角灯と砂時計 

その手に持つのは、角灯(ランタン)か、砂時計か。
第9番アルカナ「隠者」の、その俗世を生きる知恵を、私にも。

#266 ソレは特別なことじゃない。「特別養子縁組」家族の話。

2018-09-16 06:22:18 | 命―畏れと戦き
厚生労働省:特別養子縁組により親になることを希望される方(リーフレット)より
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000171124.pdf




【24時間テレビドキュメント完全版】特別養子縁組 血の繋がりにとらわれない絆~木村佳乃と考える新しい家族のカタチ~



 不妊に悩む夫婦が増え続けている近年。
 子どもをもたず2人で生きていくという選択、治療を続けるという選択…
 そして実はもう1つ「特別養子縁組」という選択がある
 特別養子縁組により繋がった家族には何が待っているのか…。
 ダウン症の赤ちゃんを養子として迎えた夫婦・養子を我が子に迎え、
 さらに夫自らも養子として育った夫婦・今日この瞬間に養子を迎える夫婦…
 それぞれを取材して見えてきた、本当の家族の幸せとは?


*BS日テレ:紀行・ドキュメンタリー
http://www.bs4.jp/guide/document/24tv/

という番組、録画しておいたものを、おもむろに視ました。

ワタクシ、まあ、一応興味あるものだけ拾うという感じで、「24時間テレビ」という枠組み自体とは、始まった当初から距離を置いてきたんですが、これはBS用に編集し直して放送ということで、いやあ、ついうっかり、真剣に視てしまいました。

日本では、特別養子縁組の斡旋団体が30ほど、年間約400人の赤ちゃんが縁組されているという説明に始まり、「どんな子であっても、俺らのところに来てくれた子は俺らの子や」「子どもが親を選べないのと同じで親も子どもを選んではいけない」といった、子供を育てる覚悟みたいなことに触れたり、あるいは「家族は一緒にいて愛情が生まれる。血の繋がりは関係ないのかなって思う。夫婦も繋がってないですしね」「望んでいる大人がいて生まれてくる命があるなら、そこが結びつけば良いだけの話」といった、ある意味24時間テレビらしい言葉が、それでも24時間テレビらしくない自然な受け答えの中で出てきたりして、なかなかに良いモノでした。


というわけで、その「特別養子縁組」ですが、厚生労働省によれば、

「特別養子縁組」とは、子どもの福祉の増進を図るために、養子となるお子さんの実親(生みの親)との法的な親子関係を解消し、実の子と同じ親子関係を結ぶ制度です。
「特別養子縁組」は、養親になることを望むご夫婦の請求に対し、下記の要件を満たす場合に、家庭裁判所の決定を受けることで成立します。


*厚生労働省:特別養子縁組制度について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000169158.html


でありまして、本来「子供の福祉」が目的なんですね。


ちなみに、冒頭に掲げたリーフレットの裏面には、その概要が載ってます。




これだとちょっと硬すぎるので、

2週間に一人 生みの親の手により命を落とす赤ちゃん
「産むしかない・・・」予期せぬ妊娠について相談できる場所があります。


と言っている「日本子ども縁組協会」の図解も借りてきました。



*日本子ども縁組協会:特別養子縁組とは
https://kodomo-engumi.jp/



さて、その特別養子縁組、近年、増加傾向ではあるんだそうです。報道も少しずつ増えてて認知度も上がっているように思います。



*厚労省:普通養子縁組と特別養子縁組のちがい・特別養子縁組の成立件数・参照条文
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000169448_1.pdf


とは言え「世界標準」的には、まだまだ少ないんですけどね。一般論として「養子」に対する偏見が作用している、ということでしょうか。

こんなのがありました。

——中村さんはアメリカで生活していた時期もあるそうですが、やはり日本と海外だと反応は違いますか?

中村:まったく違いますね。スイス人とカナダ人の友人に「養子を迎えることになったの」と話したら、質問なんか一つもしないで、「Congratulations(おめでとう)!!!」と喜んでくれました。アメリカに住んでいる義母に話しても「わくわくしてる!!!」とまるで孫の誕生を待ちわびているかのような反応でした。

ですから、日本で「養子を迎えようと思うの」と話した時との温度差はすごく感じましたね。


*ウートピ:中村芳子さんインタビュー 第2回 産まずに育てる「養子」という選択肢。実際に育てた人の話を聞いてみた
https://wotopi.jp/archives/52571


何か、しばしば耳にする話です。

また、こんなのもありました。

そもそも欧米では養子縁組という選択肢は広く知られているので、言われなくてもみんなわかっているわけです。不妊治療の期間も比較的短くて(*注)、一定期間、トライして難しかったら、すぐに養子縁組など、別の選択肢に切り替えるとか、治療と並行して養子縁組機関の門も叩いてみるとか。自然な形でパラレルとなっています。

戦後しばらくは、日本中が貧しくて、養子としないまでも、実の親が育てられない子の面倒を他人がみるというのは結構あったと。でも、国が豊かになって子どもの数が減っていき、一方で持ち家化、核家族化が進むと、みながそれぞれの家庭にタコツボのように閉じこもり、養子縁組は特異なケースとされて家庭の秘め事みたいになっていったと。

*UMU:『産まなくても、育てられます』— 著者 後藤絵里さんに聞く、不妊治療と特別養子縁組に橋を架ける方法。<前編>
http://umumedia.jp/2017/03/16/erigoto/


結局は、数(頻度・パーセンテージ)の問題かなと思いますね。ついこないだ(?)まで、日本だって養子は当たり前だったわけですし。全くの他人という例は少なかったにしても、親戚筋から養子を貰うのはよくある話で、実際ウチでも、子宝に恵まれなかった祖父母は養子を貰ってましたからね(その後で、実子たる父が生まれました)。


そんなわけで、縁組の件数と偏見の解消とは、どちらが先でどちらが後というものでもないわけですが、法整備はそれなりに進んできました。

 親が育てられない子どもが新たな家庭で育つ特別養子縁組を増やそうと、厚生労働省は来年度から、あっせんを手掛ける民間事業者への助成を始める。4月の養子縁組あっせん法施行に合わせた対応で、子どもを迎える養親への手厚い支援や事業者の人材育成に補助を出して、質の向上と養親の負担軽減につなげる。

*毎日新聞:厚労省 特別養子縁組 あっせん団体へ助成 来年度から
https://mainichi.jp/articles/20180117/k00/00m/040/169000c


これは2018年1月17日の記事なので、つまり助成は今年度からということですね。もっとも、縁組の現場にとって問題は尽きないようでして、記事は、

 一方、新法に基づき事業を進めるには、これでは公的支援が足りないとの指摘もある。許可を受けるためには責任者に社会福祉士などの有資格者を置かなくてはならないなど、運営コストの増加が想定されるからだ。事業者の認定NPO法人フローレンス(東京都千代田区)の駒崎弘樹代表理事は「負担増に見合った助成額ではない。業務過多の児童相談所任せではなく、もっと民間を活用しないと養子縁組は進まない。その重要性を分かってほしい」と訴える。

という声で締めくくってます。


BS日テレの番組は「特別養子縁組が特別でない世の中になってほしい」と訴えてましたが、

「自分の出生の事実を含めて自分を好きでいてほしい」
「殺さずに施設に預けてくれてありがとう」
「その子が幸せで生きられるなら、どんな形でもいいと思う」


これらの言葉は、そもそも特別なものでも何でもないんだよ、まずそこが基本だよ、と、今しみじみ思ってます。


それでも特別養子縁組に反対する人ってのは、たぶん、何にでもケチ付けるのが趣味の人なんでしょう。放っておけば良いんです。念のため付け加えると、施設で育つことだって可哀そうとは限りませんよ。

・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・

以下、参考までに。



厚生労働省:養子縁組あっせん事業者一覧


妊娠したけど、育てるのが難しい、経済的に苦しくて病院が見つけられない、健診費用がない、母子手帳をもらいに行けないなど。。。
私たちは産婦人科や法律の専門家の弁護士さんたちとチームを組み、お産や子育てが難しいと感じる女性の相談に乗っている団体です。


*養子縁組・家族相談
https://www.acrossjapan.org/


こちらには、特別養子縁組取り扱い医療施設、および養子縁組希望者に対して 相談に応じる医療施設の一覧があります。

子どもたちの家族になっていただけませんか?

あんしん母と子の産婦人科連絡協議会は
産婦人科医療施設が連携して『特別養子縁組』の
あっせんを行う唯一の団体です。


*あんしん母と子の産婦人科連絡協議会:養親さん向け
https://yoshin.anshin-hahatoko.jp/


毎日新聞記事の言葉はこちらの代表さんによるもの。

フローレンスは、赤ちゃんも、生みの親も、育ての親も、
みんなが幸せになる赤ちゃん縁組(特別養子縁組)を目指しています。


*フローレンス赤ちゃん縁組
https://engumi.florence.or.jp/


BS日テレに出演されていたのは、コチラの方。

あなたの勇気で救われるいのちがあります。
その子の未来と幸せを守る家族がいます。
私たちがいのちをつなぐサポートをいたします。


*Baby ぽけっと
https://babypocket.net/


こちら、後藤絵里さんの著書です。



じつは、血のつながらない子どもを特別養子縁組で迎え、わが子として育てている夫婦のほとんどが不妊治療の経験者です。
つまり、「子どもがほしい」と考えたとき、不妊治療以外にも選択肢はあるということを知っていれば、
もし、治療がうまくいかなかったとしても、子どもをあきらめなくてすむのです。
ただ、「養子を迎えたいと思うけれど、不安なことがある……」という人も多いでしょう。
本書では、子どもを迎えた夫婦の体験談から特別養子縁組に必要な知識と手続きまで、「親」になるために知っておきたいことのすべてをまとめました。

 序章 つながる不妊治療と特別養子縁組
第1部 養子を迎えるということ ~「気持ちの壁」の乗り越え方
 第1章 私たちが特別養子縁組を決断するまで
 第2章 「親子」への道のり
第2部 特別養子縁組の基礎知識 ~「法的な壁」の乗り越え方
 第3章 特別養子縁組のしくみ
 第4章 特別養子縁組の申し立てから成立まで


*講談社BOOK倶楽部:産まなくても、育てられます 不妊治療を超えて、特別養子縁組へ
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000190059


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