木のぼり男爵の生涯と意見

いい加減な映画鑑賞術と行き当たりばったりな読書によって導かれる雑多な世界。

『ラスト・タイクーン』

2013-02-06 00:23:33 | 日記


「ラスト・タイクーン」フィツジェラルド

未完の最高傑作とか言われてるしぃ…

30年代のハリウッドの撮影所の若き製作者モンロー・スター。
パートナーでありライバルでもあるベテラン・プロデューサー、ブレーディ。
その娘で、モンローに恋する女学生セシリア。
モンローが夢中になる、亡き妻に瓜二つなキャサリン。
製作者、監督、俳優、脚本家、スタッフが入り乱れる映画界。
浮き沈みの激しい業界の人間関係を描く。


第6章の半ばでフィツジェラルドが心臓発作で急逝。
どの章にも作者のメモが書き込まれ、推敲する気満々な本作。
完成稿ですらない残された原稿。

それをもってして、最高傑作って…
大胆過ぎるぜ。
しかも、
本人が納得してないから、更に努力しようとしてたのに。
それを傑作って。。。
いったい…

実際、読んでみると。
なんだか注意力散漫な感じ。
人物の把握がしにくい上に、ダラダラとしてるし。
そして、面白くなってきた所で原稿がきれてます。
うがぁ~!!
ここから、というトコで見事にプツリ。
(この場合。しゃーないけど)

残されたノートとアウトラインで補うしかないものの。
かなり詳細にメモされていて、大筋は分かります。
推敲を重ね完成していたら、読み応えある小説になってたろうなぁ~

とは言え、このノートの部分が意外と読ませます。
構想を書いているのに、文章の美しさを感じるという凄さ。
ギャツビィの輝きが、こ、こんなところに~。

業界の裏側が垣間見えるプチエピソード盛りだくさん。
製作者の権力の大きさがよく描かれてます。
いとも簡単に首をすげかえる様。
人を動かす手腕。
解決する能力、我を通す駆け引き。
こりゃ命縮むわ~、な不安定なビジネス。

ロマンチストぶりを発揮するラブストーリー。
三角関係も、これからというトコで…

残酷さと希望の狭間で揺れる作者の構想ノート。
命は突然奪われるという意識。
作者の運命とどこか重なる無常観。


映画版を観るかどうかは、悩み中。