(書評)
エドワード・リア 柳瀬尚紀『ナンセンスの絵本』(ちくま文庫)
翻訳者が遊んでいる。
*
若き乙女の生まれはハル
これを追いかけ牡牛の春
(p128-129)
*
「春」の真意は<春情>か。
*
There was a Young Lady of Hull.
Who was chased by a virulent Bull;
*
私の一番好きな絵は「娘の生まれはポルトガル」(p166-167)だが、彼女の顔が文庫本の喉になっていて見えにくい。
(終)
(書評)
エドワード・リア 柳瀬尚紀『ナンセンスの絵本』(ちくま文庫)
翻訳者が遊んでいる。
*
若き乙女の生まれはハル
これを追いかけ牡牛の春
(p128-129)
*
「春」の真意は<春情>か。
*
There was a Young Lady of Hull.
Who was chased by a virulent Bull;
*
私の一番好きな絵は「娘の生まれはポルトガル」(p166-167)だが、彼女の顔が文庫本の喉になっていて見えにくい。
(終)
漫画の思い出
花輪和一(14)
『護法童子・巻之(一)』(双葉社)
「旅之壱 呪文月を巡るの巻」
ヒロインの唱える呪文が私には読めない。「南牟阿迦捨羯樂耶」と書いてあるらしい。
*
もとはヒンドゥー教でa字を観ずることが行なわれていたが、密教がそれを取り入れた。密教では全宇宙が、〈阿〉の1字に集約されているとみる。サンスクリット語のa字は、すべての文字の最初に位置すること、サンスクリット文字にはすべてa音が含まれて、またa字はサンスクリット語のアウントパーダanutpādaの最初の文字にあたり、それは〈本不生(ほんぷしょう)〉つまり生も滅も超えた宇宙の本源を象徴すると考えられたため、阿字を絶対の真実、大日如来(だいにちにょらい)と同一視する〈阿字本不生〉、また一面、胎蔵(たいぞう)大日に限定する場合もある。
月輪(がちりん)の中、蓮華(れんげ)の上に、悉曇(しったん)文字でaを書いて眼前に掲げ、行者(ぎょうじゃ)が冥想(めいそう)して、阿字を通して大日如来と一体となる法を〈阿字観〉という。密教の修法(しゅうほう)は原則として特定の資格をもった者にしか許されないが、阿字観は在家(ざいけ)の者にも授けてよいとされる。
(『岩波仏教辞典』「阿字」)
*
在家信者であるヒロインの唱える呪文のせいで、妹が苦しむことになる。生兵法は大怪我の基という説話らしい。
護法童子を、ヒロインは大日如来と取り違える。
(14終)
漫画の思い出
花輪和一(13)
『護法童子・巻之(一)』(双葉社)
目次 護法童子縁起 呪文月を巡るの巻 鬼娘の巻 鬼神の巻 気の巻 おんあぼきゃの巻 おんあびらの巻 猫館の巻 神なし峠の巻 天人様の巻 ねずみさまの巻 鬼やらいの巻
「旅之序 護法童子縁起」
少年と少女が合体して護法童子に変身する。そんな言い伝えか何かがあるのだろうか。『ウルトラマンA』みたい。
*
仏法守護の護法善神に使役される童子姿の鬼神。護法天童。(『広辞苑』「護法童子」)
*
護法童子は『信貴山縁起』に出てくる。
*
奈良県信貴山朝護孫子寺(ちょうごそんしじ)にまつわる次の三つの説話からなる。信濃(しなの)から出て東大寺で受戒した命蓮(みょうれん)が夢告で信貴山に登り、里にも下らず修行し、鉢を飛ばして供物を得ていたが、供物を怠っていた山崎の長者の米倉までもその飛鉢(とびはち)で信貴山に運んでしまう話。命蓮が醍醐(だいご)天皇の病気を法力をもって剣の護法童子(ごほうどうじ)を遣わして平癒させたという話。尼である命蓮の姉が信濃国から彼を尋ねて東大寺に行き、大仏のお告げで信貴山に至って再会する話。
(『日本大百科全書(ニッポニカ)』「信貴山縁起」)
*
『信貴山縁起絵巻』の「飛鉢」が日本史の教科書に載っていたと思う。
(13終)
『ドラえもんの学習シリーズ ドラえもんの算数おもしろ攻略~算数まるわかり辞典 1~3年生』(小学館)
いよいよ、割り算だ。褌を締め直せ。
足し算⇔引き算
⇕ ⇕
掛け算⇔割り算
この関係、知ってるよね。
*
わり算とは、「ある数を同じ数ずつ分ける」計算のことだよ。
(p68]
*
そうかなあ。この定義だと、余りについて説明できない。
つまり、〈7÷2=3.5〉しかできない。〈7÷2=3…1〉ができない。しかも、小数はまだ習っていないと、手も足も出ないよね。
*
偽ドラえもんは、突然、答えを出す。
*mmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmm
たとえば12このどらやきを3人で分けると、1人分は4こになるね。
(p68)
*
日常的には、12個を3人に1個ずつ配っていく。すると、1人分が4個になる。
偽ドラえもんは、数学的でもないし、日常的でもなく、突然、答えを出している。とんでもないやつだ。その後、「割り算の答えは九九を使って求めることができるよ」(p69)と種明かしをする。手品師か?
*
わり算で、ぴったりわりきれないときは、わられる数より小さく、いちばん近い数になる九九をもとに「あまり」をもとめるんだ。
(p70)
*
意味不明。
*
整数aを自然数bで割るとき、a=bq+r(0≦r<b)をみたす整数q、rがただ一組決まる。q、rをそれぞれ商、余りという。
(『広辞苑』「余り」)
*
「商」という言葉を教えずに「あまり」という言葉を教えるのは変だ。
割り算の前提は引き算だ。
〈12個を4個ずつ分けると何人に分けられるか〉という問題の場合、引き算で解ける。
12-4=8 8-4=4 4-4=0 よって3人
〈13個を4個ずつ分けると何人に分けられて、何個余るか〉という問題の場合。
13-4=9 9-4=5 5-4=1 よって3人余り1個
この場合、「あまり」という言葉が日本語としてしっくりする。
*
問題
かんジュースが14本あります。これを1回に4本ずつ運ぶと、何回で全部運ぶことができるでしょう。
(p72)
*
ひっかけ問題。奇問。頭を悪くする問題だ。
この「問題」とやらは、「あまりを1と考えるわり算」(p72)だそうだ。意味不明。
とんでもない。「4本ずつ運ぶ」という条件があるのに、最後に2本しか運ばないで、その仕事を「1と考える」なんて! 場合によっては詐欺になるぞ。
〈1回に最高4本しか運べない場合、14本を運び終わるのは最低で何回か〉などとすべきだ。
ぺこぱが声を演じているETVの算数の番組で、同じような問題文を用いていた。算数村の方言らしい。むかむかする。論理的でもなく、日常的でもない。
算数は頭を良くするためにやるものだ。偽ドラえもんに習うと、混乱して頭が悪くなるな。習わない方がいいぞ。
教育業界を変な人々が支配しているようだ。日本人は暗記怪獣になってしまいそうだ。考える力が身に付かない。
(終)