(12)一部門の一部の生産性向上により変化する消費財生産数実数値モデル
上記までの記載した協業および不変資本により変化する生産財転換は、変数記述なので判りにくい。そこで以下に実数を想定した生産財転換を以下に示す。なおここでの財一単位に必要な賦存労働力を、消費財については1/4労働力、資本財については1/2労働力に想定している。すなわち1労働力が生産する消費財量は4個であり、資本財量は2個である。そしてここでの剰余価値率を200%、すなわち剰余労働力を必要労働力の2倍、言い方を変えれば総労働力の2/3にしている。また数値表示を小数第二位までの概数表示にしている。
(12a)表3(4)、表4(4a)および表5(4b)における剰余価値取得モデル
[資本財交換における生産財転換モデル3または4]
[資本財交換における生産財転換モデル3または4での商取引]
上記表において消費財部門は、100Lの労働力で生産した400Fの消費財を資本財部門に供給し、資本財部門から財代金100Lを受け取る。しかしこの消費財部門に資本主義的利潤は登場しない。これに対して資本財部門は400Fの消費財に、30Lの労働力を付加して生産した消費財(400F+60W)を第三部門に供給し、第三部門から財代金130Lを受け取る。この130Lのうち100Lは消費財部門に引き渡す代金である。資本蓄積の運動に着目して言えば、消費財に関わる生産財と代金の交換は等価交換なので、資本蓄積に関与しない。すなわち不変資本部分の生産財交換は、資本主義的利潤に関与しない。一方で資本財部門独自の受取代金は、残りの30Lだけである。しかし労働者に引き渡すのは10Lだけであり、資本財部門に剰余価値20Lが蓄積する。資本蓄積の運動にとって重要なのは、この可変資本部分の生産財交換である。この剰余価値量を利潤率で言えば20L/130Lの15%であるが、剰余価値率で言えば20L/10Lの200%となる。ここでは利潤率よりも剰余価値率が重要な役目を果たす。この剰余20Lは、資本財部門を支配する部門支配者の所有財となる。この資本蓄積は資本財部門ではなく、消費財部門でも可能である。この消費財部門における資本蓄積を示したのが、生産財転換モデルが表5であった。その実数値表現は、次のようになる。
[資本財交換における生産財転換モデル5]
[資本財交換における生産財転換モデル5での商取引]
消費財部門は100Lの労働力で生産した消費財400Fを資本財部門に供給し、資本財部門から財代金300Lを受け取る。しかし消費財部門が労働者に引き渡すのは100Lだけなので、部門に剰余価値200Lが蓄積する。この剰余価値量は、部門が不変資本を使用しないので、利潤率でも剰余価値率でも200L/100Lの200%となる。これに対して資本財部門は400Fの消費財に、30Lの労働力を付加して生産した消費財(400F+60W)を第三部門に供給し、第三部門から財代金330Lを受け取る。この330Lのうち300Lは消費財部門に引き渡す代金である。その消費財と代金の交換は等価交換なので、資本蓄積に関与しない。一方で資本財部門独自の受取代金は、残りの30Lである。しかしここでの資本財部門は、この30Lをそのまま労働者に引き渡す。それゆえこの資本財部門に資本主義的利潤は発生しない。
(12b)表6(5)の可変資本増大による拡大再生産
剰余価値率に応じて部門に蓄積する剰余価値は、部門支配者の所有となる。それは一方で部門支配者の余剰生活を豊かにし、彼を部門の生産工程から遊離させる。他方で同業他社や部門間の競争は、部門支配者に生産ラインの拡大や生産物の質向上を要請する。この場合に部門支配者は蓄積資本の一部または全部を可変資本の増大に流用する。その生産ラインの拡大は、原材料の消費財量も増大させる。しかしその不変資本と代金は等価交換される。それゆえに不変資本の量的増減は、取得剰余価値量を増減させない。それに対して可変資本の量的増減は、直接に取得剰余価値量を増減させる。(5)の表6で示した可変資本増大による蓄積資本増大の資本回転は、次のような実数値モデルになる。蓄積資本は可変資本の増大比5/3に準じて5/3倍に増大する。
[資本財交換における生産財転換モデル6]
[資本財交換における生産財転換モデルでの商取引6]
(12c)表7(5c1・5c2)の不変資本増大による可変資本減資
部門支配者は蓄積資本を可変資本増大ではなく、財の生産性を向上させる不変資本の増大にも流用できる。この場合にその不変資本増大は、可変資本規模を維持した生産増、生産規模を維持した可変資本減少を二極にしてその中間のどこかに進展する。(5c1)の表7で示したのは、蓄積資本を不変資本増大に割り当て、生産規模を維持して可変資本を減資する資本回転である。そしてその実数値モデルが以下である。なおここでの不変資本は、先行資本回転の蓄積資本と等価である。またその不変資本の媒介は、既存の可変資本による資本財の生産性を7倍にすると想定している。
[資本財交換における生産財転換モデル7]
[資本財交換における生産財転換モデルでの商取引7]
上記資本回転の利潤26Lは、可変資本増大での33Lの利潤よりも7L少ない。これは第一にこの第二回転の資本財部門が、可変資本に割り当てる財代金から剰余価値を取得していないことに従う。そして第二に可変資本を1/7を減じたことで、不変資本による可変資本増強効果が同じく1/7に減じたことに従う。すなわちここでの可変資本減資は、不変資本による可変資本増強効果をまるごと相殺する。当然ながらこの可変資本減資は、可変資本増大に対応して増えるべき剰余価値を併せて喪失させる。したがって第三に、その喪失した可変資本増大比率の分だけ不変資本導入時の利潤も、可変資本増大時の利潤より小さくなる。しかもその利潤は、賦存の可変資本規模を上限にする。したがってどんなに導入不変資本が優秀でも、上記例で言えばその利潤は30Lを超えることができない。とは言えここでの不変資本増大は資本の有機的構成を変更し、可変資本減少により必要資本の軽量化を実現する。上記の資本回転だと不変資本増大は、資本財部門における51Wの可変資本を不要化している。利潤の26Lは、単純にその貨幣表現である。その特別剰余価値は、同業他社が同じ不変資本を導入するまで継続する。しかも単発とは言え、資本財部門は初発の可変資本減資において不要可変資本を放出し、その特別剰余価値を2倍にする。
[蓄積資本の充填対象に対応する資本財部門総資本7] ※みなし差分は100F+1K=2/3(400F+60W)=267F+40Wに扱ったときの差分
すなわち1K=167F+40Wである。
(2023/03/31)
続く⇒生産財転換の実数値モデル2 前の記事⇒独占財の価値法則
数理労働価値
序論:労働価値論の原理
(1)生体における供給と消費
(2)過去に対する現在の初期劣位の逆転
(3)供給と消費の一般式
(4)分業と階級分離
1章 基本モデル
(1)消費財生産モデル
(2)生産と消費の不均衡
(3)消費財増大の価値に対する一時的影響
(4)価値単位としての労働力
(5)商業
(6)統括労働
(7)剰余価値
(8)消費財生産数変化の実数値モデル
(9)上記表の式変形の注記
2章 資本蓄積
(1)生産財転換モデル
(2)拡大再生産
(3)不変資本を媒介にした可変資本減資
(4)不変資本を媒介にした可変資本増強
(5)不変資本による剰余価値生産の質的増大
(6)独占財の価値法則
(7)生産財転換の実数値モデル
(8)生産財転換の実数値モデル2
3章 金融資本
(1)金融資本と利子
(2)差額略取の実体化
(3)労働力商品の資源化
(4)価格構成における剰余価値の変動
(5)(C+V)と(C+V+M)
(6)金融資本における生産財転換の実数値モデル
4章 生産要素表
(1)剰余生産物搾取による純生産物の生成
(2)不変資本導入と生産規模拡大
(3)生産拡大における生産要素の遷移