白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

王座戦五番勝負、開幕!

2018年10月26日 22時24分22秒 | 囲碁界ニュース等
<本日の一言>
11月3日(土)、日本棋院市ヶ谷本院にて第2回 FESTA DE GOが行われます。
「囲碁とあそびの祭典」ということで、斬新なイベントが多く用意されているようです。
詳細はこちらをご覧ください。
私は指導碁を担当しているので、そちらもぜひよろしくお願いします!
</本日の一言>

皆様こんばんは。
昨日はお休みしました。
忙しいときのために、記事のストックを用意しておく手もあるのですが、それはあまり好きではありません。
たとえ数日であっても、最新の自分の感覚と微妙にずれてしまうような気がして・・・(笑)。

さて、本日は王座戦五番勝負が開幕しました!
なんと、井山王座は同時に3つのタイトル戦を戦うことになります。

10日 名人戦第4局1日目
11日 〃2日目

15日 名人戦第5局1日目
16日 〃2日目

19日 天元戦第1局

22日 名人戦第6局1日目
24日 〃2日目

26日 王座戦第1局

1日 名人戦第7局
2日 〃2日目

恐ろしいスケジュールです。
各地を飛び回る上に、前夜祭などもありますからね。
世界戦に出場するために自ら望んだ調整とは言え、流石に疲れはあるでしょう。

さて、それでは対局の感想を述べたいと思います。



1図(実戦)
井山王座の黒番、黒△と打ち込んだ場面です。
上下の白がばらばらになりそうで、白が少し苦しそうに見えました。





2図(実戦)
しかし、白1、3とは凄い力技です!
黒Aとつながれる形は、まるで裂かれ形の見本のようですね。
勇気のいる打ち方ですが、一力挑戦者は読みに絶対の自信を持っています。





3図(実戦)
出来上がりは白が良くないと思っていたのですが、一力挑戦者には狙いが見えていたのですね。
巨大なコウ争いが勃発しました!





4図(実戦)
コウ争いの結果、お互いに×の石を取る、物凄い振り替わりになりました。
見た目はいかにも白がまずそうです。
形勢は黒が良いと感じますが、しかしこうした判断は印象に流されがちです。
実際には、黒が少し良い程度だったのかもしれませんね。

ここからの一力挑戦者の頑張りが素晴らしく、井山王座に読み勝っていたと思います。
やはり今年の一力挑戦者は一味違いますね。

攻めの方向音痴

2018年10月24日 23時55分24秒 | 仕事・指導碁・講座
<本日の一言>
最近は手書きで文章を書く必要がほとんど無くなり、便利な時代になりました。
一方で困った問題も発生しています。
漢字を読むことには問題ありませんが、書けなくなってきました・・・。
常用漢字どころか、教育漢字から勉強し直さなければいけません。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
NHK囲碁講座は毎月16日が発売日です。



今月の私の講座は、攻めの方向音痴です!
この表題を見てドキっとした方も多いのではないでしょうか(笑)。
本日の指導碁から実例をご紹介しましょう。





1図(テーマ図)
白△と逃げた場面です。
黒にとっては攻めのチャンスですが、AとBどちらが正しい方向でしょうか?





2図(正解)
実際のところ、色々な作戦が考えられる場面ではありますが、大事なのはしっかり状況判断をすることです。
難しい手は必要無く、黒1以下自然な手を打っているだけでどんどん黒模様が大きくなります。





3図(失敗)
実戦は黒1と力強くボウシしましたが、白2と頭を出されてみるとどうでしょうか。
白AやBからの出切りが気になりますね。





4図(失敗)
そこで今度は黒1と方向を変えましたが、ちぐはぐな動きになっています。
白12まで、下方にできるはずだった黒模様が雲散霧消、攻めによって損をしてしまう結果になってしまいました。


このようなことにならないよう、ぜひ私の講座で正しい考え方を身に付けてください!(笑)

名人戦第6局感想

2018年10月23日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等
<本日の一言>
11月10日(土)10時30分から、日本棋院市ヶ谷本院にて「西日本豪雨 復興支援チャリティーイベント」が行われます。
ご賛同頂ける方々はぜひご参加をお願いいたします。
私自身は都合により参加できませんが、なるべくチャリティーイベントには積極的に参加したいと思っています。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
本日は名人戦第6局の2日目が行われました。
早速振り返っていきましょう。



1図(封じ手)
封じ手は黒1でした!
うーん、これは予想外です・・・。
黒3に回ることはあり得ると思っていましたが、その前に黒1を決めるとは・・・。

黒1は単純計算で言えば先手5目ぐらいで、地としては極めて小さいです。
今決めなくても、白に打たれる心配は無いように思われるのですが・・・。
ところで、この手を見て脳裏に浮かんだ碁があります。





2図(名人引退碁)
囲碁マニアなら、一目で誰の碁か分からなければいけません(笑)。
「名人引退碁」、木谷実七段(黒)と本因坊秀哉名人の対局ですね。
この対局は打ち掛け20回という長期間に渡る対局なのですが、黒1は封じ手として打たれました。
これが当時物議を醸したそうです。
つまり、黒は白の受け方が1つしかない手を打って、一晩自由に考えようとしたのでは? ということですね。
秀哉名人もずるいと漏らしたとか・・・。

実際には、この黒1には今打つべき理由があり、それは後に秀哉名人も認めています。
いずれにしても、このエピソードからは勝負と芸について考えさせられますね。
張栩九段の封じ手の意図は、果たして・・・。





3図(実戦)
ここは高度な駆け引きでしたね。
行き当たりばったりのように見えるかもしれませんが、お互いに相手の裏をかこうとしてこうなりました。
私も困惑するやら感心するやら・・・。





4図(実戦)
白が劣勢のようでしたが、白1、3とは凄い勝負手です。
黒2、4と突き出され、自ら白×を危険にしているかのようですが、死中に活を求めたのです。
ボクサーが両手をぶら下げて挑発しているようなイメージでしょうか?


結果は黒の張栩九段が勝ち、ついに3勝3敗の五分に戻しました。
最終第7局で決着がつきます。
11月1日、2日は絶対に見逃せません!

封じ手予想

2018年10月22日 23時54分53秒 | 囲碁界ニュース等
<本日の一言>
私の囲碁人生において、ある残念なことがあります。
それは級位者の頃の棋譜が全く残っていないことです。
「あの頃はこんな碁を打っていたのか~」と懐かしむことができるのは、アマ三段ぐらいになってからのことです。
そんなこともあって、碁を覚えたての方と対局する際にもなるべく棋譜をお渡しするようにしています。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
本日は名人戦第6局の1日目が行われました。
早速振り返っていきましょう。



1図(実戦)
こっ、これはマネ碁
・・・かと思いましたが、よく見ると違いますね。
同じ形ができているのものの、対称にはなっていません。
第5局でも感じたことですが、両者が示し合わせて面白い碁形にしているかのようです。

ちなみに、驚きのあまり書き忘れましたが張栩挑戦者の黒番です。




2図(実戦)
しかし、この場面での驚きはそんな次元ではありませんでした。
白△の下がり!
こういう形は白Aとポン抜くしかない、というのが常識です。
プロが2000人いれば1999人はノータイムでポン抜くでしょう。
名人に定石無しとはよく言ったものですが、それにしても凄い・・・。





3図(打ち掛け局面)
さて、白△と打ったところで打ち掛けとなりました。
次の黒の手が封じ手ですが・・・。





4図(封じ手予想)
私の予想は黒△の当てです。
石の形からすればここしかありません。
ただ、ここまでの流れからして、形がどうしたと言われてもおかしくありませんが・・・(笑)。


明日の展開は予想が難しいですね。
ヨセ勝負になりそうな気がしていますが、激しい戦いになる可能性もあります。
いずれにしても良い勝負になるでしょう。

投了図

2018年10月21日 23時35分46秒 | 幽玄の間
<本日の一言>
水星まで7年。
長いような、短いような・・・。
いずれにしても研究結果が楽しみですね。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
本日は木曜日に幽玄の間で中継された対局の投了図に注目してみたいと思います。



1図(王-三谷戦)
王座戦予選、王立誠九段(黒)と三谷哲也七段の対局です。
白△と出たところで投了となりました。
続けて打つとどうなるでしょうか?





2図(王-三谷戦)
手順は色々と考えられますが、一例として白12まで、AとBが見合いとなって切れてしまいます。
上辺黒が助かりません。
よって投了止む無しですね。





3図(小県-山田戦)
同じく天元戦予選、小県真樹九段(黒)と山田規三生九段の対局です。
白△と置いたところで投了となりましたが、どういうことでしょうか?





4図(小県-山田戦)
黒が左側を受けている間に1線に白石がくるので、白6の切りが成立します。
これで黒3子が助からないので、地合い白有利ははっきりしています。


プロの投了図は良い教材になります。
皆様もぜひ注目してみてください。