Quelque chose?

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リウマチ治療でバイオを減量または中止できるか?

2019-02-16 | 医学・医療・健康
gooブログにもやや慣れてきたので、そろそろ、一応専門としている関節リウマチの話題について、少しずつですが取り上げていこうと思います。

今回は、バイオ(生物学的製剤)を使って治療しているリウマチ患者さんが、バイオの量を減らしたりバイオ治療を止めたりできるのかを見た最近の臨床研究を紹介します。

Brahe CH et al.
Dose tapering and discontinuation of biological therapy in rheumatoid arthritis patients in routine care - 2-year outcomes and predictors.
Rheumatology (Oxford). 2019 Jan 1;58(1):110-119. doi: 10.1093/rheumatology/key244.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30169706

今は以前と違って、関節リウマチの治療は「寛解」を目指し、そして実際に寛解に達することが珍しくなくなっている状況ですが(しかしながら、そうは言ってもやはりなかなか治療が今ひとつ効かない患者さんも一定の数いらっしゃるのがまだまだ・・というところですが)、寛解に達した後に治療をどうしていくかということについては、いまだ試行錯誤というところではないかと思います。

今回は、寛解を長期に維持できている患者さんで、バイオを減らしたり止めたりして、その後の経過を2年間追跡してみたという報告です。

調査対象は143人(91%がTNF阻害薬、9%がTNF阻害薬以外のバイオを使用し、DAS28-CRP 2.8以下でレントゲン上、前年に骨病変の進行がみられなかったリウマチ患者さんです。
バイオは、まず標準治療量の2/3に減量、16週間後に1/2に減らし、さらに寛解が維持されていれば、32週間でバイオを中止。
その間に再燃や骨病変進行がみられた場合には減量を中止して1ステップ前の量に戻し、その後は減量しないというプロトコールです。

141名が2年間追跡調査された結果、2年目において、87名 (62%)がバイオ減量成功。 26名 (18%) は2/3量、39名 (28%) は1/2量、そして22名 (16%) はバイオ中止。
一方で、54 名 (38%)は減量前の当初の量を継続されていました。
レントゲンで骨病変が進んでいたのは9名 (7%)と、一部の方のみでした。

バイオ減量がうまくいくかどうかの予測因子は、その前のバイオ使用が1剤以下、男性、MRIを用いたベースの関節炎スコアが低かったことなど。
バイオ中止についてはIgM-RF(リウマチ因子)が陰性であることが予測因子として指摘されました。

ということで、

だいたい2/3の患者さんで生物学的製剤は減量でき、一部では中止も可能であったという結果でした。

もちろん、これを参考に、実際には個々の患者さんの状況に沿った治療を考えていくことになりますが、いずれにしても、リウマチを治療するに当たっては、なるべく早い段階で寛解を導入することが、後々のためにも重要・・ということですね。

寝る前にブルーライトをカットダウンすると不眠症に有効か?

2019-02-16 | 医学・医療・健康
たまたま見つけた、少し前の論文ですが、ちょっと興味深かったので紹介します。

「不眠症のためにブルーライトを遮断する」

スマートフォンなど、ブルーライトを発する電子機器を寝る前に使うと、睡眠に関わるホルモンであるメラトニンの分泌を抑制することなどによって、睡眠の問題を悪化させる可能性があると言われています。

この研究では、就寝前にブルーライトをカットするレンズ("琥珀色"のもの)を使うことで、不眠症の人の睡眠を改善させるかどうかを検討したものです。

不眠症状をもつ患者14名(うち8名が女性、平均 46.6歳)が、ブルーライトカットレンズ、もしくは対照のレンズのいずれか(フレームは軽量のものを使用)を、連続7日間、就寝前の2時間着用し、その後4週間中断したのちにもう一方のレンズと交換してさらに7日間使い(クロスオーバー試験)、ピッツバーグ不眠症スケールthe Pittsburgh Insomnia Rating Scale (PIRS) などを用いて睡眠障害の状況を調査したというものです。

その結果、

PIRSの合計スコアおよび各サブスケールのスコアは、ブルーライトカットレンズを用いたときのほうが、クリアレンズ使用時と比べて有意に改善したとのことです (p-values <0.05)。
覚醒時間は延長し、自覚的な睡眠時間(mean subjective total sleep time (TST))や睡眠の質も改善。アクチグラフ(小型加速度センサー)を用いた睡眠時間測定でも、ブルーライトカットレンズ使用時のほうが睡眠時間が長くなっていたそうです (p = 0.035).。

ということで、
1週間にわたり、就寝前の2時間、ブルーライトカットのメガネを着用することで、不眠症患者の睡眠が改善したという結果です。

なかなか眠れないなあと悩みつつ、寝る前についついスマホを見てしまう人は(なるべく就寝前にはスマホをオフにするのが本来おすすめですが)、ブルーライトをカットするメガネを着用するようにしてみてはいかがでしょうか。メガネをかけるだけなので、特に副作用もないですしね。

Shechter A, et al.
Blocking nocturnal blue light for insomnia: A randomized controlled trial.
J Psychiatr Res. 2018 Jan;96:196-202. doi: 10.1016/j.jpsychires.2017.10.015. Epub 2017 Oct 21.


高血糖と骨折リスク:糖尿病でなくても要注意!

2019-02-16 | 医学・医療・健康
骨の「強さ」は、いわゆる「骨密度」だけではなく、骨の「質」にもよっている。
そしてその骨の「質」は、糖尿病や動脈硬化など、生活習慣病に影響される。
そういったことが、近年次第に明らかになってきています。

特に糖尿病については、高血糖状態から骨のコラーゲン分子が糖化を起こすことで骨構造の劣化が生じ、このために糖尿病患者さんでは、骨密度の低下がなくても骨折が多くなると報告されています。

しかしこの点について、これまで日本人を対象とした臨床研究はあまり見当たりませんでした。

最近、日本人男性を対象として、"高血糖状態が骨粗鬆症による骨折のリスク上昇と関連する"という知見を報告する論文が発表されましたので、以下に簡単に紹介してみます。


65歳以上の地域在住日本人男性を対象とした「藤原京スタディ」というコホート研究による解析で、空腹時血糖値とHbA1c、骨密度を解析し、骨粗鬆症による骨折の有無を調査。

1型糖尿病と確定済みであったり、チアゾリジンによる治療中であるなどの一部を除いた1,951名を解析。さまざまな背景因子や臨床データから、血糖と骨折リスクとの関連を検討しています。

血糖の状態については、空腹時血糖値とHbA1cをそれぞれ以下の3カテゴリーに分類して検討。

・正常型: 空腹時血糖が100 mg/dL未満 または HbA1cが5.7%未満

・耐糖能異常/前糖尿病型: 空腹時血糖が100 mg/dL以上126 mg/dL未満 または HbA1cが5.7%以上6.5%未満

・糖尿病型: 空腹時血糖 126 mg/dL以上 または HbA1c 6.5%以上

その結果、

・血糖値またはHbA1cが「糖尿病型」の男性は、骨粗鬆症性骨折のリスクが血糖値正常の人に比べて明らかに高い(2倍以上)

・HbA1cが「前糖尿病型」(糖尿病ほどではないが血糖が高い)の人は、主要な骨粗鬆症性骨折(脊椎、股関節、上腕骨近位部、橈骨遠位部)のリスクが、血糖が正常の人に比べて2倍程度高い

・高血糖であるほど骨折リスクが高くなるという傾向がある

ということがわかりました。

つまり、糖尿病の方はもちろん、まだ「糖尿病」と診断されていない段階でも、骨折リスクが高まった状態にあるということです。

健診で「血糖が高め」と言われたら、将来の骨折予防のために今から要注意!ですね。


Iki M, et al.
Hyperglycemic status is associated with an elevated risk of osteoporotic fracture in community-dwelling elderly Japanese men: The Fujiwara-kyo osteoporosis risk in men (FORMEN) cohort study.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S8756328219300055

ちなみにFORMEN studyというのはFujiwara-kyo Osteoporosis Risk in Menの頭文字を取ったそうです。