二つに見えて、世界はひとつ

イメージ画像を織りまぜた哲学や宗教の要約をやっています。

四人の男と金貨

2022-07-17 19:52:00 | イスラム/スーフィズム
トルコ 1978年 200リラ プルーフ銀貨 ジャラール・ウッディーン・ルーミー没後705周年記念コイン
   

 四人の男と金貨

 四人の男が金貨を一枚与えられた。一人めのペルシア人が言った。「この金貨で、アングールを買うとしよう」

 二人めのアラブ人が言った。「いやいや、私はアイナブが欲しい。アイナブを買おう」

 三人めのトルコ人が言った。「アイナブなんてやめてくれ。私はウズュムを買いたい」

 四人めのギリシア人が言った。「私はスタフィルを買いたいのだが」

 それぞれの呼び名の背後に何が控えているのかも知らず、四人の男は喧嘩を始めた。情報だけが先走りし、肝心の知識を得ていなかったためである。

 そこへ賢い仲介者が現れ、四人を和解させた。仲介者は言った。

「あなた方四人全員の必要を満たして差し上げましょう。私を信頼して、一枚の金貨を預けて下さい。四つのものを、一つにして差し上げましょう」

 賢い仲介者は、それぞれの呼び名の背後に控えているものについて知っていた。一枚の金貨で葡萄を買い、四人に与えた。それで初めて、四人は自分達が欲していたものが全く同一であったことを知った。
精神的マスナヴィー』2巻「四人の男と金貨」より



 

踊れ/音楽の記憶

2022-07-17 06:59:00 | イスラム/スーフィズム
ルーミーの思想の一つに、旋回舞踏によって「神の中への消滅」という神秘体験の実行が挙げられる。ルーミーの没後、コンヤのルーミー廟を拠点とする彼の弟子たちによって、コマのように回って踊るサマーウ(セマ)という儀式で有名なメヴレヴィー教団が形成された。メヴレヴィー教団では同教団の始祖と仰がれている。

 

 踊れ

苦行のために、
欲望という傷をむき出しにするために、踊れ。

聖者たちは魂の戦場で、
くるくる回りながら踊る。
彼らは血まみれになりながら踊る。

自我の束縛から解放されると、彼らは手をたたく。
自分自身の不完全さから脱すると、彼らは踊る。

楽師たちは恍惚として心の底から太鼓をたたき、手は砕けて泡となる。

葉の触れあう音は見えない。肉体にある耳ではなく、魂の耳で聞かなければならない。

輝かしい魂の国を見るために、冗談や嘘には耳を貸すな。
 ルーミーの詩/創元社「スーフィー」p5






 音楽の記憶 

 ある人は言う、私たちの耳を心地良くくすぐるナイもリュートも、突き詰めればその旋律は、回転し続ける宇宙より受け取るのだと。

 だが信じる者は、あらゆる定理と推論とを軽々と跳躍してしまう、そして宇宙に響く音という音を、甘くするものは何なのかを知る。

 私たちアダムの末裔は、かつて彼と共に天使たちの音楽を聴いた。今となっては、はるか昔の遠い記憶もほころび破けているものの、それでも耳の奥底に残っている、地上の何ものとも無縁の残響が。

 ああ、音楽こそは聖なる晩餐、愛する者全ての血となり肉となる。音楽が鳴り響けば、魂は天上の記憶を恋い焦がれて高みを目指す。

 灰という灰は光り輝き、魂の奥底に不可視の炎が火の粉を散らす。私たちは音楽に耳を傾け、歓喜と平安をその舌に味わって満ちる。

  「精神的マスナビー」より


 スーフィーの回旋舞踊