あまりにも早く逝ってしまった友人。
その友人の兄と姉に会いにふたりで出向く。自宅前には誘い合わせた先生が一足先に着かれていた。話し声が聞こえたのか兄が迎えに出てきてくれた。
悔やみを言うでなく、いつものようにいつものような会話を交わす。玄関側に回ると懇意にしていたお父さんが凝りに凝って造られた庭と邸宅が目に入る。おおらかに豪快に生き抜かれたまんまを偲ばせてくる。ちゃんと手入れされた庭の木は亡くなった弟がやっていたのだという。
玄関を入るとスッピンでジャージ姿の妹が「お久しぶりです、黒に白い髪だったのに白に黒の髪になったね」と笑顔で迎えてくれた。
広い仏間にはレーシングスーツ姿の写真がたくさん並んでいる。そして、遺影に遺骨が。「ほんとうに、いなくなってしまったんだなぁ」と心で語りかけながら手をあわせる。
自分から「入院してくる」と言いだして入院しその2日後に息を引き取ったこと。バイクのロードレースを本格的にしていたこと。経営していた会社のことなど。笑顔の顔写真を見ながら兄と姉の話を聞いた。
早すぎる、逝く順番の違う弟の死に姉の方が参っているようだった。「ビシッとメイクしてかっこええねぇちゃんでおらにゃ」と、妹に「白に黒の髪」のお返しの言葉をかける。
主を失ったバイクたちがガレージにならんでいた。