鏡海亭 Kagami-Tei  ウェブ小説黎明期から続く、生きた化石?

孤独と絆、感傷と熱き血の幻想小説 A L P H E L I O N(アルフェリオン)

生成AIのHolara、ChatGPTと画像を合作しています。

第59話「北方の王者」(その1)更新! 2024/08/29

 

拓きたい未来を夢見ているのなら、ここで想いの力を見せてみよ、

ルキアン、いまだ咲かぬ銀のいばら!

小説目次 最新(第59)話 あらすじ 登場人物 15分で分かるアルフェリオン

「永遠の青い夜」の謎…これで万全、関連セリフ集

連載小説『アルフェリオン』、第44話が始まりました。

「永遠の青い夜」とは何だったのか?――長年の謎が遂に明らかになります。その結果、おぼろげであった旧世界の歴史の流れも、一気に明確になるかもしれません。

そこで今回は、これまで物語の本編の中で「永遠の青い夜」について語られた場面を、セリフ部分のみ抜粋してみました。特に第33話からの抜粋部分などは、今読み返してみても、物語の核心に迫るようなネタを含んでいます…。謎を予め整理し直し、今後の第44話をいっそう楽しんでいただければ幸いです。お節介企画(^^;)で恐縮です。

【注意!】以下は、物語の第33話までの部分をまだ読んでいない方にとっては、ネタバレになります。ご注意ください。

 ◇ ◇



第14話
セレナ(パラス騎士団)がラプルス山脈に眠る旧世界の遺跡を探索に行った際、彼女が見た映像より。

「遠き世の末裔たちよ。解放戦争の真実を伝えよう……」

「かつてこの大地は、あの大いなる災い、《永遠の青い夜》の中で……死の世界に変わりつつあった。滅びを恐れた人類は、選ばれし人々を天空植民市群に送った。この《アーク》の民を始祖とするのが、《天空人(てんくうびと)》である。他方、地上に残され、死の闇の中でこの世界を再び蘇らせたのが、我ら《地上人(ちじょうじん)》の誇り高き祖先たちだった」

「天空人はその圧倒的技術力をもって、我々地上人を苦しめた。衛星軌道上からのレーザーが大地に降り注ぎ、首都はもとより小さな村々に至るまで、地上人の手によって築き上げられたものは悉く白紙に戻されていった。いや、我らの母なる世界全てを、天空人は否定しようとした。《アーク》の民である彼ら自身の、かつての故郷でもあるこの地上を……」

「地上界に降下した天空軍は、我々の兵力で太刀打ちできるものではなかった。同胞たちの勇敢な戦いも空しく、地上人は一方的に追いつめられていった」

「しかし天空人は、彼ら自身の中に破滅の《芽》を内包していた。……を機に地上界に追放されていた天空人……博士が、生きた……自己進化型……の……《パルサス・オメガ》を造り上げたのだ」

「パルサス・オメガの力は、我々の予想を遙かに超越していた。地上に展開していた膨大な数の天空軍は、このたった1体の巨人のために次々と撃破されていったのである。これに力を得た地上軍は総力を結集し、あの《世界樹》を奪取すべく反撃を開始する。地上人の思わぬ巻き返しに脅威を感じた天空人は、パルサス・オメガに対抗しうる最強の……である《空の巨人》、すなわち……」

 ◇ ◇

第28話
ミトーニア市の攻防の中、リューヌがルキアンに語った旧世界の話より。

 ――そう、地上界の真実を伝えましょう。あなたはまず知るべきなのです。幻の中に浮かんだ、あの青い星。あれが私たちの本当の故郷。でも遠い昔、あの星は《永遠の青い夜》によって死の世界に変わってしまった。そして終わりなき絶望を、運命のいたずらによって背負わされた人々がいた。変わり果てた母なる星に置き去りにされた人々。彼らは《アーク》の民になれなかった、烙印の民。選ばれなかった者たち。それが《地上人》。

 ――それから遙かな年月が過ぎ、過酷な環境の中で地を這って生き続けた人々は、あの美しい星の姿を少しずつ取り戻し始めていた。《天空植民市》にはない豊かな大地の恵みを、地上人たちは自分たちの手で蘇らせつつあった。すると天空人たちは、自分たちが見捨てたはずの《惑星(ふるさと)》を、再び我が物にしようと考え始めた。そして地上人の新たな犠牲のもとに……すなわち、地上界に対する強引な収奪によって……《天上界》はさらなる繁栄を誇った。天空人は、その繁栄が《勝者》の自分たちに与えられて当然なのだと、無神経に信じ込んでいた。そして地上界の《敗者》がずっと敗者のままで、自分たちに取って代わることがないよう、永遠に分かたれた光と闇の二重世界を、暗黙のうちに、そのくせ完璧なまでに作り上げていた。

 ――あの悲惨な戦いが《全く無意味なもの》になってしまわないよう、あのときの《契約》が結ばれた。それなのに、エインザールを継ぐ者であるあなたが、もしも《空しい》などと言ってしまったら、全ては本当に無駄になる。

 ◇ ◇

第29話
御子の一人であるアマリアと、フォリオムとの会話より。

「人間が生を受けたことに先天的な理由はない、という真実を受け入れることができてこそ、人は強く生きていける。つまり生の理由というのは《自分で設定しない限り元々は存在していない》のだと気づけば、むしろ《無いはずのものを探し求める》という無限地獄に陥ることもなくなる。理由を《探す》などといって、何かや誰かに自分を委ねていては、長い目で見れば苦しみが増すだけだ。それならばいっそ、理由など持たない方がまだよいかもしれぬ。理由などなくても人は生きていける」

「いかにも。実際、《地上人》たちの多くはそうじゃった。理由をもつ《余裕》がなかったというのが本当のところだがのぅ。《永遠の青い夜》がもたらした《汚染》のために魔の世界と化したあの惑星(ほし)で、彼らは、明日の命の保証すらおぼつかない毎日を過ごさねばならなかった。彼らにとっては《理由》云々など問題ではなく、《いま現に生きていること》が、それだけで尊いことじゃった。他方、そんな地上人を力ずくで支配し、彼らの犠牲のもとで豊かな生を満喫していた天上人たちはといえば、《幸せに日々を過ごせるのは当たり前。ましてや生きていることなど無条件の前提。しかし自分には、そうして生きていることの理由が分からない》などと言って《苦しんで》いたのじゃから。まったく、人間という生き物は……」

「しかし、ご老体。あのエインザールでさえ――本音のところでは、そういう天空人の一人だったのだろう?」

「わしは今でも時々思うんじゃが、博士が本当に求めていたのは、自らの存在理由を《実感》することだったのかもしれん。たとえささやかでも、もしも日々の営みの中で、彼がそれさえ肌で感ずることができていたならば――天上界のどこかに彼の《居場所》があったなら……」

「そうだとすれば、博士が地上界の側へと走ることもなかっただろうに……」

「その可能性も無かったとはいえまい。博士もまた天空人として生まれ、良くも悪くも《豊かな社会》の恩恵に浴して育った。地上界に対する天上界の支配がいかに非道なものであったとはいえ、さすがに同胞と戦ってまで地上人たちを救おうとは、博士も考えなかったかもしれん。しかし現実には、自分が天空人の一員であるという意識は、博士にはなかった。その代わりに彼の心に刻み込まれていたのは、天上界に対する違和感、あるいは《疎外感》じゃったろう」


 ◇ ◇

第33話
再びフォリオムとアマリアの会話より。

「そもそも《あれ》が人の世に《御使い(みつかい)》を遣わすのも、絶対者の定めた予定調和が《人の子》の《意志》の力によって歪められる場合があるからなのじゃ。そのほころびを《修正》するのが彼らの役目。時の経過による自然修復が難しいほどに、予め定められた道程から人の歴史が大きく外れた場合には、そうやってしばしば《書き直し》が行われてきた。勿論、人間はそれには気づいておらぬ。リュシオン・エインザールをはじめとする、ごく例外的な者をのぞけば」

「しかしあの時点で気づいても、旧世界にとってはもはや遅かったのじゃよ。結局、人の子はみな絶対者の定めた因果を展開する《駒》でしかなかった、ということをただ知って、だからといってどうしようもできなんだ。人類が母なる惑星にとどまらず、星の海に《天空植民市群》を作り上げたことも、豊かな大地が《永遠の青い夜》に閉ざされ、魔の世界となり果て、《アークの民》がそこから旅だったことも――その結果、人間が《天空人》と《地上人》とに分かたれていったことも、要するに《旧陽暦》時代の歴史すべてが最初から筋書き通りだったのだと、エインザール博士は思い知らされた。その流れを変えようとすることが、《人の子》には許されぬ行いだったともな」

「人間の中から《アークの民》が現れ、その血を受け継ぐ者たちが《天空人》として生き、残された《古い》人間たちは《地上人》として大地に残された。こうして人が二つに分かたれたこと――二千数百年に及んだ《旧陽暦》の最終局面で、《新しい人の子》が生まれるに至ったこと――これは果たして偶然じゃろうか?あるいは《人類の進歩》だとか《旧世界の魔法科学文明》のもたらした《結果》だとか、そう説明すれば済むことだと思うかの?」

「たしかに、《アークの民》は人によって選ばれ、人の力で《星の海》に送り出された。計画を決めたのもみな人間自身じゃ。ただ、その過程において――もし旧世界人たちが《主体》として振る舞っているようにみえ、自分でもそう意識しつつ、実は因果律の定めを現実化する役割を自覚なしに担っていたのだとしたら、どうかの?」

「《アークの民》や《天空人》の件は、《成り行きの結果》でも《人間の意志の産物》でもなく、《予め定められた必然》だったというのか。しかし《アークの民》というのは、《永遠の青い夜》によって変わり果ててしまった《母なる星あるいは地上界》から、種としての人類が滅びぬように選ばれた者たちなのだろう? つまりは《永遠の青い夜》という降ってわいた災厄がなければ、《アークの民》など選ばれる必要はなかった。それでもやはり《必然》なのか、違うのか」

「まさに《偶然》を装い、《あれ》はこの世に一定の《契機》を与える。そうやって蒔かれた《種》とも知らずに、人間たちは物事の流れを受け取り、さらなる現実へと展開させてゆく。偶然の災害を《天》災と呼ぶことにしたとは、昔の人間は物の本質をよく見抜いておったものよ……」

「昔、エインザール博士は、リューヌだけでなく、わしにも時々語っていた。《新たな人の子》を創造すること、言い換えれば《人間》をより《高次》の存在へと《昇華》させるという《目的》が、《何か》によって自分たちの歴史に予め定められているような気がする、と。《解放戦争》の始まる以前から、博士はそう感じていたらしい。直感の鋭い男であったからの」

「そして《地上界》の勝利が確実となり、二つに分かたれた《世界》及び《人》がひとつに還ろうとしていた頃、皆が勝利への期待に酔う中で、博士の不安だけはいっそう強まった。仮に、人間の歴史に先ほど言ったような《目的》が定められていたとしたら、自分たちの戦いは、連綿と続いてきた旧世界の歴史をいったん白紙に戻すことを意味するのではないかと。それが現実となったとき、《目的》の実現に向かって因果の輪を着々とつなげてきた《力》の側からの、つまり《あれ》からの、何らかの反作用が必ず生じるのではないかという漠然とした危惧を持っておった。それは、途方もない妄想・杞憂のたぐいであるように思われた。じゃが、たしかに《天上界》の崩壊によって、因果の定めは、もはや修正し難いほどに覆されることになった。《あの存在》の前では塵以下にすぎない一人の《人の子》、リュシオン・エインザールによって、世界の向かうべき方向は大きく変えられたのじゃよ。いま思えば、だから……」

「御使いたちが、それを見逃すはずはなかった」

以上
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