木のぼり男爵の生涯と意見

いい加減な映画鑑賞術と行き当たりばったりな読書によって導かれる雑多な世界。

《断絶》

2013-02-02 00:10:43 | 日記


『断絶』(1971年アメリカ)

孤独な魂の硬質な美しさ、人生の脆さ。
風景は流れ去り、人もまた流れ去る。
失恋の痛みが突き刺さる、
青春ロードムービー。

グレーの55年シェビーに乗って、ドラッグ・レースで小遣いを稼ぐ二人の若者。
オレンジ色のポンティアックGTOに乗った男と車を賭けてワシントン DCを目指す。


行き場もなく、目標もなく、何かを探す旅。
人生の始め方が分からない若者たち。

人生に行き詰まり、当ても無い。
それでも何かを期待して車を運転する男。

車を乗り継ぎ、気ままに放浪する女の子。
もちろん、彼女も何かを探している。

四人の孤独が、交差しすれ違う。
そして、人生は続くという残酷な真実。

GTOを運転する男の孤独がすさまじい。
ヒッチハイカーを乗せては、身の上話を聞かせる。
孤独から逃れる為に、とにかく話相手を求める、その姿。
しかし、その話はデタラメ。
過去もなく、目的もない男。
あるのは、車と現在だけ。

青春は続かないという残酷さと、
人生は続くという残酷さ。
そして何よりも、
時代の閉塞感の中での未来に対する不安ではなく、
先の見えている人生に対する痛切な実感こそが、
もっとも残酷なのである。


閉塞感の押し寄せる今の世の中。
モンテ・ヘルマンからの贈り物を受け取るにふさわしい現在。
改めて公開されたことは、意味深い。

『WALKABOUT 美しき冒険旅行』(1971年)とあわせて、
大切に保存したい青春ロードムービー。


『断絶』(1971年アメリカ)
監督:モンテ・ヘルマン、脚本:ウィル・コリー、ルドルフ・ワーリッツァー、撮影:ジャック・ディアソン
出演:ジェームス・テイラー、デニス・ウィルソン、ローリー・バード
ウォーレン・オーツ、ハリー・ディーン・スタントン