標準語は使えるし、
相手によっては完全に標準語で話をするけれども、
頭の中は常に西のことばである。
たとえば電車の中で聴こえてくる人々の話を聞いていると。
”もしかして彼女は俺のことを好きなのではないか?”
という妄想にとらわれている大学生風の男には、
その隣の友人の表情を読みながら、
「ないない(手を振る)それはない」
と遮り、おしゃべりおばばーずの、延々と続く、介入しすぎな身内の噂話、
"だからあたしいってやったのよ~”なところで、
「きょうみみにちよう~」
と耳をふさぎ、対面に座る、赤ら顔おじじーずの、
"あの部長のあのやり方がどうにも我慢ならん"的な、
ろれつの回らない社内愚痴話(面と向かって言えへんのやろ)の、
"だから俺は言ってやったんだよ(うそいいな)"なところで、
「ここやのうて会社で言い(バシ!)」
とダメ出し。
真夜中の散歩で見かけた酔っ払いには、
「ひゃああのおっちゃん道路で寝たはるわ」
と驚き、別れ話中のふたりのそばを歩くとき、
男の苦しい言い訳を小耳にはさめば、
「無理やと思うで、その設定は」
と首を振る。
頭の中は西の風が吹いている。
とはいえ、両親ともに東国の人間で、生粋の関西人ではないため、
どこかゆるいマイルドヤンキーならぬマイルドウエスタンである。
だけど西で育ってよかったなと思うことは、
これまで数回かかってきた「○○詐欺」な電話には、
一度も騙されなかったことである。
すべてを撃退したった。
ちなみに一度目の詐欺まがいはこんな具合。
『わたしは医療機関のものだが、あんたの夫の検診で重い病気の疑いがあって、先進医療がどうのこうの、振り込め』
「健康診断はどこでやったんですか?」
『都内だ』
「プップ(笑う)うちの亭主の勤務地は東京やないで、なにゆうとんねん、おっさん」
『・・・』
ブチッ!・・・ツーツーツー
切られてしまってから、次はなんていうつもりだったのか気になり、失敗した、と思った。
もう少し引き伸ばしてやればよかった。それにしてもこの電話をかけてきたおじさんは、末端も末端で、ずぶの素人っぽかった。
演技がどうにもならんくらい下手。で、もうひとつはこうである。
『弁護士だが、夫の両親が霊感商法で騙されて高額の商品を買ってしまったので、お金を取り返してあげる、振り込め』
「・・・はあ?夫の両親?なんかの間違いとちゃいますか?数年前に亡くならはった(大嘘)んやけど、お宅ら、どちらさん?名前いうて」
『・・・』
ブチッ!・・・ツーツーツー
もうひとつは内容も忘れた。夫の不祥事がらみの振り込め、だった気がする。
もちろんそれも一発で撃退した。
再三、防災放送がかかり、今日、○○市で振り込め詐欺の電話がありました、ご注意ください、というのだけれど、
「こんなもん、ひっかかるほうがおかしいで」と、頭の中で独り言をいうのである。
西は被害が少ないというのは実感をもって頷ける話。
これは今夜の pray of the day やろ
【虎テレ動画】鳥谷 華麗なジャンピングキャッチ!20150812: トラニュース http://t.co/GL9aGmWCZJ #阪神タイガース
— にゃう子~ねこデザイにゃあ~ (@MYCROPGIFT) 2015, 8月 12
野球観てるとき、野球のこと考えているときもそうである。
たいてい一軍のことを考えているのに頭の中はウェスタン。
ひゃー鳥谷かっこええなあ!とか、マートン様様や~、とか。
おまけにこないだ肉子ちゃんを読んだばかりなので、
頭の中にとどまらず、家では完全に西のことばづかい。
「ゴメスひげ伸ばしたはるわ」
「藤浪また背えのびたんちゃうか」
「しもた!雄星いつ投げたん?」
「あした大谷やんなあ?」
「ハマは番長か」
うさん臭そうに、うざったそうに、夫がするのは完全に無視して、どんどん独り言。
しゃーないやんなあ。
浮かんだことばをいちいち標準語に変換するの、ごっつめんどくさいんじゃ。