あんなに暑かった夏でしたが、今日の半そではちょっと後悔しています。一気に秋の風になり、えっ、いつ秋になったの、と誰かに問いただしたくなりました。季節の移ろいは体調を崩す原因になります。それと同時に心にも、夏の疲れやストレスからバランスを崩してしまいがちです。たっぷりの睡眠とゆったりとぬるめのお風呂に入ることが寒暖差疲労を取る方法だそうです。
学校では前期の授業が終了し、先週、大卒程度の上級クラスと社会人ゼミの修了式を厳粛に執り行いました。卒業式とは式の規模が違っても、この学校で学ぶべきことを学び、公務員合格の目標に向かって時間を過ごしてきたことをきちんと評価し証明してあげたいと思いました。
すでに内定が出ている学生も、これから受験する学生も久しぶりに集まってくれました。
対策授業中は、短期決戦ということもあり、またコロナ禍のなか、例年のようには、なかなか打ち解ける時間も気持ちの余裕もありませんでした。
そんな彼らを、社会に出るにあたって大丈夫なのかと、内心は思っていたのですが、この修了式に集まって、外ではできない祝賀会を、学校の広いスペースを使って、ちょっと贅沢なお弁当で行った時、意外な光景を目にしました。みんなが和やかに歓談しているのです。私たちは、こっそり顔を見合わせてしまいました。
それだけ、受験期の心情は切羽詰まって緊張して余裕がなかったのだと、改めて感じる出来事でした。
公務員試験には、作文または論文という試験が課されます。民間企業でも、作文のない就職試験はないのではないかと言われています。今期は私がその担当となり、初級の作文、上級の論文対策を行いました。先日は、初中級クラスの最後の作文の時間でした。対策は何度も何度もいろんな課題で、とにかく書いてみるというのが大切だと私は思い、毎時間600字、800字、1000字と挑戦してもらいました。
最後の作文の課題は、国家公務員試験対策として「働くことの意義について」にしました。学生たちは、働くということについて、様々な考えを述べてくれました。生活のため、家族のため、地域へ恩返しをするため、自分の成長のため、など様々でした。その中で、私の心に強く残った作文がありました。
「働くことの意義」は居場所を作ることだと、その彼女は、書きだしました。
私たちの誰もが持っている「居場所」は、まず家庭でしょう。帰る場所、くつろぐ場所、癒される場所であるはずです。そして、中学、高校では、部活動も居るべき場所となります。
多くの学生は作文の中で、部活動のことをよく書きます。部活動の中での出来事は、それだけその年代の人にとってはとても大事な時間となっているのです。そしてその場所が第2の居場所となっています。
彼女は、専門学校に入学してアルバイトをしたことで、学校以外に働くということで自分の居場所を見つけたと書いていました。アルバイトで、できなかったことができるようになったり、認めてもらったり褒めてもらったりしたことで、自信が持てるようになり、そこに居るべき場所を確認したと述べていました。
高校を卒業して本校に来た時、彼女は知り合いもいなくて自分の居場所がここにないように感じて、不安だったということを私はその作文で知りました。
彼女はさらに、今コロナ禍で失業に追い込まれたり採用を取り消されたりしているニュースを受けて、働く場所、つまり居場所を失った人たちに対してかわいそうだとも述べていました。最後に、自分が公務員となった時には、私がいるべき場所で精一杯頑張るつもりだと決意を述べていました。
構成も展開も秀逸です。私は名前を伏せて、学生全員の前で読んで聞かせました。
「文は人なり」と言いますが、私は、その彼女のことが少しだけ理解できたような気がしました。
今年の中秋の名月は10月1日です。昨晩ベランダに出ると、いつもよりも白い月あかりに、そろそろお月見なのかと丸くなりかけのお月様を見上げました
気候的には、運動会やピクニック日和です。
長く苦しかったコロナ禍や自然災害を忘れ去り、高く透き通った青い空を芝生に寝転がって眺めたりする、そんな時間が来たらいいなと思っています。
Photo by mizutani