角灯と砂時計 

その手に持つのは、角灯(ランタン)か、砂時計か。
第9番アルカナ「隠者」の、その俗世を生きる知恵を、私にも。

#227 『コウノドリ』の言ってることは(たぶん)正しい。でも、それでも・・・

2017-12-17 06:35:36 | 命―畏れと戦き
(『コウノドリ』 第10話より TBS FREE by TBSオンデマンド;キャプチャー)



「出生前診断」「染色体異常」についてのお話です。


―その質問の答えは、僕には分からない。

「生命は尊い。
赤ちゃんが生まれてくることは奇跡だ。
平等であるはずの生命を選別してはいけない」

そのとおりだ。
けど、僕はずっと迷ってる。

「生命の選別」

その言葉に皆が囚われてしまっていて、
お母さん、お父さん、家族、
その事情には目が向けられていない。
それぞれの事情の上に生命は生まれてくる。
育てていくのは家族なんだ。

出生前診断を受けた結果、
中絶を選択する家族もある。
心が重くなる。
いつまでも慣れることはない。

けど、
悩みに悩んだうえでその選択をして、
僕達に助けを求めてる。
その手を払いのけることはできない。

中絶を決めたお母さんが、
赤ちゃんを最後に抱きたいと願う・・・

確かに矛盾してるかもしれない。
だけど、その葛藤に僕達が寄り添わないで誰が寄り添う?

検査を受けた人、受けなかった人、
赤ちゃんを産んだ人、産まなかった人、

どの選択も間違ってない。

いや、間違ってなかったと思えるように、
産科医として、家族と一緒に生命と向き合っていく。

それが、僕に、僕達にできることなんだと、
そう信じて僕はここにいる。



TBS金曜ドラマ『コウノドリ』第10話終盤、鴻鳥(綾野剛)のセリフです。


ここで言われていることは、
産科医の姿勢として、もちろん正しいと思います。

このセリフのみならず、ドラマ全体を通して、
出生前診断や染色体異常について、真摯に考えようという、
番組スタッフ・キャストの頑張りも伝わってきました。

テレビ放送という制約や、
視聴者の皆さん、それぞれで向き合い、答えを探してください、というメッセージとしてなら、
ここで留めておくことも、やはり正しいのでしょう。


けれど、なのに、
どうにもこうにも「もう一声」という思いが、
自分は拭えません。


「出生前診断を受ける、受けない、妊娠を継続する、中絶する、
それぞれの人が考え抜いて出した結論なら、そのどれもがそれぞれに正しい」

自分もそうだろうと思います。

けれど、これから結論を出そうという人に対して、
同じ言葉で判断を丸投げするのは、ちょっと違うという気もするのです。


「出生前診断を受ける、受けない、妊娠を継続する、中絶する、
それぞれの人が考え抜いて出そうという結論なら、そのどれもがそれぞれに正しい」

そう言っておけば、誰も傷つかない。
何よりも、そのように言ってる自分が傷つかない・・・



このテのことは、どこまで行っても他人様のことであるし、
実際その立場にならなきゃ解らないでしょ、と言われたら返す言葉もありません。

そんなわけで、
このテーマで記事を書こうか書くまいか、
今までで一番迷ったりもしました。

でも、それでも、書かずにはいられません。
以下、そんなワタクシの「願い」もしくは「祈り」として。



出生前診断は、
もし陽性だったなら、出産までに心と環境の準備を整える、
そのためだけに受けてほしい。

授かった生命について、
事情を列べて「産める」「産めない」を、頭で考えるのではなく、
事情はさて置いて「産みたい」「産みたくない」を、お腹で感じてほしい。

確かに拍動し、脈打っているその子は、
(結果的に死んでしまうことがあるにしても)
今、そこで、確かに生きているということを忘れないでほしい・・・



もはや無い過去のことは問いません。
いまだ無い未来のことを想っています。

まだまだ不十分かもしれないけれど、

病気や障碍に関わる全てのことを、
当事者と当事者家族とだけに背負わせるほど、
日本国と日本人は冷たくはありません。

そして私は、私達は、皆等しくその一員なんです。




・・・要らぬお節介、スミマセンでした。


*TBS金曜ドラマ『コウノドリ』公式サイト
http://www.tbs.co.jp/kounodori/

*TBS FREE by TBSオンデマンド:コウノドリ第10話「出生前診断 その先に」(12月22日、11話放送直前まで視られます)
http://www.tbs.co.jp/muryou-douga/kounodori---s2---/010.html

・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・

「体外受精」「着床前診断」においては、さらに先を行ってます。

〈従来の着床前診断は染色体の一部しか調べられなかったが、現在は染色体の全ての異常を読み取る方法が主流になってきている。今後は、より幅広く遺伝子情報を読み取る検査が現れることも予想され、選別の対象となる疾患が拡大する恐れがある。着床前検査が問うのは、障害と向き合う社会の姿勢そのものでもある〉

*Web産経ニュース:新たな「命の選別」に社会的議論が必要 着床前検査承認
http://www.sankei.com/life/news/141213/lif1412130045-n1.html



こちらは、ちょっと前に読んだ、あるダウン症児・家族の物語です。

*アットエス静岡新聞SBS:家族の軌跡〜ダウン症の次男との10年(1)誕生
http://www.at-s.com/news/article/women/series/428573.html

*アットエス静岡新聞SBS:家族の軌跡〜ダウン症の次男との10年(2)姉の決意
http://www.at-s.com/news/article/women/series/428928.html

*アットエス静岡新聞SBS:家族の軌跡〜ダウン症の次男との10年(3)父の起業
http://www.at-s.com/news/article/women/series/429288.html

*アットエス静岡新聞SBS:家族の軌跡〜ダウン症の次男との10年(4・完)母の“舞台”
http://www.at-s.com/news/article/women/series/429912.html


ちなみに、上の物語に出てくる「えほん文庫」は、こちらです。
(実は、その目の前まで行ったんだけど、内気なもんで外から見ただけで帰ってきました)

*えほん文庫ウェブサイト
http://www.ehonbunko.jp


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