沖縄の街路樹や雑木林にぶら下がっている小さな板に気づいた人も
いるだろう。この板のことをテックス板と呼ばれている。
正式名称は「誘殺板」という。
地元でもきっと知らない人の方が多いだろう。
かって沖縄には「ミカンコミバエ」という害虫がいた。
果樹全般に寄生する害虫で、寄生されてしまうと果実の中に幼虫が
入ってしまう。ミカンコミバエが発生するとタンカンやシークヮーサーなどの
柑橘類だけでなくグァバやマンゴーなども出荷できなくなってしまう。
現在マンゴーなどが本土へと出荷できるのは1986年にミカンコミバエを
根絶したからである。その際に使われたのがこのテックス板である。
このテックス板と呼ばれる板にはミカンコミバエを強力に誘引する
メチルオイゲノールという物質とダイアジノンという殺虫剤を
染み込ませてある。メチルオイゲノールの匂いに誘われてやってきた
ミカンコミバエの雄がこの板を舐めることで死んでしまう。
雄が死んでしまうことによってミカンコミバエのメスがいても交尾できず
繁殖しないという仕組みである。
1986年に根絶したのにまだテックス板が設置されているのは、
今でもミカンコミバエはフィリピンや台湾など近隣の諸国に
生息しているため、それが風に乗ったり、人の移動に紛れ込んだりして
沖縄に入ってくる。これを放置するとまたミカンコミバエが発生する恐れがあるので、
今でも設置されているというわけ。
板には「危」という文字が書かれてあるが雨などで消えてしまう。
今でもあちこちの街路樹などにぶら下げてあるのを見かける。