「グローバリズム出づる処の殺人者より」アラヴィンド・アディガ
インドの使用人事情がまる分かり。
副題を付けるとしたら、
~いかにして私は主人を裏切り、企業家として成功したか?~
ってとこか?
とある金持ちの坊ちゃんに運転手として雇われたムンナ。
とは言え、雑用係もかねアゴでこき使われる日々。
しかし、屋根のあるとこで寝られ、給料がもらえるだけでも、おんの字。
ビンボー家族の中では、もっとも出世したと言えるムンナ。
雇い主の坊ちゃんだって、その父や兄よりもずっと優しく思いやりのある人。
そう、これ以上望んではいけない程恵まれているムンナ。
ところが、ある事件がきっかけで、金持ちの冷酷さ、自分の存在の軽さを思い知る。
このままで終わっていい訳がない!
あとは決断と行動あるのみ…
中国の首相に宛てた手紙という設定で綴られる告白。
貧乏な大家族。
村を牛耳る金持ち。
賄賂を受け取る政治家や警察。
言いなりになるしかない使用人たち。
貧富の差の激しさが生む徹底した主従関係。
インド的家族のあり方、これがまた脅威。
まるで小さな独裁国家のようなファミリー。
主人の踏みつけにされるか、家族に餌食にされるか。
犠牲にされてたまるか!なサバイバル・ゲーム。
インドの田舎の様子、都会の様子。
金持ちとビンボー人の暮らしぶり。
運転手の日常がポイントをおさえて描かれてます。
詰め込まれているのに、とても要領よくさばかれてて読みやすい。
どのシーンも情景が目に浮かびますな。
決して清潔とは言えない環境が眼前に現れるのには、参りますが。
所変われば、で仕方ないですな。
面白いけど、ちょっと疲れるブッカー賞受賞作。