
関東での梅雨明け宣言が出された途端に、各地で台風や大雨の被害が出ています。
一年前の九州北部の大災害の復興ができないままに、今回の大豪雨に見舞われ、自然の恐ろしさを目の当たりにしています。何か自分にできることはないのかと思うばかりの毎日です。
先日、「潜伏キリシタン関連遺産」としてユネスコの世界文化遺産に、ここ長崎と天草が登録されることが決定しました。
世界史の授業の中では、キリスト教は西洋史を理解する上で避けては通れない必須の知識です。
東洋での布教をしていたイエズス会宣教師のフランシスコ・ザビエルは、1549年、鹿児島に渡って日本での布教を開始し、翌年、日本初の南蛮貿易港となった長崎県の平戸を訪れました。ポルトガルは布教を条件に貿易をおこなっていたので、領主の松浦隆信が平戸での布教を認め、長崎県のキリスト教の歴史がはじまりました。今でも平戸市にはその当時の歴史的資料がたくさん残って保存展示しています。
その後九州各地にキリシタン大名が現れ、外国との交易と共にキリスト教も民衆に広まっていきました。しかし、平等を説くキリスト教は、時の権力者の天下統一には邪魔になり、また脅威として、豊臣秀吉の伴天連追放令や長崎二六聖人の殉教、江戸時代の鎖国令と禁教令などが次々と出されるようになりました。それは島原の乱を機に一層厳しくなり、キリシタンの多くは棄教してしまいましたが、神父が不在の中、潜伏して深く信仰を貫いた少数の人々とその子孫は、厳しい弾圧や貧しい生活を耐えて、250年の間信仰を守り抜いたのです。
日本の開国とともに、長崎に外国人のための大浦天主堂が建てられると、浦上村の潜伏キリシタンが訪れて信仰を告白(1865年3月17日)。これが世界宗教史上の奇跡と呼ばれる「信徒発見」です。「ワレラノムネ アナタノムネトオナジ」その時の言葉です。心に沁みます。
その後も迫害は続きましたが、キリシタン禁制の高札が撤廃されると、潜伏キリシタンの多くはカトリックに復帰し、信仰の証として競って教会を建築しました。潜伏していた山中や浦々に建てられた教会や地域が今回文化遺産として登録されたのです。
その一つ、潜伏キリシタンが多かった現西海市の外海に赴任し生涯を捧げたド・ロ神父が、風の強い斜面の台地に、私財を投じて建てた質実剛健な教会が出津(しず)教会です。
この出津教会から外海の海を見下ろすと、そこに「遠藤周作記念館」があります。遠藤周作の著書『沈黙』は、江戸初期のキリシタン弾圧を描いたもので、私が最も感動した本の一つです。記念館のベンチに座って東シナ海をぼんやり眺めると、どんよりとした曇り空と薄暗い海が広がっています。そんな遠い歴史を思いながら見るので、空も海も物悲しく見えるのでしょうか。
今では、今回指定された教会以外にも各地に教会が建立され、この長崎の地域の信者を見守っています
長崎では、もうすぐ「祈りの日」を迎えます。原爆が投下されたその時は、宗教や言語の別なく一斉に人の命が奪われました。
平和について、命について考える時が来ています。
さて、学校では、公務員上級試験の一次合格発表が出て、二次面接対策に奮闘しています。面接専門官や先生たちも大忙しで、うれしい悲鳴です。最終内定まで頑張ってほしいです。
今月の花は「ルドベキア」。ひまわりに似た元気な花です。正義、公正さ、潔さが花言葉。
未来に向かう学生たちの輝く笑顔のように、梅雨明けの真っ青な空に、よく似合っています。
Photo by mizutani