主に「根の深い木」について書きます。
韓国時代劇というのは「ギリギリ、イサンまで」かなという気がします。イサンは22代国王・正祖です。「イサン」は正祖の名前です。「イ」が名字で、「サン」が名前。
治世は24年間で「1800年の夏」に亡くなります。これ以後は19世紀です。安東金氏が政治を壟断し、また日本をはじめとした外国の圧力も強まり、政局が混乱。「ろくな時代じゃない」ということになります。イサンの息子は純祖ですが、純祖でドラマは作りにくいと思います。
イサンの「じいさん」が英祖で、「ヘチ王座への道」の主人公です。その英祖の母が「トンイ」です。トンイは歴史上は淑嬪崔氏(スクピンチェシ)です。1670年に生まれ、1718年に48歳で亡くなります。
あまり史料がないようで名前は「トンイ」でもいいし、まあどうとでも設定できる人です。
この人は英祖の実母ですが、英祖の「公式の母」は「仁元王妃」(イヌォン王妃)です。仁元王妃は英祖の父の三番目の王妃です。一番目はイニョン王妃で、有名です。二番目はチャンヒビンでさらに有名です。
「トンイ」を少し見返してみたのですが、むろんファンタジー史劇です。ただ史実に基づく部分もあります。トンイ役の女優さんが明るく、ジメジメした官僚の対立も、ジメジメ感が薄らぎます。
こういった人物の「おおもと」が誰かというと、むろん朝鮮王朝を作ったイソンゲであり、イバンオンです。三代目王イバンオンの息子が「イド」で、これが高名な世宗です。ハングルを作りました。
イド、世宗が主人公のドラマはそう多くはありません。「あまりに偉人扱い」のため、ドラマになりにくいのです。彼の息子の世祖なんてのは「悪役」「かたき役」ですから、ドラマになりやすい。父のイバンオンも「とんでもないやつ」なのでドラマになりやすい。たとえば「不滅の恋人」の「悪役の王」のモデルは世祖です。本当の主人公はアンピョン大君で、まあ本当は情けないやつです。なんで「アンピョン大君やねん」とでも言いたくなります。
話を戻すと「イドは聖人過ぎて」、面白みがないのです。在位は1418年から1450年です。日本だと応仁の乱が1467年です。
そのイドが実に魅力的に描かれているのが「根が深い木」です。むろん半ばフィクションで、実在しない秘密組織「ミルボン」との闘いが主要テーマとなります。
このイド、「弱虫で泣き虫」です。前半生は強大な父、イバンオンに頭が上がりません。後半生も「王はつらい」と思っています。「世が太平なのは、王の心が地獄だからだ」ということになります。
このイドに比較して「揺らぐことがない」のが「民出身の女官ソイ」と「ハンジ村のトルボク」「武人のムヒュル」です。この三人に支えられてイドも揺らぎながらも自分の道を貫きます。
父親が死んだ時、泣け叫ぶ家臣の中にあって、イドは茫然としています。彼は父のやり方に反対でしたが、それにしても巨大な父過ぎるからです。そして考えます。
「イバンオンがいない朝鮮がはじまる」、、、さほどにイバンオンのやり方は苛烈でした。これは史実でもあります。
ハングルを作ることを誓ったイドですが、担当者が次々と謎の死を遂げます。ここでもイドは弱音ばかり。それに対してソイが「王の責任ではない」と書きます(彼女は口がきけません)。
イドは怒ります。「お前などに何がわかるか、朝鮮で起きることは、花が枯れても、雷が落ちても、すべて王の責任なのだ。そのつらさがお前にわかるか」
それでもソイは揺らがず「王の責任ではない」と書き続けます。イドは最後は泣き崩れます。
イドは「怒り、文句を言い、泣き、そして誇る」人間です。つまりは「悩める人間」なのです。
大王世宗を「偉人過ぎる人間」として「描かなかった」ことで、この作品は実に奥の深い作品となっています。
韓国時代劇というのは「ギリギリ、イサンまで」かなという気がします。イサンは22代国王・正祖です。「イサン」は正祖の名前です。「イ」が名字で、「サン」が名前。
治世は24年間で「1800年の夏」に亡くなります。これ以後は19世紀です。安東金氏が政治を壟断し、また日本をはじめとした外国の圧力も強まり、政局が混乱。「ろくな時代じゃない」ということになります。イサンの息子は純祖ですが、純祖でドラマは作りにくいと思います。
イサンの「じいさん」が英祖で、「ヘチ王座への道」の主人公です。その英祖の母が「トンイ」です。トンイは歴史上は淑嬪崔氏(スクピンチェシ)です。1670年に生まれ、1718年に48歳で亡くなります。
あまり史料がないようで名前は「トンイ」でもいいし、まあどうとでも設定できる人です。
この人は英祖の実母ですが、英祖の「公式の母」は「仁元王妃」(イヌォン王妃)です。仁元王妃は英祖の父の三番目の王妃です。一番目はイニョン王妃で、有名です。二番目はチャンヒビンでさらに有名です。
「トンイ」を少し見返してみたのですが、むろんファンタジー史劇です。ただ史実に基づく部分もあります。トンイ役の女優さんが明るく、ジメジメした官僚の対立も、ジメジメ感が薄らぎます。
こういった人物の「おおもと」が誰かというと、むろん朝鮮王朝を作ったイソンゲであり、イバンオンです。三代目王イバンオンの息子が「イド」で、これが高名な世宗です。ハングルを作りました。
イド、世宗が主人公のドラマはそう多くはありません。「あまりに偉人扱い」のため、ドラマになりにくいのです。彼の息子の世祖なんてのは「悪役」「かたき役」ですから、ドラマになりやすい。父のイバンオンも「とんでもないやつ」なのでドラマになりやすい。たとえば「不滅の恋人」の「悪役の王」のモデルは世祖です。本当の主人公はアンピョン大君で、まあ本当は情けないやつです。なんで「アンピョン大君やねん」とでも言いたくなります。
話を戻すと「イドは聖人過ぎて」、面白みがないのです。在位は1418年から1450年です。日本だと応仁の乱が1467年です。
そのイドが実に魅力的に描かれているのが「根が深い木」です。むろん半ばフィクションで、実在しない秘密組織「ミルボン」との闘いが主要テーマとなります。
このイド、「弱虫で泣き虫」です。前半生は強大な父、イバンオンに頭が上がりません。後半生も「王はつらい」と思っています。「世が太平なのは、王の心が地獄だからだ」ということになります。
このイドに比較して「揺らぐことがない」のが「民出身の女官ソイ」と「ハンジ村のトルボク」「武人のムヒュル」です。この三人に支えられてイドも揺らぎながらも自分の道を貫きます。
父親が死んだ時、泣け叫ぶ家臣の中にあって、イドは茫然としています。彼は父のやり方に反対でしたが、それにしても巨大な父過ぎるからです。そして考えます。
「イバンオンがいない朝鮮がはじまる」、、、さほどにイバンオンのやり方は苛烈でした。これは史実でもあります。
ハングルを作ることを誓ったイドですが、担当者が次々と謎の死を遂げます。ここでもイドは弱音ばかり。それに対してソイが「王の責任ではない」と書きます(彼女は口がきけません)。
イドは怒ります。「お前などに何がわかるか、朝鮮で起きることは、花が枯れても、雷が落ちても、すべて王の責任なのだ。そのつらさがお前にわかるか」
それでもソイは揺らがず「王の責任ではない」と書き続けます。イドは最後は泣き崩れます。
イドは「怒り、文句を言い、泣き、そして誇る」人間です。つまりは「悩める人間」なのです。
大王世宗を「偉人過ぎる人間」として「描かなかった」ことで、この作品は実に奥の深い作品となっています。