●復興加速化本部、提言を政府に提出

 

 自民、公明両党の復興加速化本部は6日、安倍晋三首相に復興をめぐる提言を提出した。帰還困難区域が大半を占める大熊、双葉両町について「5年後には住めるまちづくりを目指す」としている。ただ、現実味は乏しく、すでに移住した人々への支援策も見えてこない。

 

 「帰還困難区域にも復興拠点を5年後につくることが、希望を与えることになる」。6日午後、首相に提言を渡した自民党大島理森・復興加速化本部長は記者団に述べた。

 

 提言がまず触れたのは、人口で96%が帰還困難区域にあたる大熊、双葉両町の将来像だ。これまで避難指示解除のめどが示されなかったが、復興計画の策定や集中的な除染を進め、5年後には「家族そろって東京五輪を応援できる」ことを目指す、とした。

 

 こうした目標には、中間貯蔵施設の受け入れでさらに復興が見通せなくなる両町へのアピールがにじむ。提言は、施設整備が「福島再生」のために重要な課題と指摘。県外最終処分の法制化のほか、交付金などの支援策、地権者への用地補償で「最大限の努力」が必要だと国に求めている。

 

 しかし、提言が示す「5年」という目標が現実味を欠く点は否めない。そもそも住民が町に戻るには除染が不可欠だが、帰還困難区域除染をどう進めるかは全く決まっていない。加えて両町にまたがる福島第一原発では今後、前例のない廃炉作業が数十年続く。

 

 双葉町の男性(49)は「原発が収束せず、溶けた燃料がどうなっているかもわからない。その近くに住めと言われても、戻る人はほとんどいないだろう」と話す。自身はいわき市に土地を買った。周りにもすでに県内外で新たな家を買い、移住を決めた町民も少なくない。男性は「帰らない人がどうすればいいのか、ビジョンと着地点を示してほしい」と多くの避難者の思いを代弁するが、原発事故から3年以上たっても、国や県、自治体の議論は盛り上がらないままだ。

 

 両党は昨年11月に政府に出した提言で「希望者は全員帰還」との従来の方針を転換し、新しい生活を選ぶための賠償などを打ち出した。ただ、移住を選ぶ人が受け入れ自治体や、避難元の町のコミュニティーやまちづくりにどう関われるか、今回の提言でも示されていない。(根岸拓朗)

 

 ●提言のポイント

 

【地域の将来像】

・国は県、町と連携し、帰還困難区域の町で「5年後には住めるまちづくり」に取り組む

・住民が帰還か新生活かを選ぶ材料として、避難指示区域の人口の見通し、産業復興の道筋、まちづくりの進め方を明確に示す

 

除染中間貯蔵施設の整備】

・県外最終処分の法制化や、県や受け入れ自治体のニーズを踏まえた支援、地権者との用地交渉で最大限の努力をする

・場の線量ではなく個人線量を重視し、現実的で効果的な市町村除染を検討する

 

【早期帰還の支援】

・楢葉町の2014年度内の避難指示解除に向け、関係省庁が総力を挙げる

・川内村の早期の避難指示解除ができるよう環境整備を引き続き進める