「お盆を過ぎたら海に入るな。」と子供の頃、祖母に言われた。
夏休みは祖母の実家がある能登の海で過ごしていた。
毎日、海に入って遊んでいたがお盆を過ぎると「海に入るな!」
といわれる。「どうして?」と聞くと「足を引っ張られるよ。」という。
祖母の実家の海沿いでは、海で亡くなった人がお盆に里帰りして、
あの世に戻るときに連れて帰るといわれている。
実際に統計を見ても、お盆を過ぎてからの海の事故は増えている。
秋の気配が漂い始めるお盆過ぎから海には変化が訪れる。
近海に発生する台風の影響で海岸には大きな波が押し寄せる。
これを昔の人は暦の土用に近いことから「土用波」と呼んだ。
土用波は天候は穏やかで風も吹いていないのに高い波が押しよせる。
この波に足をすくわれるように波に飲み込まれることがあるので、
「足を引っ張られる」といったのかもしれない。
この波は押しよせる力も強く打ち寄せた波が沖に戻ろうとするときに
「離岸流」が発生する。
これも波の力に連れていかれるように感じる。
子供を脅すように「霊が連れて行くぞ。」
というのは危険を教えていたのだろう。
またお盆を過ぎる頃からクラゲが多くなってくる。
沖縄にはハブクラゲ、カツオのエボシなど重症を負わせるほどの
クラゲがいる。漁に出ていたときもオバァが
「お盆を過ぎたら気をつけろ。」とよくいっていた。