伊佐子のPetit Diary

何についても何の素養もない伊佐子の手前勝手な言いたい放題

京の名工展

2025年02月04日 | 展覧会・絵


毎年楽しみにしている伝統工芸の展示会である「京の名工展」。





例年は11月の下旬の秋頃に開かれるが、
今年はどういうわけでか年が明けた1月末に開かれた。
毎回、京都文化博物館の5階であり、なんと無料である。
こんなすごく贅沢な展覧会が無料なのは勿体ないくらいだ。
府が協力しているから(京都府の西脇知事が挨拶を寄せている)
料金がいらないのだとは思うが、なんとも太っ腹だ。





わずか5日間の展示であり
展示はもう終わってしまったが─


京都文化博物館
https://www.bunpaku.or.jp/

https://www.bunpaku.or.jp/gallery_hall/20250129-0202/
京の名工展
会期2025.1.29(水) 〜 2.2(日)
会場: 5階

京都府 令和6年度京の名工展
https://www.pref.kyoto.jp/senshoku/news/r6meikouten.html
令和6年度京の名工展~京の伝統工芸品、匠の技にふれる5日間~
―京都府伝統産業優秀技術者作品展―
―京の若手職人「京もの認定工芸士」作品展―




京都の伝統工芸士の腕によりをかけた作品たちが惜しげもなく、
ずらりと並んでいる。

「京の名工」というのは称号で、
正確には京都府伝統産業優秀技術者と称し、
テストを受けて受かったものが京都府知事より「名工」の称号と盾を送られる。
「京の名工展」はこの展示会のために名工たちが一点ものを作り
(販売もしていた)、
京に根付く伝統工芸士たちの作品が一堂に会する展覧会だ。
京都の伝統工芸士たちの腕の見せ所、という感じだ。







作品は多岐にわたり、展示品を見ているだけで毎回驚きがある。
現代でもこんなものを作っているのか、
どうやって手作りするのか、
展示品を見ていると、そんな風に毎回新鮮である。
それが楽しみで毎回、名工展へ行くのだ。
京都ではこんなに伝統工芸が現代にも息づいている。
その技術や実力には驚かされるばかりだ。
もっと全国の人にも知ってほしいと思う。


会場は注意書きしてあるもの以外は撮影可能だった。
作家によって技術の流出を嫌う人がいるのだろう。
どれもこれも写真に撮りたいものばかりで、
片っ端から写して行ったがそれでもあまりにも多すぎて全部は撮影出来なかった。




まず展示室に入ると正倉院の御物を写した鏡があった。
現在でもこのような古代鏡が作られていることに驚嘆した。



次に京都らしい仏像の十一面観音像があった。
立派な観音立像に拝みたくなった。



そして仏像の背面にある、「仏像用後背」というのもあった。
錺金具師という職人が仏像の後背のみを作っているらしい。
あまりにも細かい細工が見事なので思わず撮影した。



陶器を集めたテーブルにも面白い作品が沢山あった。

後ろにも作品が映り込んでいるが…
紅葉や桜を模様に描き込んだティーカップセットはとても美しくて、
欲しいと思ってしまった。(高そうだけど💦)



「南蛮船 南蛮人」という南蛮人を描いた作品はとても面白かった。
南蛮船の形をしているのだ。
陶画師という、陶器に絵付けをする職人が作成した香炉だという。



もうひとつ、
「海の中のジムノペディ」とタイトルがつけられている色絵置物は、
サンゴを背景に泳ぐ熱帯魚がかわいかった。
陶磁器成形・陶画師という名称の職人の作品で置物らしい。



同じテーブルには蒔絵作品や漆塗作品が並んでいた。
その中から一つ、
美しい蒔絵の茶入れ。
小さな茶入れに蒔絵技術が詰まっている。



漆塗り師の茶箱・三点揃えは、模様がとてもモダンでしゃれていたので
思わず写す。




京人形、雛人形作品も毎年並んでいる。
京人形・雛人形は分業制であるので、この立ち雛は京人形着付師の作品で、
着付を担当したという。



また京人形頭師のユニークな作品は御所人形で、
人形の頭を作っている職人の作品であった。




そして京扇子があった。

写真では分かりづらいが、普通の扇子の倍くらいの大きさがある。
30間ということだ。
京扇子も分業制で、
この作品は扇子折師と扇子地紙師の共同作品として出品されていた。



京扇子からもうひとつ、扇子仕立て師作品として出品されていたが、
絵柄が北斎の春画を元にしていたのが(+ボッティチェリ)あぶな絵のようだった。
でも少しもいやらしくない。




純銀製の湯沸かし(薬缶)の光沢はあまりにも美しいので、
思わず写真に撮る。
「鎚起師」という名称の工芸士だが何と読むのか最早分からない💦
が、加工のすべてが手作業だということは分かる。
まさに匠の技と言えるだろう。



燈籠にも驚いた。「六角置燈籠」という作品。
鄙びていて新作とは思われない。
石工芸士、という伝統工芸士が現代にもいるのに驚く💦。




「写経」というタイトルの掛け軸は刺繍で般若心経を刺したものだった。
刺繍師という工芸士がいるのだ。





毎年楽しみにしているのが染色補正師の作品で、
今年は抜染画「しみぬき屋さん」というタイトルのものだった。
染色補正とは、汚れた生地をしみ抜きする技術で、
その技術を使ってひとつの作品に仕上げているのだ。
モデルはきっと自分自身だろう。




一番多いのは友禅や西陣織の着物や帯の展示で、
最後の部屋にずらりと並んでいた。きりがないのであまり撮影しなかった。
けれどもどれも斬新なモチーフ、細かい作業(総絞りの着物)、
見たことのないようなものなどが沢山で見応えがあり、力作揃いだった。






展示の最後は別室に作られた造園作品だ。
毎年心づくしの造園が展示されているが、
展示期間が終わったらどうやって解体し、持って帰るのだろう?
ちょっと疑問に思ってしまった。
多分トラックで上手に運んでいくのだろう。




会場にはもっとたくさんの作品が展示されていて、
どれも見事な作品ばかりで毎回感嘆しきりの「京の名工展」だ。
もっと撮影したが、きりがないので─

「京の名工展」を見に行くたび、
京都にはこんなに優れた技術者・技能保持者が多くいることに、
誇らしい気持ちになる。
京都はこんなに優れた伝統工芸品を今も、現在進行形で生み出している。
しかも多彩である。
いろんな職種の名工がいる。

技術が受け継がれて、
これからも京の伝統工芸が発展してゆくことを願っている。




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抱一に捧ぐ展

2025年01月27日 | 展覧会・絵

左京区・岡崎で開かれていた
「抱一に捧ぐ─花ひらく雨華庵(うげあん)の絵師たち」へ行って来た。

酒井抱一は日本画家の中で一番好きな画家と言っても良い。

この展覧会は抱一と彼の門下の弟子たち、
そして抱一の画風を継いだ江戸琳派の後継者たちの作品を、
江戸後期から明治、昭和の初めまでを辿るものだった。




細見美術館
https://www.emuseum.or.jp/

琳派展 24
抱一に捧ぐ ―花ひらく〈雨華庵うげあん〉の絵師たち―
https://www.emuseum.or.jp/exhibition/ex087/index.html
会期:2024年12月7日(土) - 2025年2月2日(日)
※一部展示替えあり




江戸生まれの抱一は吉原の近くに自分の庵を持ち、
そこを雨華庵(うげあん)と称して、そこで作画をし、
また彼を慕い、彼の画風を学ぼうとする弟子たちを指導する一種の画塾でもあった。
尾形光琳に私淑し、光琳に学んだ抱一は江戸琳派と呼ばれる。
彼の弟子たちも江戸琳派の継承者たちであった。


雨華庵は抱一が開き、弟子たちに教える画塾であったが、
抱一の死後も抱一を慕う彼の弟子たちが雨華庵を受け継ぎ、
そこで師の画風を江戸琳派として受け継いだ。
雨華庵は昭和の初め、戦前まで続いたという。
現在は東京に抱一の住居跡という石碑があるという。




抱一とその弟子たちやその一派の展覧会と言うので喜んで見に行った。
主に弟子たちの作品の展示とはいえ、抱一の作品もあるだろう。
新聞に特集されていた作品を見ていたら、抱一そっくりの作品もあった。
これは期待出来る!と大喜びしたのだ。


抱一の何とも言えない上品で清楚な作風、丁寧な筆致、
色使いの絶妙さ、構図の粋さ、などを見ていると心が洗われるようなのだ。
それくらい抱一に魅せられている身としては見に行かざるを得ない。


が、いざ行ってみると、抱一の作品はほんの少しだけ、それも墨絵が殆どで、
抱一の弟子たちや雨華庵で学んだ一派の作品は、
なんというか、平凡で魅力に乏しいと思ってしまった。
1800円ととても高額な展覧会で(最近行った中で一番高い)
割引を使っても100円引きの1700円。
(お金のことばかり言って我ながらはしたない💦が)
1700円で無名の画家たちの平凡な作品を見たのか─と、
期待が大きかっただけに始めは少しがっかりしたのだった。


が、抱一風や抱一流を期待して見に行ったのだったが、
抱一の弟子たちや一派の人たちにも彼らなりの個性がある。
抱一に倣ったとしても、抱一風ばかりではなく、
画家一人一人に画家たちなりの画風があるのだと思い直した。
それでなんとなく納得したのだった。



展覧会では抱一の作品も数点展示されていて、
殆どが墨絵の掛け軸の小品だったが、
その中で細見美術館の所蔵する「白蓮図」が展示されていた。




抱一の作品の中でもとても好きな作品の一つ。
これが展示されていたのは嬉しかった。
清楚な白蓮が上部に蓮の葉を纏うように花を咲かせている。
が、まもなく散ろうとするかのようで儚くも見える。
すっくと伸びる細い茎が意志を持つようで何とも上品で好きな作品だ。
構図も練られていて美しい。


抱一の雨華庵で学んだ弟子たちの中では、
山本素堂という画家の「朱楓図屏風」が目を引いた。
この一隻だけ独立して目立つようにガラスケースに入れられていたからだが。


琳派の画風をそのまま継承したような木の描き方や、
楓の赤い葉を散らしたさま、
背景のこんもりした山の緑の使い方、群青の水の流れ、
とりわけ抱一が好んだ銀地の背景を使っているのが素晴らしかった。


また雨華庵に学んだ酒井抱祝という抱一の名を継いだ絵師による
十二ヶ月花鳥図屛風は、大正から昭和にかけての作だが、
抱一の品格のある十二ヶ月花鳥図をほうふつとさせる作品だった。
見に行った時は右隻のみの展示だった。




描き表装(掛け軸の表装部分に絵を描く)は
琳派の画家の好んだ手法だが、この展覧会にも展示されていた。
酒井抱祝「鯉に燕子花図」というメインに鯉を描き、
表装部分に燕子花を華麗に描いていて華やかだった。
琳派らしい絵に少しうれしくなった。

(京都新聞の図版より)



ユニークだなと思ったのは、これまでの日本画の花鳥図などでは脇役というか、
決して単体で描かれない土筆(つくし)や蓮華草を、
それらのみを画題として描いている図があったことだ。


山本光一という画家の「春坡土筆図屏風」は、
野の土筆(つくし)だけを画面全体に描く珍しい図だった。
こういう絵に琳派や抱一に倣うのみでない探求心を感じた。
蓮華草のみを描いた作品もあった。


また中国の蓬莱山は古来より日本絵師の代表的な画題であったそうで、
琳派や雨華庵の絵師たちも良く描いたようだが(いくつか展示されていた)、
その中で、蓬莱山がなぜか宙に浮いている作品があった。
(京都新聞の図版より「蓬莱図」)


酒井道一という画家(雨華庵を継いだ一人)の明治期の作品で、
まるでルネ・マグリットなどのシュールレアリスムの絵のようだった。



細見美術館は私設美術館のため料金も高く、展示品も少ないし、
会場内撮影禁止だし
思っていたようなものではなかったため期待外れにも思ったが、
江戸琳派━抱一の始めた画塾・雨華庵が
昭和の初期まで続いていたことは初めて知った。
そうやって抱一の精神が戦前まで受け継がれていたことは感慨深かった。

琳派の図柄は京都でも現代まで受け継がれ、暮らしの中に息づいている。
日本人に愛され育まれて来た琳派の系譜は、
だから現代人の心に受け入れられるのだと思った。







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大シルクロード展

2025年01月09日 | 展覧会・絵

京都文化博物館で開かれている「大シルクロード展」へ行って来た。


あまり興味を引かれなかったが、招待券があったので行ったのだ。
そうしたら意外と面白かった。
気楽に見たからか、あんなものやあんなものが、と、
面白い展示品が沢山あった。
あまり深掘りして見ていなくて流し見のような感じだったが、
それがかえって余計面白いと感じたのかも。




京都文化博物館
https://www.bunpaku.or.jp/

日中平和友好条約45周年記念世界遺産 大シルクロード展
https://www.bunpaku.or.jp/exhi_special_post/20241123-20250202/
2024年11月23日(土・祝)~2025年2月2日(日)



東洋と西洋を結ぶシルクロードでは多くの人や物資が往来し、
文化が交流し、シルクロードの通る各要衝では交流の結果、
各地それぞれが影響を受けたとみられる多彩な文化が花開いた。

この狭い日本にいると想像もつかないような、
スケールの大きい文化交流があったのだと、
その壮大な成果に目を見張るばかりなのだった。





展示品は多岐にわたり、
紀元前200年前くらい?から8世紀~9世紀くらいまでの
文物を紹介していた。
すべて写真撮影がOKだった。





日本でいえば弥生時代から古墳時代、
奈良時代から平安時代ころであろう、
そんな時代にシルクロードの要衝では豊かな文明が育まれていたのだ。





メインビジュアルに選ばれている「象嵌瑪瑙杯(ぞうがんめのうはい)」は、
一級文物で作り込まれた均整の取れた形の金の杯に
瑪瑙が嵌め込まれた美しい造形で特に目を惹いた。
新疆ウイグル自治区で出土した5~7世紀の作品だそうだ。




男子坐像は紀元前5世紀から3世紀くらいの作品だそうで、
展示品の中でも最も古いものだ。
が、人の姿の造形は騎馬遊牧民族を表した、優れた写実性を見せている。
これも新疆ウイグル自治区で出土したものだという。



女性用の靴は1~5世紀のもので驚くほど色彩が鮮やかに残っている。
皮と絹で出来ていて保存状態の良さに驚かされた。
このような出土品は墓の副葬品らしい。
そのため良好な保存状態を保っていたようだ。



奇抜な形の帽子もあったりして、
エキゾチックなシルクロード感が良く出ていた。



金貨や銀貨も展示されていたが、東ローマ帝国のものがあり、
当時の広範な流通経路をしのばせるもので、
いかにもシルクロードの文物という感じだった。



7世紀ころの碁盤も展示。
このように数え切れないほどの珍しい文物が展示されていて、
写真に撮るのはきりがなかった。
いつもの展覧会と趣きが違い、
変わった珍しい展示物ばかりで面白く感じた。



奏楽女子俑は5世紀の陶製で彩色もされていて
琴を弾く女性をリアルに表現している。





この展覧会のハイライトの一つが「車馬儀仗隊」だろう。
そのスケールの大きさに写真に全貌が収められないほどだった。
後漢1-3世紀ころ唐の時代のもので青銅製、
墳墓からの出土品だそうだからこれらも副葬品だったのだろう。
整列した馬の列に圧倒された。



シルクロードらしい駱駝の俑も。陶製、彩色が鮮やかでリアルだ。



円鏡も沢山展示されていたが、
2-3世紀の古代鏡から8世紀に鋳造されたものまであった。
日本の古墳時代を彷彿させる円鏡は、
日本もシルクロードや古代中国の影響下にあったことを示していた。



俑(よう)と言われる陶製に彩色され、
副葬品として墓に埋められた人物や動物像も多数展示されていた。
7-8世紀ころの唐で作られたものでリアルさと誇張された部分もある、
すぐれた造形と色彩感覚があって目を見張った。




最後の部屋には仏像群が展示されていた。
すべて石像で、石に彫刻されたものである。


馬頭観音坐像は石像とは思えないほど見事な彫刻で、
大理石像だそうだ。細かな彫刻がとても美しい。



菩薩像頭部は、
シルクロード展らしいエキゾチックな顔立ちの仏像頭部で、
眠っているような穏やかな顔つきが、
日本のそれとはまったく違う顔立ちで興味深かった。



双思惟像は6世紀の北斉の石彫で、
中国ではこのような2体を相似形に並べて彫る像が流行したそうだ。
日本では見られない変わった像だった。




頭部の欠けた仏像は、古代西洋の大理石像を思わせるほど、
頭部が無くとも繊細で美しい造形にしばし見惚れたのであった。



菩薩坐像はウエストが極端に細い造形が珍しく、
ふくよかな顔立ちで、衣装のドレープが美しい。
石彫でこれだけの表現が出来ていることに驚嘆した。



展示室を出た2階の踊り場には剥製の駱駝が特別に展示されていた。
駱駝を使用してシルクロードを旅し、
交流を深めたかつての遊牧民を偲ばせるような巨大な展示だった。




写真に収めた以外にももっとたくさんの展示品があり、
その数200点に及ぶ。

始めはあまり乗り気でない展覧会だったが、
見ているうちに珍しいものばかりだったので面白く鑑賞することが出来た。






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ポール・マッカートニー写真展

2024年12月31日 | 展覧会・絵

グランフロント大阪で開かれていた「ポール・マッカートニー写真展」は、
ポール・マッカートニーを写した写真展ではなく、
ポール「が」写した写真展なのである。


この展覧会は大阪での開催にも関わらず、京都新聞が共催なので、
京都新聞でも大々的に宣伝していた。
なぜグランフロント大阪の開催なのに京都新聞が絡んでいるのだろう、
と思いつつわざわざ展覧会へ大阪まで行くのは遠い、と思い、
行くつもりはなかったが、招待券をもらってしまった。

入場料は大人なら2500円だという。
普通の展覧会より高い設定だ。
そんな高い展覧会が無料で見られるのか💦と思い、
時間を作って大阪まで行くことにした。

2025年1月5日までの展示なので、年が明けると行けないから、
年末の慌ただしい時に慌ただしく💦行って来た。




↓このHPではポールが自ら解説している動画もある。
大阪展HP カンテレ
https://www.ktv.jp/event/eyesofthestorm/
ポール・マッカートニー写真展 1963-1964~Eyes of the Storm~
日程 2024年10月12日(土)~2025年1月5日(日)
会場 グランフロント大阪 北館 ナレッジキャピタル イベントラボ

開催内容
約250点、世界が熱狂したザ・ビートルズ絶頂期の記録
ポール・マッカートニー撮影の未公開プライベート写真を展示


東京展
https://www.eyesofthestorm.jp/

公式X
https://x.com/eotsjapan


グランフロント大阪は一度行ったことがあるが、もう行き方を忘れた💦。
果たして行きつけるだろうか、と不安に思いつつ、
大阪までの新快速は立ちっぱなしで息も絶え絶えになりつつ、
それでもJR大阪駅からは矢印の案内があり、
とても分かりやすい場所にあったのでほぼ迷うことなく行きつけた。
しかし行くだけで疲れた(>_<)。




大阪は京都に比べて建物が巨大だ。
そして広い。
京都のちまちました町からは到底考えられない大きさで、
まごまごしつつ気おくれしつつも、
グランフロント大阪北館ナレッジキャピタル地下へ入った。




写真展の中は殆どの写真が撮影可能だった。
今回も片っ端から写真に撮っていったが、きりがなかった(>_<)


ポール・マッカートニー写真展は1963年から1964年、
ザ・ビートルズが世界を熱狂させ社会現象となって行った時から、
アメリカツアーまでの1年間に写された写真で構成されていた。

1964年といえばもう60年前だ(◎_◎;)。
ビートルズの登場はそんな昔のことだったのか。
もはや歴史上の人物、歴史上のフェノメノンである。




現代の若い人にはどう映っているのだろう。
お客さんの中には若い人もいた、というか、
年寄りは私一人?くらいで若者が多かった。
ビートルズのことを何らかのタイミングで知り、
興味を持った人たちなのだろうか。


今回の展示では音声ガイドはポールが自ら担当しているのだという。
(自分はガイドを聞かないタイプ)
それと共に写真につけた解説をいくつかポール自身が案内していた。
この展覧会はまずロンドンで始まり、
それから世界へと巡回していったのだという。
日本では先に東京で展示があり、そして大阪へ巡回したようだ。


ポール・マッカートニーが写した写真を見ていると、
しかし、時を超えて1960年代へタイムスリップしたみたいな気分になった。

ポールはマメな人だったのだろう。
そしてカメラも好きだったようだ。
当時のカメラはデジタルカメラではないし、その場で確認も出来ない。
フィルムを現像して初めてどんな写真を写したか分かるという、
それが普通だった。

ポールの使っていたカメラは日本製のペンタックスだったという。
(展示は同種類のもの)



ポールは多分、カメラを楽屋で片っ端から連写して、
またそばにいる人を誰彼かまわず被写体にしたのだろう。
即興でカメラを向けたに違いない。
それが今、見ると貴重なビートルズ時代のドキュメントとなっている点が
とてもビビッドで、
写された人物も生き生きとしていて、まるで昨日のことのようである。




もちろん被写体はビートルズのメンバーが主で、
自分を写した秀逸なセルフ・ポートレイトもあった。
マネージャーだったブライアン・エプスタインも多数映っていて、
ローディーのマル・エヴァンス?だったかもいる。
テレビ収録の際の共演者のバックヤードもある。
当時の流行歌手たちだ。





メンバーの家族、ジョージの両親、ポールの家族などの写真もあり、
ジョン・レノンの当時の最初の妻、シンシアも多数映っていた。
ポールの恋人だったジェーン・アッシャーももちろん映っていた。
彼女たち女性を写した写真たちは雰囲気があってとても素敵だった。






ジョージの写真の説明では常に「ハンサム」という言葉が。





写真ばかりではなく「抱きしめたい」(I want to hold your hand)
の貴重なオリジナル作詞原稿も展示されていた。
所々にモニターがあり、作品を紹介もしていた。



1963年-64年はビートルズが熱狂的に世界に迎えられ、
人気も絶頂だったころだと思うが、写真にはそうした奢りはなく、
ただそばにいる人たちを日常としてただドキュメントしている。



ビートルズめがけて殺到する取材陣を逆にポールが写した写真もある。



そこには人気絶頂だが休む間もなく働いていた悲壮感はなく、
さりとて人気にいい気になっているわけでもなく、
時代の空気を見事に捉えた写真となっていた。
ポールの人柄なのかもしれない。
写真はその人自身を写す、という。
ポールの写した写真はポールそのものだったのかもしれない。


彼らビートルズは労働階級の出身である。
イギリスは厳密な階級社会だった。
彼らはだからこそ労働階級から身を立て人気者になり、
大金を稼ぐようになってもどこか冷めた、皮肉な、シニカルな態度を貫いていた。

下層階級出身だったからこそ奢りとは無縁の金銭に縛られない
フラットな精神の持ち主たちだったに違いない。
写真にはそうしたポールの性格が表れていたように思うのである。





ビートルズのメンバーたちの行く所、
とんでもなく物凄い喧騒が待ち構えている。
絶叫するファンや、出動する警官、
メンバーを撮ろうとする報道のカメラマンたち・・・、
それらを逆にポールが写している。
そこには彼らの外で起こっている喧噪をどこか冷静に見つめるポールの目がある。
ポールにとってそれは風景の一部だったのかもしれない。










アメリカでのテレビ番組エド・サリバンショーに出演した様子、


ビートルズの音楽プロデューサー、ジョージ・マーティンの姿も。





アメリカのヒットチャート1位を獲得してアメリカツアーが始まる。
そのあたりから写真はカラーになる。
それは映画「ハード・デイズ・ナイト」から「ヘルプ!」へ移行する過程のようだった。






ホテルの窓から見た外の様子、
ホテルのプールでメンバーが泳ぎ、くつろぐ様子、
ツアーの束の間でも彼らが楽しんでいる様子に少し和んだ。
ファンやメディアに追われて気の休まる時がなかったろうと思うが、
そこにいたのはごく普通に休暇を楽しむ若者であった。








ただホテルの窓からの眺めや町の様子を写した写真には、
缶詰め状態で外に出られない彼らの境遇を見るようで、少し心が詰まった。
それらも今から見ると時代の反映と言えるかもしれないが。。
ポールの写真のうまさもあるが、
60年前の喧騒の時代、喧騒のさなかの貴重なドキュメントだと感じた。






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エミール・ガレ展

2024年12月23日 | 展覧会・絵

年末の押し詰まった時期で慌ただしくて気が急くが、
少し気持ちを落ち着かせたいなどと思い、
「エミール・ガレ展」へ行って来た。

エミール・ガレといえばアール・ヌーヴォーの華。
繊細で美しいガラス工芸で有名だ。
今年はガレの没後120年の年だということで、
美術館「えき」KYOTOで展覧会が開かれたようだ。


美術館「えき」KYOTO
https://www.mistore.jp/store/kyoto/museum.html

https://www.mistore.jp/store/kyoto/museum/event_list/event02.html
没後120年 エミール・ガレ展 美しきガラスの世界
■会期:2024年11月22日(金)~12月25日(水) ※会期中無休





ジェイアール伊勢丹の7階にある美術館えきKYOTOはそれほど広くないが、
ガレの花器やランプなど約70点が展示されていた。

美しいガラス工芸の数々にしばし目の保養をした。
館内はガラス器は撮影可能ということで、片っ端からいっぱい写した。





19世紀から20世紀初頭にかけて、
ヨーロッパを席巻したアール・ヌーヴォーという芸術運動は美術だけでなく、
出版や工芸にまで波が広がった。
産業革命で工業化が進み、その中で芸術を模索する中、
ガレのように工芸家が工芸を芸術にまで高めた作家も登場した。

アール・ヌーヴォーの時代の空気まで感じ取れるガレの工芸品の数々を、
この展覧会でも堪能することが出来た。









ガレの作品はアール・ヌーヴォーらしい曲線を用いた優美なラインが特徴だが、
モチーフに描かれるのは蝶やカマキリなど虫であったり、
アンモナイトなどの化石や貝殻であったり時に奇抜なものも多い。

ガラス花瓶の上にさらに別のガラスを吹き付け本体にくっつける技術で、
花器の周りに不純物が張り付いているかのような作品もあり、
まるで深海から引き上げた遺物のように見えるのであった。







モチーフが奇抜であったりどぎつくても、
摺りガラスの質感のためとても優しげで儚げに見えたり、
ガラス器の曲線を強調した形状の優美さで、
優雅で美しく見えるのであった。

そしてとてもシックな色使いが上品で、
見ていると夢のようなガレの世界に誘われるのであった。









よく見ると絵付けされているだけでなくガラスに様々な文様が彫られている。
それもとても小さいモチーフを細かく彫ってあり、
職人技の凄さを垣間見られるのであった。


花瓶だけでなく日常に使うワイングラスやデカンターなども作成した。
粋で繊細ながらも実用的なデザインは当時の人々に歓迎されたであろう。





香水瓶のデザインもガレの重要な仕事だった。
どれも上品で美しく、欲しくなるものばかりだった。






特に美しかったのはランプ群で、
会場の一角に設えられた暗くした部屋の中で浮かび上がるランプの数々は、
幻想的で美しかった。








またガレは当時のヨーロッパで流行していたジャポニズムにも敏感であった。
ジャポニズムは異国の物珍しさと好奇心を掻き立て、
当時の人々に大いに受け入れられたのであった。
ガレのガラス器はジャポニズムを取り入れたものがとりわけ多い。
殆どがジャポニズムのモチーフを使っているのではないかと思うほどだ。




ジャポニズムのエキゾチックな異国モチーフがガレの心を捉えたのだろう。
ガレは植物学者でもあったそうで、自然観察に長けていたため
昆虫や草花などの生き物を多くモチーフに取り入れた。
それがより一層、
ジャポニズム精神と共鳴する作品群を生み出したと言えそうだ。





精緻な工芸に見とれるばかりの、
いっとき時間を忘れて過ごせた展覧会だった。






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