いい女よりもいい男の数は少ない

男の恋愛ブログです。
過去の記事は随時掲載していきます。
以前読んで下さっていた方、ありがとうございます。

新卒者

2018-01-24 13:14:18 | 日記
まだ若いその男性は体育会出身だった。スーツを着て営業マンをしていた。就職するというのは大変な事だな、と事あるごとに感じていたが、まさかこんなにすぐ退職するとは思っていなかった。

大学時代の後輩とは仲が良かった。後輩も就職してサラリーマンとなり、会えばお互い仕事の愚痴を話した。時々会って食事をしていくうちに後輩の見た目の変化にすぐに気付いた。どんどんマッチョになっていったからだった。聞くと、スポーツクラブに通い始めたとのことだった。途方もなくイケメンでありながら体は細かった後輩。同じ部活で知り合った。体だけが自慢のマッチョな先輩は、絶対的に格下だった後輩が体を鍛え始めた事に動揺した。

後輩がコンテストに出場して入賞した。それを知り、激しい嫉妬に襲われた。後輩であり友人がこうしてinstagramで華々しい大会写真を掲載しているのを苦々しく見つめていた。何も成し遂げていない自分。そもそも何も目指してもいない人生だ。なりたかったのかどうかも分からないサラリーマンになって、日々過ごしている。マッチョでイケメンだと大学時代は言われていたが、有名選手でも何でもない自分が世間で話題になる事などない。あくまで身内内でチヤホヤされていたに過ぎないのだ。しかし後輩は違う。有名選手でも何でもない存在だったが、こうして有名になっていった。今や体は自分よりもマッチョだ。おめでとうと思ったし、凄いと尊敬もした。だが許せなかった。くやしかった。彼がというよりは自分に対してかもしれない。ただただ面白くなかった。

「トレーニングを本格的に始めることにしたから、時間あまりないよ。」

ずっと付き合っていた彼女とは疎遠になっていった。週末はデートしていたのに、トレーニングをしたいと思ったからだ。心が明らかに離れていった。女性が好きだし、女性とSEXしたい。でも、トレーニングの方を優先したい。自然な流れで彼女と別れ、会社も退職した。トレーニングを安定してする為には残業が多い正社員生活は邪魔だった。学生時代のようにアルバイト生活を始めたものの一気に貯金は底をついた。

元々マッチョだった彼はあっという間に現役時代の体に戻すことができた。顔も後輩ほどではないが世間ではイケメンの部類だ。割と自由に時間はあるので夏は海に行ったりジム帰りにタンクトップで街中をふらふらしているとたまに色々な人から声を掛けられた。変な勧誘や体目当ての痴女みたいなのが大半だったが、その中でも有名なクラブ関係者には連絡先を渡した。そして、いつしか女性向けというかノンケの普通のクラブイベントにスタッフとして不定期で働くようになっていた。

何人かの後ろで賑やかしとして半裸でステージに上がるようになった。パフォーマーという程でもなかったがマッチョな若い男が脱いでいるだけで話題にはなった。手が空いている時は観客がいるエリアに行ってもいいという事になっていたので半裸でふらふらしていると、気さくに客から声を掛けられちょっとした有名人の気分に浸れた。半裸でマッチョを誇示する事でチヤホヤされる。服を着ていたら普通の男だが脱ぐと女性が群がりシャッターを浴びるのだ。instagramでいつも脱いで自撮りを上げている男達の気持ちが少し分かる気がした。

「夢、というのは特にないですけど、マッチョにはなりたいですね。」

若くてマッチョで純粋な彼が多くの人に愛されて有名になっていく気がした。