東大阪市加納 日蓮宗 妙政寺のブログ〜河内國妙見大菩薩、安立行菩薩、七面大天女、鬼子母神を祀るお寺!

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河内國の昔話 「ひとだま」

2016-11-04 21:48:30 | 河内國の昔話
こんばんは。

わたし、大学時代の専攻が日本史学科の日本近世史なんです。
民俗学も少しかじりましたんで、こうした河内の昔話にも興味があります。

妙政寺のお檀家さんに民話の語り部がいらっしゃいます。その方が纂集されたお話も紹介していこうと思います。


「ひとだま」


 加納村の東に、村人が「妙見さん」と呼んで親しんでいた小さなお堂がありました。そこの仏様は、大変霊験あらたかだとの評判で、、朝夕参詣の人が絶えませんでした。男の子を授けて欲しいと願をかけた、お貞さんのねがいもかなえてくださったし、天然痘にかかった人を助けてくださったことも村人は知っていたのです。
そんな時、日本中が大きく変わり、明治維新をむかえました。長い間の封建時代からやっと解放され、ほっとした村人は将来の生き方に希望を持ちはじめました。

けれども、村人の生活は少しも良くならず、かえって今まで以上に苦しくなったのです。それは税が高くなったうえ貿易により、安いエジプト綿が輸入されたので、農家にとって大切な収入源であった綿作りや、河内木綿作りができなくなってしまったからです。

朝星、夜星をいただいて長時間働いても、お堂に寄進する余裕などあるはずもない村人の生活でした。

そんなころ、お堂を守る老僧が病にふせるようになったのです。

ある夏の夕暮れ、男の子三人がトンボを追ってこのお堂へ来ました。

「あっ、あんなとこに赤いもんあるぞ、なんやろ」

年かさの子がさけびました。お堂のツツジの木の所に、赤い丸いものがふわふわゆれていたのです。

三人は、おそるおそる近づいてみました。丸いものには縄のようなしっぽがついているのです。更に近づいた三人は「あっ」といっせいに奇声を発して、棒立ちになってしまいました。それもそのはずです。その赤い丸いものに、人間の顔が浮かんで見えたのですから;。ふしぎに、目鼻口がはっきりと見えるのです。しかも、その顔は見覚えのあるお堂を守る老僧の顔だったのです。

あ然とつっ立ている三人の頭の上を、その赤い玉がすうっと夕空に舞い上がり、加納の墓をさして飛んで行きました。その時、頭から水を浴びたような寒気が三人の体を走りました。

三人は、恐ろしさに言葉もなく一目散に家に帰り、両親に今のことを話しました。親たちが、不吉なことを感じてお堂に駆けつけた時には、幸薄いお坊さんは、荒れた庫裏で冷たくなっておられました。

三人の見たものは、何だったのでしょう。それは、きっとその坊さんの肉体から抜け出したひとだま;だったに違いないと、村人たちは、囁き合いました。