唯物論者

唯物論の再構築

数理労働価値(第三章:金融資本(6)金融資本における生産財転換の実数値モデル)

2023-10-09 11:20:27 | 資本論の見直し

(7)金融資本における生産財転換の実数値モデル

  上記までに記載した金融資本における生産財転換モデルは、変数記述なので判りにくい。そこで以下に実数を想定した生産財転換を以下に示す。なおここでは登場する各種値を次のように設定した。ちなみに1労働日あたりの労働力1単位の労賃に10,000円を想定している。


その他部門の預金額1,000,000円
預金利率  5%
貸出利率  8%
剰余価値率200%


金融資本における生産財転換モデルを預金利率に配慮して、生産資本における生産財転換モデルに準じて記載すると、次のようになる。

[金融資本における生産財転換モデル1] ※剰余価値率;200%、預金利率:5%


[金融資本における生産財転換モデル1での商取引]※▼:出力、△:入力


(7a)調達金利と貸出金利、卸売価格と店頭価格

 上記モデルにおける融資元本1,030,000は、金融部門の調達資金1,000,000と額面が異なる。また預金金利と貸出金利の差異が無い。そこで融資元本と調達資金を同額にし、その収支変更を貸出金利に反映させると、次のようになる。

[金融資本における生産財転換モデル2] ※剰余価値率;200%、預金利率:5%、貸出利率:8%

[金融資本における生産財転換モデル2での商取引]※▼:出力、△:入力、p1:調達利率、p2:貸出利率

(7b)資本循環起点の変更

 利子海資本としての金融資本では資本循環の起点が変わり、W-G―Wが、G-W-Gの運動となる。その生産財転換モデルは次のようになる。なお以下では、単発の資本循環で融資の返済を終える想定で、帳尻をあわせるために以下の想定をしており、不変資本を導入した消費財部門での資本蓄積は、資本循環の第二サイクルで初めて発生する。なおここでは表示を簡略化するために、剰余価値率0%にして、剰余価値搾取なしで特別剰余価値取得だけの資本循環を記載している。
 (注1)消費財部門不変資本1,000,000=資本財部門不変資本1,000,000
 (注2)資本財部門不変資本Cf=資本財部門(可変資本1,000,000+不変資本2,000,000)=消費財部門(不変資本1,000,000+可変資本2,000,000)
 (注3)消費財部門剰余資本∮gf(t-1)/t=金融部門不変資本1,000,000+貸出金利80,000

[金融資本における生産財転換モデル3] ※調達資本:1,000,000、貸出利率:8%、不変資本による生産増割合:7倍、∮gXは価値形態の∮X。

[金融資本における生産財転換モデルでの商取引3] ※▼:出力、△:入力、なお∮gXは価値形態の∮X。


(2023/10/09) 続く⇒第四章(1)剰余生産物搾取による純生産物の生成   前の記事⇒第三章(5)(C+V)と(C+V+M)

数理労働価値
  序論:労働価値論の原理
      (1)生体における供給と消費
      (2)過去に対する現在の初期劣位の逆転
      (3)供給と消費の一般式
      (4)分業と階級分離
  1章 基本モデル
      (1)消費財生産モデル
      (2)生産と消費の不均衡
      (3)消費財増大の価値に対する一時的影響
      (4)価値単位としての労働力
      (5)商業
      (6)統括労働
      (7)剰余価値
      (8)消費財生産数変化の実数値モデル
      (9)上記表の式変形の注記
  2章 資本蓄積
      (1)生産財転換モデル
      (2)拡大再生産
      (3)不変資本を媒介にした可変資本減資
      (4)不変資本を媒介にした可変資本増強
      (5)不変資本による剰余価値生産の質的増大
      (6)独占財の価値法則
      (7)生産財転換の実数値モデル
      (8)生産財転換の実数値モデル2
  3章 金融資本
      (1)金融資本と利子
      (2)差額略取の実体化
      (3)労働力商品の資源化
      (4)価格構成における剰余価値の変動
      (5)(C+V)と(C+V+M)
      (6)金融資本における生産財転換の実数値モデル
  4章 生産要素表
      (1)剰余生産物搾取による純生産物の生成
      (2)不変資本導入と生産規模拡大
      (3)生産拡大における生産要素の遷移


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