伊佐子のPetit Diary

何についても何の素養もない伊佐子の手前勝手な言いたい放題

セーヌ川増水

2016年06月05日 | 展覧会・絵
梅雨入りしたそうだ。早いね。
雨降ってるし。今年は梅雨が長いんだろうか。
祇園祭のころには、上がるだろうか。

京都では、祇園祭の長刀鉾の稚児が決まった。
ヤサカ観光バスの社長の息子さんということだ。
記者会見では無邪気な男の子が、
この1ヶ月で凛々しい稚児に変貌していく様子を見るのもまた、
京都市民の楽しみであるな。


ところでセーヌ川が増水し、地域が冠水し、
ルーブル美術館の美術品(オルセー含む)
を避難させたというニュースを聞いた。
セーヌ川の増水って、初めて聞いた。
今までそんなことは聞いたことがなかったが…
(長い歴史上のことだから、セーヌの洪水はあったようだが)、
よっぽどの大雨が降ったんだろうか。

ヨーロッパの各地で被害があったとも記事に出ていた。
…まあ自分には関係のないことなのだけど、
やはり美術好きとして、ルーブルは世界一の美術館なんで、
とても気になった。

京都でも鴨川が増水したら、
ウチらのとこでも床下浸水するだろう。
怖いことだ。油断できない。

地下倉庫にあった、
古代ギリシャの美術品25万点を避難させているという。
その膨大な数にびっくりした。
しかも、50万点あるうちの25万点。
ルーブルって、
古代エジプトや古代ギリシャ系なんかも持ってるのか。
収蔵庫だけでもものすごく広いんだろうな。

パリもルーブルも、行ったことがないんで。
あまりの数に想像すらできないよ。
何日か閉館するそうだが、絵は無事だったみたいだし、
一日も早く元通りになるといいが。


それにしてもルーブルでは、サモトラケのニケも、
ミロのヴィーナスも、モナリザも、
行けばいつでも見られるんだよねえ。
常時展示というのが羨ましい。

ミロのヴィーナスなんかは、
何千年前のものか知らないが、
ずっと展示していて劣化しないのだろうか。

モナリザは劣化して眉毛がなくなった、
という話は聞いたことがあるが、でも常時展示してあるんだよね。
西洋の油絵はあまり劣化はしないものなのだろうか。
モナリザはテンペラなのか? 良く知らないけど。
フレスコは劣化しないと聞いた。
描き上げれば何千年と持つと聞いた。


日本の美術品は劣化との戦いなので、
常時展示というわけにいかない。
作品保護のため、とか言って、
展覧会でもちょこっと見せるだけだ。
紙なのでしょうがないと思うが、歯がゆい限りだ。
絵巻なんかはずいぶん昔のものでも、
ものすごく美しく絵の具が残っていたりして、
びっくりするのだが、あれはやはり巻いて残しているからだろうか。

まあ国宝を常時展示、
と言えば東寺の五大明王なんかはそういえばいつも展示してあるな。
彫刻は劣化しないのか。
常時展示を見たければお寺へ行く、のが日本ではいいのかも。




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ヴィスコンティとヘルムート・バーガー

2016年06月03日 | ルキノ・ヴィスコンティ
6月になった。
町を歩いていると、
アジサイの花がすでにそこここで咲いていて、
スーパーには水無月が売られている。
水無月ともなると、そろそろ祇園祭のうわさも聞こえて来る頃・・・


さて。
「ルートヴィヒ」撮影終了後、
ヴィスコンティは脳血栓で倒れ、
一命はとりとめたが入院をするはめになった。
自宅に機械を持ち込んで
編集作業に携わったと言うような話を聞いている。


「ルートヴィヒ」に撮影に入る時からプロダクションは大変だったそうで、
作品が完成し、公開された直後にプロダクションは倒産、
それからは
「映画の権利が誰のものであるかをめぐる、地獄のような争いが始まった」
と、3時間版初公開時のパンフレットに、白井佳夫氏が書いている。

白井氏は「ルートヴィヒ」のプロデューサーである、
ロバート・ゴードン・エドワーズにインタビューし、
そのエドワーズ氏の言葉を紹介しているのだ。


お金を調達する目途も立っていないのに撮影が始まってしまった。
それでもヴィスコンティは何一つ妥協することなく
大規模なロケや、壮大なセット、小道具ひとつにも妥協しない。
その挙句に病で倒れ命まで削るような作業になってしまった。


白井氏は、エドワーズ氏に、
「ヴィスコンティにそのような狂気の映画作りを遂行させた
原点となっていたものとはいったい何だったのか」
と聞いている。
エドワーズ氏は答えたそうだ。
「ヘルムート・バーガーに対する、愛だったのだろう、と思うよ」と。


その通りだと思う。
この壮大な4時間もの時間をかけた「ルードウィヒ」という映画は、
ほかでもない、ヘルムート・バーガーのためだけに作られたものだ。
そんなことは、ヴィスコンティ・ファンなら一目見るだけで分かる。
いやほかの人も分かるかもしれないが。

前半の輝くばかりに美しいバーガーのアップの多用、
あらゆる方向から彼を映すカメラ
(ヴィスコンティのカメラは常時3台装備)、
後半の無残な姿へ変貌してゆく王の演技力の見せ方、
ヴィスコンティがいかにヘルムート・バーガーを愛していたか、
見ているこちらは、そのあからさまな、
捨て身の「愛」にただもう、ひれ伏すしかなかった。
ああ、ここまでするんだ、
この不実な、あまり賢くもなさそうな俳優一人のために、と。


だけど、人が何か頑張ろうと思った時に、
結局その原動力となるのはそれしかないと思うんだよ。
むしろそれだからこそ、あそこまで行っちゃうんだ、
あそこまで頑張れるんだ、という。
何か人の業を見た気がする。


ヴィスコンティは「ベニスに死す」のあと、
次回作としてマルセル・プルーストの
「失われた時を求めて」の映画化を考えていた。
これは割と有名なことなので、
関連の書物に書かれていると思う。

ロケハンもし俳優も決め、脚本も書き上げた。
脚本はヴィスコンティ組でおなじみの
スーゾ・チェッキ・ダミーコとエンリコ・メディオーリ、
そして本人の三人。

その脚本は日本でも出版され、私も買って読んだ。
もう内容自体は覚えてないが、
プルーストの原作も読んでないけれど、
脚本はとても立派で、作品として完結していて、
映画になっても立派な映画になるだろうと思える内容だった。

キャストはアラン・ドロン、
ヘルムート・バーガーを含んだオールキャストで、
上映時間は4時間弱の予定、
ヴィスコンティはこれを遺作とする意志も持っていたとある本には書いてあった。
ところが例によって資金面で難航し、
計画は頓挫し、製作をあきらめざるを得なくなった。

普通なら、脚本まで出来上がっていた映画が中止になったら、
心が折れてしまうと思うのだが、
ヴィスコンティはそんなことには頓着せず(?)、
早速次に「ルートヴィヒ」の映画化を思いついた。

ここは何でかなと今も思う。
「失われた時」をさっさと諦めてしまったのが何でかなと。


とにかくこういう経緯を見ていくと、
ドイツ3部作と言われているけれど、
本来ははじめからそういう構想はあまりなくて、
たまたまドイツものが続いたという感じだ。
もちろんそこには、
ヘルムート・バーガーという存在があったからだ。


「ルートヴィヒ」の撮影を始めてみると、
「失われた時」に優るとも劣らず経費は膨らみ、
資金難と困難の嵐で、撮影したフィルムは長大になり、
上映時間は6時間になるとも8時間に及ぶとも言われた。

自分自身も病に倒れながら、
よく完成までこぎつけたなと言う感じだが、
それもこれも、ヘルムート・バーガーへの、
彼を何とか一流の俳優にしたい、という願いゆえだったのだろう。

ヴィスコンティは血栓症で倒れて療養していた時に、
トーマス・マンの「魔の山」の映画化の構想を考えた。
このこともファンの間では有名なことなので、
知っている人も多いだろう。
そして「魔の山」を含むドイツ4部作になる、という考えでいた。
懲りない人だ。

キャストはまたヘルムート・バーガー(ハンス・カストルプ役で)、
シャーロット・ランプリングなどを予定していたという。
しかしこれはわりと早い段階で頓挫した。

ヴィスコンティの「魔の山」はちょっと見てみたかった気がする。
それなりにまとまった映画になったと思う。
原作は、はじめをかじった程度だけど…。

幻に終わったヴィスコンティの映画を含めて見てみると、
やはりヘルムート・バーガーへの執着を感じる。
ヴィスコンティにとっては、彼の映画製作の原動力には、
やはりこういう存在がなくてはならなかった。
だから突っ走れた。

ヴィスコンティの初期作品は、私はあまりよく知らない。
見たものもあるけれど、もう一つ覚えてなかったりする。
彼のファンの中には、初期の方が良かった、という意見もある。

だけども晩年のヴィスコンティの、
前のめりの突っ走りぶりばかりを知る私は、
その彼の生き方をすごいと思う。
映画作品を含め、捨て身で自分をさらけ出す、
それを恥とせず堂々と貫き通したことに、心の底から敬意を感じる。




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ルードウィヒ3時間版

2016年06月01日 | ルキノ・ヴィスコンティ
ルキノ・ヴィスコンティの
「ルードウィヒ」3時間版について質問を受けて嬉しくなり、
このことについて語りたくなった。

私が最初に「ルードウィヒ」を見たのが3時間版だったので、
当然思い入れは3時間版の方が深くあり、
その時の印象が強烈だったので、
「ルードウィヒ」を語る時は、
おのずと3時間版を基本にして語っている。


最初に映画館で見た時に買ったパンフレットに、
白井佳夫氏
(多分キネマ旬報の編集長などをしていた人)の解説が載っていて、
彼は73年にローマで初めてこの映画を見て、
そしてパリでも見て、
マドリッドでも見ようとしたと書いている。
このことから73年当時には、
日本では上映されていなかったが、
ヨーロッパ各国では上映されていたことが分かる。


で、その時白井氏が見たのは3時間版(イタリア語吹き替え)
だったのかどうだったのだろうと今でも思っている。
オリジナルの英語版なら2時間半、
だけども白井氏は、この映画を見て「感動に震えた」と書いているから、
2時間半の映画ではこのような思いにはならないと思うので、
やはり3時間吹き替え版だったのではないかと想像している。
ヨーロッパではヴィスコンティみずから編集に携わったという、
3時間版が行きわたっていたのではないか。

当時(73年)4時間版はまだまったく噂にものぼっていなかったし、
その存在も知られてなかった、というか、
まだ存在していなかったのではないかと思う。

4時間版が映画館で正式に上映された時は、
全く見たことのないシーンが追加されていたし、
3時間版では曖昧にされ、
良く理解しきれなかったエピソードの説明もちゃんとされていて、
単純に、好きな映画の場面が増えているバージョンに喜んだ。

でも、映画はやはり最初に見た時の印象が決定づけられるものだ。


3時間版は、それでもほかの映画に比べて圧倒的に時間が長いので、
退屈になるかなとも思っていたが、
まあ、ほかの人が見れば退屈だったのかもしれないが、
私にしてみれば、ものすごく場面転換が早くて、
どんどんと話が突っ走り、そのカッティングワークの素早さに驚き、
一時も目が離せない、すごい疾走感の映画だと思った。

それに比べれば4時間版は、ゆったりと時間が流れ、
説明的エピソードも丁寧で、時系列に沿って話が進み、
ただその分、やはり冗長だなと思う。

3時間版は、シークエンスをぎりぎりまで切り込み、
出来る限りの説明部分を省き、
多少説明不足があっても時間を合わせるため、
カット出来る部分はぎりぎりまでカットしたのだろう。
そのせいでの疾走感になったのだと思う。


ヴィスコンティ本人は、
4時間版が最もやりたかったことであろうとは思うのだけれど、
私としては3時間版のあのスピードが決定的に記憶に刻み付けられた。
4時間版は、
まあヴィスコンティファンへのプレゼントと思うことにしている。


けれども今は4時間版が「ルートヴィヒ」の決定版として流通していて、
3時間版がなかったことのようにされているのは、少し悲しい。
私が感動し、衝撃を受けたのはほかでもない3時間バージョンだったから。

復元完全版と銘打った4時間版の映画公開時のパンフレットで、
黒田恭一が、
3時間版で感動して何度も見返していたあの感動はいったい何だったんだ、
みたいな感想を書いていて、
4時間版の出現(とその内容)に戸惑っていた
当時のヴィスコンティ・ファンの気持ちを代弁しているように思ったが、
ヴィスコンティとしてはあの4時間版の冗長さ、
だらだらかげんが(前にも書いたけど)むしろ狙いだったのだろう。
それをふまえて、なお私は3時間版の必死感が心にずっと残っているし、
それで受けた衝撃はただごとではなかったと信じ続けている。


COMMENT:
AUTHOR: YUKI
DATE: 06/03/2016 21:23:57
懐かしいです。私も3時間版「神々の黄昏」を北浜の三越劇場と祇園会館で見ました。
伊佐子さんの仰る通り、疾走感があり全く長さを感じさせませんでしたよね。
画面に唐突に解説役の人が出てきたりしてシュールでした。
4時間版は、私も深夜TVで見たのかな?
2夜に分けての放送だったように記憶していますが…


COMMENT:
AUTHOR: isako
DATE: 06/04/2016 09:51:37
コメントありがとうございます!。
祇園会館…。今は祇園花月になってしまって悲しい…。
3時間版、一瞬エリザベートの死に顔が出て来て、
これ4時間版では削除されてますよね。
テレビ放送は確かCMが挟んであって、
厳密には3時間40分くらいだったという記憶があります…。
昔なので私も記憶があいまいだ…




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