10月になり、朝夕涼しくなりました。
「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる」
古今和歌集の藤原敏行の有名な歌です。
四季の移り変わりにとても敏感な日本人は、万葉の時代から、四季の中でもひときわ秋の季節に趣を感じていたのではないでしょうか。そしてその太古の感性を受け継いで、今も、ほんのかすかな風の変化で秋の訪れを感じています。
公務員試験合格の吉報が届き始めました。
喜びとため息が漏れるなんとも複雑な時期でもあります。
自分の一生が、一発勝負で決まるなんて、残酷ではありますが、抜き打ちで行われるわけではないので、大体は、きちんと準備をしてきた人が合格を勝ち取るのです。しかしながら、頑張った人でもその当日実力が発揮できないこともあり、それは「縁がなかった」という言葉ではとても言い表せない、やはり悔しい気持ちが残ります。
学校では、一転、来年度の募集が始まっています。今年は、コロナの影響なのか、公務員への進路変更が多いような気がします。特に、大学での授業の形態の変更などにより、大学卒業してから目指すつもりの公務員に、すぐに公務員になりたいと進路変更をし、本校に入学を決めた人もいました。
また、例年よりも資料請求や問い合わせのメールなど、アクセス数が多くなっています。
今年度の説明会では、高校1年生であったり、中学生であったりと、将来へ向けての準備を早くから進めている様子が伺えます。
ふと、この学校がここにある意味は、何なのだろうかと考えてみました。
この学校から巣立って行った卒業生は数知れません。その卒業生たちは、このIBAのことを覚えていてくれているでしょうか。私自身は、それぞれの代での思い出が蘇ってきます。今年は、その卒業生のお嬢さんが入学してきました。
先日、高校生のとき本校の夜間講座と夏期講座に来ていたという大学生が来校しました。たった数か月の期間だったけれども、本当に楽しかったと言ってくれました。そしてそのことを忘れず、また改めて公務員になると決めた時に、本校を訪ねて来てくれたのでした。説明会には、中学生が、将来の夢として公務員を目指すためのルートを探して、お父さんと一緒に来てくれた時には、まだ数年先のことなのにと、驚きと感謝の気持ちでいっぱいになりました。
長い年月をかけて、この場所にあるこの学校は、地域に根付いているのだなと、携わる人間として誇らしく思います。地域の人たちは、公務員を目指すならこの学校に聞けば何でも分かるという、暗黙の認識を持っていてくれているのかもしれません。
地域の高校の先生からも、公務員試験についてのご質問をよく受けます。今年は、学校ごとへの訪問もままならず、担当の先生方とも十分な関わりができない状況でしたが、それでもこれまでの実績や信用から、進学するなら、と本校へお問合せをしてくれています。このことも有難いことです。
企業の社会的な役割として、地元から「好意を持って受け入れられている」ということが最も大切なのではないかと思います。これからも、地域の人たちをサポートできるように、一人ひとりの職員が誠意を持って真摯に取り組んでいきたいと思います。
そして、この「学校」を「人」に置き換えれば、ひとりの人間としての生き方も、その姿勢も見えてきました。
写真は、酔芙蓉です。朝花が咲いて夕方には散ってしまう1日花で、その1日のなかで花色が白から濃いピンクへと変化していきます。お酒を飲んで酔ったように色が変わるところから名前が付いたそうです。
「秋津羽のうすくれなゐの花の色に夕日のかげをかさねてぞみる」
江戸時代の国学者 加納諸平の和歌です。(蜻蛉(とんぼ)の羽のように薄い、うす紅の花の色に、夕日の光を重ねて見る)
秋の酔芙蓉の花びらに、透けて見える夕日の美しい情景が目に浮かびます。
Photo by mizutani