『断絶』(1971年アメリカ)
孤独な魂の硬質な美しさ、人生の脆さ。
風景は流れ去り、人もまた流れ去る。
失恋の痛みが突き刺さる、
青春ロードムービー。
グレーの55年シェビーに乗って、ドラッグ・レースで小遣いを稼ぐ二人の若者。
オレンジ色のポンティアックGTOに乗った男と車を賭けてワシントン DCを目指す。
行き場もなく、目標もなく、何かを探す旅。
人生の始め方が分からない若者たち。
人生に行き詰まり、当ても無い。
それでも何かを期待して車を運転する男。
車を乗り継ぎ、気ままに放浪する女の子。
もちろん、彼女も何かを探している。
四人の孤独が、交差しすれ違う。
そして、人生は続くという残酷な真実。
GTOを運転する男の孤独がすさまじい。
ヒッチハイカーを乗せては、身の上話を聞かせる。
孤独から逃れる為に、とにかく話相手を求める、その姿。
しかし、その話はデタラメ。
過去もなく、目的もない男。
あるのは、車と現在だけ。
青春は続かないという残酷さと、
人生は続くという残酷さ。
そして何よりも、
時代の閉塞感の中での未来に対する不安ではなく、
先の見えている人生に対する痛切な実感こそが、
もっとも残酷なのである。
閉塞感の押し寄せる今の世の中。
モンテ・ヘルマンからの贈り物を受け取るにふさわしい現在。
改めて公開されたことは、意味深い。
『WALKABOUT 美しき冒険旅行』(1971年)とあわせて、
大切に保存したい青春ロードムービー。
『断絶』(1971年アメリカ)
監督:モンテ・ヘルマン、脚本:ウィル・コリー、ルドルフ・ワーリッツァー、撮影:ジャック・ディアソン
出演:ジェームス・テイラー、デニス・ウィルソン、ローリー・バード
ウォーレン・オーツ、ハリー・ディーン・スタントン