「オレが守るから下がってて」
「はい」
彼女は、100 VS 100 のバトルが売りのゲームでソロで戦っていた。実はオンラインゲームは初めてだった。マウス操作も慣れておらず中々敵を倒せない事が多かった。スキルや戦略は頭に入れていたが、指が追い付かないのだ。向いてないのかな、とも思ったが好きな世界観のゲームだったので、気を取り直してモニターを眺めていた。
「こっちに来て、回復するから」
「いつもありがとうございます」
初心者ギルドに入ってみた。ゲームよりもギルドでチャットをしているのがまた楽しかった。毎日ログインしているとこんな仮想空間でも友達ができてくる。意地悪な人もいれば面倒見がいい人もいて個性があった。ゲームだから楽しまなくちゃと気楽に勝ち負けを楽しんでいたが、チームプレイである以上上級者が彼女のような初心者のサポートをしてくれて成り立っているのだと少しずつ分かってきた。私がもっと上達すればギルドマスターは楽になるんだわ。そう思うと彼女は真剣にゲームに取り組んだ。
「オレ、違うギルドに行こうと思うんだ」
一番話しかけてくれた男性ユーザーがギルド移籍をすることになった。もっとガチなところでやっていきたいと。心に一筋の風が通り抜けていった。どうでもいいと思っていたゲームの世界で、私自身が少しずつ真剣に取り組むようになっていって、楽しいと思うようになった今、彼が抜ける。フィールドでよくフォローしてくれた事が思い出される。気付いたら彼女も彼の後を追って移籍することになっていた。
中級のギルドに2人で移籍した。人間関係ができていたからアウェイの環境の中でも2人の息はぴったりと合っていたと思う。しかしそんな楽しい日々も長くは続かず、彼は段々とログインをしなくなっていった。スマホゲームをよくやっていたから分かる。もう彼はこのゲームは続かないだろう。なら私が、そう決心し彼女はトップギルドの1つに移籍することになった。
罵倒や煽りを受け、たかがゲームで何をここまで、と思う毎日だったが我慢した。しかしギルドチャットでは名指しで罵倒されるようになり、とある負けた試合では私のせいだと古参の1人から非難された。私とは一緒に出撃したくないと言うのでそれではチームとして成り立たないので私がギルドを抜けることにした。何か情熱というかゲーム愛みたいなものはもう消えてなくなっていた。思えば初心者の私がよくここまで来たものだ。マウス操作もよく分かっていなかったのに今では攻略サイトが作れる程だ。上位ギルドでは通用しなかったが、自分のせいだけでもなかったと思いたい。またソロに戻ってしまったが、時々知らない人達に戦場で声を掛けられるのでさみしくはなかった。また昔のギルドに戻ろうとは思わない。色々な事を思い出しながらプレイしていると、1人で始めたゲームだったのに孤独を感じた。
「オレが守るから下がってて」
あの彼は、結局ログインしなくなって引退した。大学生だったのだろうか、それとも社会人だったのだろうか。もし実生活で出会っていたら、ゲーム以上の何かが始まっていたかもしれない。
「はい」
彼女は、100 VS 100 のバトルが売りのゲームでソロで戦っていた。実はオンラインゲームは初めてだった。マウス操作も慣れておらず中々敵を倒せない事が多かった。スキルや戦略は頭に入れていたが、指が追い付かないのだ。向いてないのかな、とも思ったが好きな世界観のゲームだったので、気を取り直してモニターを眺めていた。
「こっちに来て、回復するから」
「いつもありがとうございます」
初心者ギルドに入ってみた。ゲームよりもギルドでチャットをしているのがまた楽しかった。毎日ログインしているとこんな仮想空間でも友達ができてくる。意地悪な人もいれば面倒見がいい人もいて個性があった。ゲームだから楽しまなくちゃと気楽に勝ち負けを楽しんでいたが、チームプレイである以上上級者が彼女のような初心者のサポートをしてくれて成り立っているのだと少しずつ分かってきた。私がもっと上達すればギルドマスターは楽になるんだわ。そう思うと彼女は真剣にゲームに取り組んだ。
「オレ、違うギルドに行こうと思うんだ」
一番話しかけてくれた男性ユーザーがギルド移籍をすることになった。もっとガチなところでやっていきたいと。心に一筋の風が通り抜けていった。どうでもいいと思っていたゲームの世界で、私自身が少しずつ真剣に取り組むようになっていって、楽しいと思うようになった今、彼が抜ける。フィールドでよくフォローしてくれた事が思い出される。気付いたら彼女も彼の後を追って移籍することになっていた。
中級のギルドに2人で移籍した。人間関係ができていたからアウェイの環境の中でも2人の息はぴったりと合っていたと思う。しかしそんな楽しい日々も長くは続かず、彼は段々とログインをしなくなっていった。スマホゲームをよくやっていたから分かる。もう彼はこのゲームは続かないだろう。なら私が、そう決心し彼女はトップギルドの1つに移籍することになった。
罵倒や煽りを受け、たかがゲームで何をここまで、と思う毎日だったが我慢した。しかしギルドチャットでは名指しで罵倒されるようになり、とある負けた試合では私のせいだと古参の1人から非難された。私とは一緒に出撃したくないと言うのでそれではチームとして成り立たないので私がギルドを抜けることにした。何か情熱というかゲーム愛みたいなものはもう消えてなくなっていた。思えば初心者の私がよくここまで来たものだ。マウス操作もよく分かっていなかったのに今では攻略サイトが作れる程だ。上位ギルドでは通用しなかったが、自分のせいだけでもなかったと思いたい。またソロに戻ってしまったが、時々知らない人達に戦場で声を掛けられるのでさみしくはなかった。また昔のギルドに戻ろうとは思わない。色々な事を思い出しながらプレイしていると、1人で始めたゲームだったのに孤独を感じた。
「オレが守るから下がってて」
あの彼は、結局ログインしなくなって引退した。大学生だったのだろうか、それとも社会人だったのだろうか。もし実生活で出会っていたら、ゲーム以上の何かが始まっていたかもしれない。