角灯と砂時計 

その手に持つのは、角灯(ランタン)か、砂時計か。
第9番アルカナ「隠者」の、その俗世を生きる知恵を、私にも。

#038 メルケル首相来日

2015-03-14 23:40:23 | 政界人間模様
先頃、メルケル首相が来日しました。

基本「実務的」訪日ということで、
それなりの成果をあげたつもりでいたところへ、
メルケルさんとしても、まさかこんな、
「言った言わない」の泥仕合になるとは思わなかったでしょう。

日独首脳会談後の共同記者会見(9日)では、

時事通信記者による
「ドイツの御経験、御教訓に照らして、日本が今後、中国や韓国とどのように関係を改善していったらいいのでしょうか」
というお約束の質問に対し、

「私は、日本に対して、アドバイスを申し上げるために参ったわけではありません。私には、戦後、ドイツが何をしたかということについて、お話することしかできません」

と断った上で、ドイツの(!)話をしました。

また朝日新聞における講演(10日)でも、

朝日取締役編集担当氏の
「歴史や領土などをめぐって今も多くの課題を抱える東アジアの現状をどうみますか」
という、これまたお約束の質問に、

「ドイツは幸運に恵まれました。悲惨な第2次世界大戦の経験ののち、世界がドイツによって経験しなければならなかったナチスの時代、ホロコーストの時代があったにもかかわらず、私たちを国際社会に受け入れてくれたという幸運です。どうして可能だったのか? 一つには、ドイツが過去ときちんと向き合ったからでしょう。そして、全体として欧州が、数世紀に及ぶ戦争から多くのことを学んだからだと思います」

と、あくまでもドイツの(!!)話をしています。

で、続けて、

「さらに、当時の大きなプロセスの一つとして、独仏の和解があります。和解は、今では友情に発展しています。しかし、隣国フランスの寛容な振る舞いがなかったら、可能ではなかったでしょう。ドイツにもありのままを見ようという用意があったのです」

と、隣国側の寛容に触れています。

朝日(と、メルケル氏の発言を楽しみにしていた韓国)的には、
余計な補足説明だったかな。

いずれにせよ、独首相として、
戦後の「和解」については一般論にとどめ、
日韓、日中の揉め事には関わらない、
というスタンスでいたことが滲み出ています。

そこへ「ちょっと会ってあげた」くらいの民主党岡田代表との会談(10日)で、
ナチスによる犯罪行為への反省に触れつつ、日本に慰安婦問題の解決を促した、
ことになってたのだから、まあ驚くわね、そりゃ。

ドイツ大使館が否定(13日)するのは無理もない。

ところが、そこで話は終わらず、
というか終わるはずもないのだけれど、
岡田さんが「和解発言は事実だ」と反論(13日)したりして、怪しい雰囲気に・・・

ただ、この時点ですでに、岡田さんの言い方も微妙ではあるんですよね。

「(メルケル氏から)問題を解決した方がよいという話があった。私もかなり丸めて言っているが、(メルケル氏が)慰安婦問題を取り上げたことは紛れもない事実だ」
「(メルケル氏が)一般論としてドイツの話を説明していく中で日本についても言及した。そういう説明をしたということは、日本のことについて当然念頭に置いて発言しているということだ」

丸めて言っている?
〜ということは、〜ということだ?

他者の発言について、ご自分の解釈を織り交ぜて説明していますね。

さらに加えた説明(14日)では、

「慰安婦問題はメルケル氏が持ち出し『日韓両国は非常に大事な関係だから、この問題を早く解決した方が良い』と(言われた)」
「『日本政府に』とは言っていない。誰がとは言っていないが、解決した方が良いという話だった」

誰がとは言っていない?
なら、やっぱり言ってないんじゃん!

私には、岡田さん、相当分が悪いと思えるんですが、

一応「配慮」してさしあげれば、
ちょっとした言語文化の違いが背景にあるのかも、という気もしますね。

つまり、日本語では主語・目的語が省略され曖昧になっても平気、
ドイツ語ではどちらともキッチリ明示しなければならない、みたいな。
そして、日本語が曖昧さを許すが故に、相手の意図を勝手に察してしまう、みたいな。

もちろん、
通訳が勝手に足したり引いたりしていた、という可能性もあるんですが。

ともあれ、

メルケル氏は、来日中終始一貫、
戦後の和解については、あくまで一般論として語り、
具体的な方法論に関しては、ドイツの(!!!)事柄に限定して話していたのに、
日本の人々(特に歴史を修正したがらない頑固者たち)は勝手に斟酌してしまう。

ちょいと嫌気も差したんじゃないかな。
もしくは、憐れみを感じたか・・・


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