木のぼり男爵の生涯と意見

いい加減な映画鑑賞術と行き当たりばったりな読書によって導かれる雑多な世界。

『名探偵登場』

2013-02-13 23:56:25 | 日記


「名探偵登場」ウォルター・サタスウェイト

謎の本…
なにが謎って…
544ページもあるのに、この分厚さなのに。
何にそんなにページが費やされたのか、さっぱり。

古き良き時代のゆったりとした雰囲気のミステリなのは分かるが。
それを楽しむのが目的なのは重々承知ですが。

それでも、首をかしげないでは居られな~い。

奇術師フーディーニがピンカートン社の探偵を引き連れイギリスの貴族の館へ。
コナン・ドイル卿が霊媒師を連れて合流。
ライバルから命を狙われるフーディーニ。
幽霊が出るというお屋敷で降霊会が開かれ。
密室から発砲の音が…

貴族の貴族ぶりを楽しみつつ。
実在する人物が料理されるのを楽しむ。
そして、幽霊と殺人。

申し分無い材料。
時々、ユーモア。
作家のペンによって、登場人物達は我が物顔で闊歩する。
フーディーニとコナン・ドイルに関しては、作者が喋らせるのが楽しくて仕方ないとしか思えない。
相当楽しんだと、みた。

オチだって立て続け。
遊び心いっぱいな(ふざけてるとは言いません)フィニッシュ。

そう、それなりに充実はしてるんだ~け~ど。
今だにこの本の厚みが信じがたい。
読み終わって、マジマジと見つめてしまう本。


“「年をとればそれだけの知恵もつく、というだけのことですが」
「本気でそうお考えですかな。わたしの知るかぎり、知恵を得る者はめったにいない。
ただ経験を積むだけです」”

“「死んだあとにはどうなるか、お考えになったこともないんですの?」
「死んでみればわかることでしょう。結論を急ぐことはありませんよ」”

《キラー・エリート》

2013-02-12 01:22:32 | 日記


『キラー・エリート』(2011年)

ストレート過ぎるだろ、このタイトル…
期待していいんだか、不安になるべきか?
一歩間違ったら、コメディになりかねん。
何故かキラーが先にくると、胡散臭い。
キラー~、~キラー。。。
どっちもどっちか?


フリーの殺し屋ダニー。
足を洗ったはずが、罠にかけられ、とんでもない仕事を依頼される。
イギリス陸軍特殊部隊(SAS)の隊員3人を事故にみせかけ暗殺せよ。
仲間を集め、作戦を練り勝負に出るダニーだったが…
その頃、元SAS隊員スパイクは隊員の死が事故ではないと確信。
早速、犯人を追い詰めるべく行動に出る。


事実に基づく原作から生まれた映画。
もちろん、事実関係を政府は否定。
とは言え、ありそうなお話。
1980年代、石油の利権を懸けて複雑に絡み合う、
というか、結局踊らされる人がいるという事実。
アラビアのロレンスの頃から、進歩なし。
今回は、我がままシークが発端なれど。
それも息子をSASに奪われたのが原因。
そして、退役SASの謎の組織“フェザー・メン”。
集まって昔話に花を咲かせるだけじゃダメかねぇ?
やっぱり行動しちゃいますか。。。
さらなる権力を持つ男も登場して…

一級のサスペンス・アクション。
殺す側と追う側と、きな臭い人たちが入り乱れる面白さ。
エリートの殺し屋と元SAS隊員。
ジェイソン・ボーンがふたり居ると思え。
勘がよ過ぎ、かぎ分けるし、頭の回転速いし、もう大変。
次々繰出される暗殺計画も、スゴイが。
追われながら、かわしながらの実行がこれまたスゴイ。

そして、ハッキリ言ってこの監督、たいしたもの。
いい仕事してます。
カット割も丁寧で、細かいし。
編集もGood。
アクションも格闘と銃撃、爆発が充分楽しめるし。
それぞれの(濃い)キャラもきちんと描き。
奥行きのある映像もそれぞれの風景の良さを出し。
当時の音楽が雰囲気を盛り上げつつ。
もちろん、脚本が良いのも大きな理由だとは思うが。
アクション映画として、非常によく出来てます。

『裏切りのサーカス』(2011年)と比較出来るぐらいの良い出来だぜ。
あんまし評価されないのは、主演がジェイソン・ステイサムだから?
これはこれで良いと思うがなぁ?

ちなみにドミニク・パーセルは、「プリズン・ブレイク」のお兄さん役。
本作ではお髭の色男役なので、誰だっけこの人?状態。
観終わってキャスト調べるまで、“誰だっけ病”でした。

『キラー・エリート』(2011年)
監督:ゲイリー・マッケンドリー、原作:ラヌルフ・ファインズ、脚本:マット・シェリング、編集:ジョン・ギルバート
出演:ジェイソン・ステイサム、クライヴ・オーウェン、ロバート・デ・ニーロ、ドミニク・パーセル、エイデン・ヤング
イヴォンヌ・ストラホフスキー、ベン・メンデルソーン

《Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち》

2013-02-09 23:48:02 | 日記


『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』(2011年)

舞踏家ピナ・バウシュの代表的な舞台から厳選されたシーンの数々。
そして、ダンスは劇場の外へ。
公園、工場、プ、プール?駅、道路、さ、砂漠?
ありとあらゆる景観を従え踊る人々。
空間と身体表現を同時に楽しむという贅沢さ。
本作製作中でのピナの急逝。
ダンサー達の、彼女との思い出や彼女への思いが綴られる。

いきなり倒れる。
突如、しなだれかかる。
この、委ねっぷりがハンパない。
身体を使っての対話。

砂まみれ、水浸しで踊るダンサーたち。
え?酔拳?
ちょっと似てる動きもあるさ。
あれ?貞子?
そういう時もあるさ。
パラノーマル・アクティビティ?
まあね。。。

土を敷き詰めてのダンスは迫力満点。
そうかと思うと、春夏秋冬をとてもささやかな動きで表現したり。
(この動きはちょっとマネしたくなる)
雨水豪快ぶっかけダンス。
(ぶっかけって言葉を教えてあげたい…)
障害物ダンスでは、椅子をどけてもらいながら踊る。
まるでゲーム。
まさに人間関係。
さすがに、お魚になって池に飛び込んだ時は仰天したぜよ。

ピナ自身が踊る姿は、カリスマ性がスゴい。
存在が発散する表現力。
身体が語る美しさ。
そう言えば、
アルモドバル監督の『トーク・トゥ・ハー』(2002年)で踊ってました。

創造する、生み出すってのは、スゴイ事なんだ、と実感。
ダンスファンの為、というよりクリエイター、表現者へのメッセージに思える作品。

個人的には、あまり好きでないダンスも有るが、
スゴイと思うし、面白いとも思う。

『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』(2011年)
製作・監督・脚本:ヴィム・ヴェンダース、振付:ピナ・バウシュ、撮影:エレーヌ・ルヴァール、音楽:トム・ハンライヒ
出演:ピナ・バウシュ、ヴッパタール舞踊団

《プロメテウス》

2013-02-08 01:56:36 | 日記


『プロメテウス』(2012年)

また、エイリアン・シリーズが始まったよ。
美意識のある監督のおかげで、さすがに映像は素晴らしいが。
特に目新しさは無いような…

当初は、モロにエイリアン映画になるはずが。
いつの間にやら、話がふくらみ違う方向へ。
なので、この映画自体は独立したシリーズらしいが。
今までのエイリアン映画を彷彿させるトコ多すぎ。
実質的に、エイリアン:エピソード1にしか思えんがな。

CGがレベルアップしたおかげで、設定的には過去でも。
宇宙船の機能は進化したとみえる。
暮らしやすそうだし、操作も楽そう~。

ノオミ・ラパス演じるショウ博士の生命力がもんのスゴい。
誰もマネ出来ない、孤軍奮闘ぶり。
どんだけ体力と気力があるんですかぁ?
(テルマ&ルイーズにこの体力と気力があったら、
パート2が出来たことでしょうに。いや、観たい観たくないは置いといて…)
リプリー超えてる~。超人~。
ある意味、
エイリアン誕生よりも、ショウ博士のしぶとさの方が驚き。

そして。
現代舞踏家のような宇宙人たち。
本気ですか?これ。。。

今回は、マイケル・ファスベンダーの好演に助けられました。
アンドロイドのデヴィッド役。
何が目的で、誰の為に行動してるのか謎な部分が…
続編まで持ち越し。

なんか続編まで持ち越される事多くない?
本作に詰め込んでくれても、全然気にしませんけど。
ねぇ。。。


『プロメテウス』(2012年)
監督:リドリー・スコット、撮影:ダリウス・ウォルスキー、プロダクションデザイン:アーサー・マックス
出演:ノオミ・ラパス、マイケル・ファスベンダー、シャーリーズ・セロン、イドリス・エルバ、ガイ・ピアース
ローガン・マーシャル=グリーン

ちなみに「ソラリスの陽のもとに」に登場する宇宙船の名はプロメテウス号。

『ソラリスの陽のもとに』

2013-02-07 23:41:11 | 日記


「ソラリスの陽のもとに」スタニスワフ・レム

こむつかしそう、と思いきや、
読みやすい。

惑星ソラリスの広大な海。
思考する海との、未知との遭遇。

ソラリスの研究を続ける人類。
新たにクルーに加わったケルビン博士。
到着早々、宇宙ステーションの様子がおかしい。
そして、ある朝目覚めると、亡き妻が目の前に…


まったくコミュニケーションが取れない知的物質に手をやく人類。
発見から、探索、研究の歴史をはさみつつ。
ものすごく、ラブストーリー。

人間の脳内まで観察しているらしい不気味な海。
何を考えているのか、まるで謎。
そして得体の知れない、かつての身近な人物。
彼女では無いけれど、彼女そのもの…
精神的に追い詰められるクルーたち。

もはや、サイコサスペンス。
その上、切ない愛の物語。
物質は違っても、愛は存在するんですな。


何度でも繰り返される複製。
まるでソラリスが人間を実験しているよう。
人間だって、研究と言えば同じ事をさんざ繰り返し、記録し、分析するが…
知能はあっても、意思の疎通が図れない恐ろしさ、不気味さ。
タコ足の宇宙人の方が、よっぽどコミュニケーションとれそう。

他の学者たちの前に現れた人物が気になってしょーがない。
どういう関係だった人なのか、分からないのが、残念。


タルコフスキー監督版、『惑星ソラリス』(1972年)は、
地球恋しい~という映画だと思った記憶が…
かなり昔に観たので、詳細は覚えてないけど。
地球に対する望郷を描いた作品だと思ったような…

ソダーバーグ監督バージョンの『ソラリス』(2002年)は
予告編が良かった事しか、覚えてない始末。
本編観たはずなんだがなぁ。。。

なんか映画だけだと、理解及ばずな点が多いなぁ。
SFは特にそうなのかもしらんが。
原作読んで改めて映画観たら、違う感想になるな。







『ラスト・タイクーン』

2013-02-06 00:23:33 | 日記


「ラスト・タイクーン」フィツジェラルド

未完の最高傑作とか言われてるしぃ…

30年代のハリウッドの撮影所の若き製作者モンロー・スター。
パートナーでありライバルでもあるベテラン・プロデューサー、ブレーディ。
その娘で、モンローに恋する女学生セシリア。
モンローが夢中になる、亡き妻に瓜二つなキャサリン。
製作者、監督、俳優、脚本家、スタッフが入り乱れる映画界。
浮き沈みの激しい業界の人間関係を描く。


第6章の半ばでフィツジェラルドが心臓発作で急逝。
どの章にも作者のメモが書き込まれ、推敲する気満々な本作。
完成稿ですらない残された原稿。

それをもってして、最高傑作って…
大胆過ぎるぜ。
しかも、
本人が納得してないから、更に努力しようとしてたのに。
それを傑作って。。。
いったい…

実際、読んでみると。
なんだか注意力散漫な感じ。
人物の把握がしにくい上に、ダラダラとしてるし。
そして、面白くなってきた所で原稿がきれてます。
うがぁ~!!
ここから、というトコで見事にプツリ。
(この場合。しゃーないけど)

残されたノートとアウトラインで補うしかないものの。
かなり詳細にメモされていて、大筋は分かります。
推敲を重ね完成していたら、読み応えある小説になってたろうなぁ~

とは言え、このノートの部分が意外と読ませます。
構想を書いているのに、文章の美しさを感じるという凄さ。
ギャツビィの輝きが、こ、こんなところに~。

業界の裏側が垣間見えるプチエピソード盛りだくさん。
製作者の権力の大きさがよく描かれてます。
いとも簡単に首をすげかえる様。
人を動かす手腕。
解決する能力、我を通す駆け引き。
こりゃ命縮むわ~、な不安定なビジネス。

ロマンチストぶりを発揮するラブストーリー。
三角関係も、これからというトコで…

残酷さと希望の狭間で揺れる作者の構想ノート。
命は突然奪われるという意識。
作者の運命とどこか重なる無常観。


映画版を観るかどうかは、悩み中。

《キャンディ》と『キャンディ』

2013-02-05 00:51:09 | 日記


『キャンディ』(1968年)

オゥNoooo!
つまらな~い!!
最近観た映画の中でダントツのつまらなさ。
音楽は良いので、長~いミュージックビデオとして楽しむか…

はち切れんばかりの若さと魅力の女子高生キャンディ・クリスチャン。
詩人も教祖も、庭師もカリスマドクターも彼女の虜。
誰ひとりとして、その衝動を抑えられない…


超豪華男優陣。
悪ノリを楽しんどるご様子。
しか~し。
観てる方は楽しくも面白くもないんだな、これが。
なんたること!
何かが足をひっぱってます。
その‘何か’のせいで、映画は羽ばたけず。
なんじゃこりゃ~!な出来上がり。

まさか、キャンディが原因か?
演出も良くないが、こんなになんにもしない人、珍しいぞ。
主役が何もしないってどういうこと?

何もかもが中途半端で、なんだかやりっ放し、ほったらかし。
なんちゅう困りもの。
なんで、これで満足しちゃったかなぁ?製作人よぉぉお。。。

リンゴ・スターがノリノリで演じてるのが、ちょっと可笑しい。
ジェームズ・コバーンがカッコよかったのが、救い。
マーロン・ブランドがまだスマートなのが有り難い。

で、不審に思ったので原作読んでみた─。

結論→映画バージョンは、キャンディが受身過ぎて、つまらない。

原作では、キャンディはかなり積極的。
特に庭師エマニュエルに対しては、計画的。
そして、その後も相手は変われども。
求められると、応じずには居られない天使で娼婦な姿が鮮やか。
教授やドクターの妙な性癖も加わり、広がり?を見せる。

妙な事態に陥る度に、
“イヤんなっちゃう”と可愛らしく反省する姿が軽い。
このとてつもない軽さが心地よいソフトポルノ小説。

原作の個性が失われた映画化。
泣くに泣けん。。。


『キャンディ』(1968年)R-18
監督:クリスチャン・マルカン、脚本:バック・ヘンリー、原作:テリー・サザーン、音楽:デイヴ・グルーシン
出演:エヴァ・オーリン、シャルル・アズナヴール、マーロン・ブランド、リチャード・バートン
ウォルター・マッソー、リンゴ・スター、ジェームズ・コバーン、ジョン・ヒューストン
ジョン・アスティン、エルザ・マルティネリ
挿入歌:The Byrds、Steppenwolf

「キャンディ」テリー・サザーン&メイソン・ホッフェンバーグ






《テッド》

2013-02-04 00:23:40 | 日記


『テッド』(2012年米)

ちきしょう、面白いぜ。
DVD買って、毎日観てやるぅ!


友達の居ない少年ジョン。
クリスマスの願い事が叶い~の。
テディベアに命が宿り~の。
テッドと親友になり~の。
幸か不幸か、共に成長し~の。


テディベアとミラ・クニスの間で何を迷う?
お前は、あほウか?なジョン。
クマと言えども、なんせガキの頃からの親友。
一つ屋根の下、ずっと一緒に成長してきた仲。
正確には、
成長ではなく年だけとった二人、いや一人と一匹。
5歳児な会話、中学生の思考回路、高校生の行動。
ダメ~な可愛さに溢れるジョン。
ひと言で彼女を笑わせてしまうワザの持ち主。。
ロリーがジョンと一緒に居たい理由はよ~く分かるが。

見た目はフワフワで可愛い不良ぐまテッド。
初めての一人暮らしにスーパーでの仕事。
強気で毒吐きまくりな熊。
この毒グマめ!
あんた大丈夫?ってクマに心配される上司も笑える。
レジ係をダーティーに口説く乱らグマ。
まさに、ダーティー・ベア・ダンシング!
まったく悪びれる様子のないテッドに、
世界がひれ伏すぜ。
いや、少なくとも4、5人はひれ伏すぜ。

とにかく会話が笑える。
たとえクマじゃなかったとしても、笑える。
そして、クマだからこそ笑える部分も。
何よりも、ウォールバーグ、ミラ・クニス、セス・マクファーレンの
相性の良さに驚き。
見事に息が合ってます。

これでもか、とこだわりのおならネタ。
豪華スターでは無く、微妙なスターも次々と登場。
素敵に阿呆らしく、過激にバカバカしい。
テッドのテンション低めな喋り方がこれまたナイス。
日本語訳も上手く決まり、大爆笑の劇場。
テッド熱に浮かされつつ─
えも言われぬ幸福感に包まれ家路につく。


『テッド』(2012年米)R15+
監督・原案・脚本:セス・マクファーレン、脚本:アレック・サルキン、ウェルズリー・ワイルド
出演:マーク・ウォールバーグ、ミラ・クニス、ジョエル・マクヘイル、ジョヴァンニ・リビシ
テッドの声:セス・マクファーレン、ナレーション:パトリック・スチュワート
本人役:サム・J・ジョーンズ、ノラ・ジョーンズ、トム・スケリット、ライアン・レイノルズ、テッド・ダンソン

《ウィッカーマン》

2013-02-03 00:23:25 | 日記


『ウィッカーマン』(1973年イギリス)

怖っ!
カルトを描いたミュージカルホラー。
ホント、怖っ!

少女の失踪事件を調査しに、小さな島へとやってきたハウイー巡査。
そこは、サマーアイル卿が統治する、奇妙な因習に囚われた島だった─。


前半は特にミュージカル色が強め。
メローな曲、民族音楽風、民謡などが次々と繰り出される。
花が咲き乱れ、春たけなわな島。
そして、あふれる音楽。
もしや、ここってパラダイス?
ところが、よくよく聴いてみれば歌詞は性的。
男女の交わりが讃えられている─。
ってある意味、やっぱりパラダイス?

ブリット・エクランドの謎の裸踊り。
(壁越しに誘惑する有効な手段らしい…)
(プロに振付してもらったらしい…)
(撮影に三日もかけたらしい…)
芝生で絡み合う男女。
裸で輪舞する少女たち。

真面目な巡査は衝撃と拒否反応。
コロコロ変わる村人の証言に、ついに怒り爆発。
何が何でも、少女を見つけてやる!と躍起に。
島中を引っ掻き回す巡査をよそに。
今年もまた、五月祭が行われようとしていた─。


古代からの儀式、男根崇拝、中世からの風習など。
次々と明らかにされる島民の姿。
奇妙さを増していく生活ぶりに、
不信感から、不気味さへ、そして恐怖へとかわる。

信じる物、価値観が違うと、通じないんですな。
今だに、通じない事でテンテコ舞いな世の中。
おぞましくも、事態は深刻。

ラストのクリストファー・リーの清清しい喜びに満ちた表情が、
何よりも恐ろしい。
このラストの強烈さ。
狂喜と狂気を見事に描いた異色作。

『ウィッカーマン』(1973年イギリス)
監督:ロビン・ハーディ、脚本:アンソニー・シェイファー、音楽:ポール・ジョヴァンニ
出演:エドワード・ウッドワード、クリストファー・リー、ダイアン・シレント、ブリット・エクランド

《断絶》

2013-02-02 00:10:43 | 日記


『断絶』(1971年アメリカ)

孤独な魂の硬質な美しさ、人生の脆さ。
風景は流れ去り、人もまた流れ去る。
失恋の痛みが突き刺さる、
青春ロードムービー。

グレーの55年シェビーに乗って、ドラッグ・レースで小遣いを稼ぐ二人の若者。
オレンジ色のポンティアックGTOに乗った男と車を賭けてワシントン DCを目指す。


行き場もなく、目標もなく、何かを探す旅。
人生の始め方が分からない若者たち。

人生に行き詰まり、当ても無い。
それでも何かを期待して車を運転する男。

車を乗り継ぎ、気ままに放浪する女の子。
もちろん、彼女も何かを探している。

四人の孤独が、交差しすれ違う。
そして、人生は続くという残酷な真実。

GTOを運転する男の孤独がすさまじい。
ヒッチハイカーを乗せては、身の上話を聞かせる。
孤独から逃れる為に、とにかく話相手を求める、その姿。
しかし、その話はデタラメ。
過去もなく、目的もない男。
あるのは、車と現在だけ。

青春は続かないという残酷さと、
人生は続くという残酷さ。
そして何よりも、
時代の閉塞感の中での未来に対する不安ではなく、
先の見えている人生に対する痛切な実感こそが、
もっとも残酷なのである。


閉塞感の押し寄せる今の世の中。
モンテ・ヘルマンからの贈り物を受け取るにふさわしい現在。
改めて公開されたことは、意味深い。

『WALKABOUT 美しき冒険旅行』(1971年)とあわせて、
大切に保存したい青春ロードムービー。


『断絶』(1971年アメリカ)
監督:モンテ・ヘルマン、脚本:ウィル・コリー、ルドルフ・ワーリッツァー、撮影:ジャック・ディアソン
出演:ジェームス・テイラー、デニス・ウィルソン、ローリー・バード
ウォーレン・オーツ、ハリー・ディーン・スタントン