていく打ち方も、AIの碁には多いですね。





4図(実戦)
黒1、3と押していく手も同様です。
5線を伸びさせると、一手につき4目白地を増やすことにもつながりますが、そこはあまり気にしていません。
隙を作らないことの方を重視しているようです。

黒はじっくり攻めているようですが、この後猛烈に力を出してポイントを上げていきます。
厚みや勢力といったものへの判断力の高さを感じる対局でした。

幽玄の間

2018年08月16日 23時59分59秒 | 幽玄の間
<本日の一言>
最近、オリンピック関連で色々な話が出てきますが・・・。
一時のイベントのために、日本社会のルールを変えるのは如何なものかと思いますね。


皆様こんばんは。
木曜日は日本棋院棋士の公式対局日です。
本日も多くの対局が幽玄の間で中継されました。
その中から、印象的だった対局をいくつかご紹介しましょう。



1図(小林-大森戦)
小林覚九段(黒)と大森泰志八段の対局です。
黒×が包囲されていますが、黒はどう凌いだでしょうか?





2図(大西-羽根戦)
大西竜平三段(黒)と羽根直樹九段の対局です。
白地が多い局面ですが、黒には左下から左上にかけての勢力があります。
黒としてはこれを生かしたいのですが、どこから仕掛けたものでしょうか?





3図(今村-六浦戦)
今村俊也九段(黒)と六浦雄太七段の対局です。
黒がバラバラになっているかのようですが、収拾を付けられるでしょうか?





4図(張-広瀬戦)
張瑞傑三段(黒)と広瀬優一二段の対局です。
Aの穴が非常に気になりますが、白がすぐに出切っても上手くいきそうにありません。
広瀬二段は、どんな構想を描いたでしょうか?


答えは幽玄の間でご覧ください。
他の人の対局を見るのは楽しいですね。