世界一周の記録

2006年8月から2008年9月まで2年1ヶ月の世界一周放浪の旅をしていました。その旅の記録です。

ロスト・ワールド・イン・ベネズエラ 盛り上がってきました!

2007年07月29日 00時02分59秒 | 南北アメリカ

また、ブログ更新の間隔が空いてしまいました。その間、充実した旅行ができていたので今回のブログは長くなりそうです。すいません。辛抱強く最後まで読んでいただけると幸いです。

<南米旅行雑感>
アフリカを旅行している時何度か「南米は物凄く楽しい。それに対してアフリカはつらい事が多くてあまり楽しくない。物価も南米の方が安いし。」という話を何人かの旅人から聞きました。なので、南米に来る前はめちゃくちゃ期待度は高まっていました。しかし、いざ来てみるとそうでもなかったです。物価はアフリカとそれほど変わらないし、移動、観光、食事、宿泊、全てが快適で簡単で楽チンなのです。治安は悪いらしいですが、町を歩いていて感じる恐怖感、危険な空気、みたいなものはアフリカに比べると全然少ないです。夜も平気で出歩けるし、なんなら平和な感じすらします。これは、僕が危ない目に遭ってないからだけなのかもしれません。実際、知り合いの旅人に南米で凶悪な犯罪に遭った人が何人もいますし。僕が運が良かっただけなのかもしれません。観光に関しては、アフリカよりも見所は多いし、観光にかかるお金も安いです。パタゴニアのペリト・モレノなんかはかなり凄かったですし、大好きな町クスコやラパスでは、とても楽しい日々が過ごせました。しかし、アフリカを旅していたときほどの刺激や興奮や緊張感が無いのは事実です。キワキワ感が無いのです。スペイン語が旅行必須用語以外はほとんど話せないので、現地人とほとんど交流がないのも刺激が無い大きな原因の一つでしょう。アフリカでは英語を話す現地人が多数いたので、色々と刺激的な会話ができていました。こういった事情のため、南米は「ラクで楽しいけど全体としては印象が薄い」という感じになっていたのです。

しかし、ベネズエラに入国してから、一気に楽しくなってきました。アフリカ並みの治安の悪さ、宿が全然見つからずに泣きそうになるという観光向け施設の少なさ、闇両替の緊張感、色々なことが思い通りにならないイライラ感、それがとても刺激的なのです。アフリカを彷彿とさせるのです。あの頃の充実感が戻ってきました。

そんなベネズエラは、「旅行がし辛い」というだけではなく、ギアナ高地という素晴らしい自然がある地域があり、そこにはエンジェル・フォールとロライマ山という南米屈指の観光ポイントがあるのです。エンジェル・フォールは世界一落差がある滝、ロライマ山はベネズエラに多数あるテーブルマウンテンの一つで、その頂上の世界はかの作家コナン・ドイルが「ロスト・ワールド」を書くきっかけになったとか。それに映画ロスト・ワールドの撮影もこのギアナ高地で行われたそうです。

まずは、エンジェルフォール2泊3日ツアーについて。

<ATM事件>
ツアーに行く前にちょっとした事件があったので、それについて少し書きたいと思います。

ベネズエラでのコパ・アメリカ観戦に予想以上にお金がかかりドル現金が底をついたので、仕方なくエンジェルフォール・ツアーはATMでお金を降ろすことになりました。(余談ですが、そうなると公定レートでの引き落としになるので、闇両替よりも1.5倍も費用がかかってしまうので、かなり痛い。)旅行会社に安全だと聞いていたATMが残念ながらお金が切れてしまっていて使えなかったので(こういうところがアフリカっぽい)、そこにいたベネズエラ人に別の銀行の場所を聞いて行くことに。灼熱の町をふぅふぅ言いながら歩きたどり着いた別の銀行では、先客のベネズエラ人がいました。そいつが「先に使っていいよ」という仕草をするので、入ってカードを入れようとすると、そいつが僕のカードをパッと取り上げて「こっちに入れるんだよ」とか言いながら、もう一つあるカードの差し入れ口に通したのです。それは見るからに正規のカード入れ口とは違っていて、黒いプラスチックの小さな機械を、後からATMのそれっぽい所にくっつけたという感じでした。ベネズエラのATMでキャッシュカードの磁気データをスキャンするという話は以前からよく聞いていたので、「うわ~、俺今それをやられてるよ~」と一瞬で気づきました。そいつは、その後「こっちにも入れるんだよ。」とかいいながら正規の差し入れ口にも入れようとしてましたが、「そんなアホなことあるかいな」と思って、そいつからカードを取り返してそのATMから出ました。暗証番号を入れるところを見られない限り、磁気データをスキャンされてもお金を降ろされるということは、多分無いのです。うーん、さすがベネズエラ、危ない所だなあ、と思いましたが、この後さらにひどい事が起こるのです・・・

ここのATMをあきらめるとお金を降ろせないということになってしまうので、そのベネズエラ人がATMから出てくるのを待ってから、再度チャレンジしようと思って、ATMの外で待ちました。そいつはカモフラージュのためかお金をいくらか降ろして出てきました。携帯電話で何か話しながら、こちらを見ずにそそくさと立ち去っていきました。これで安全になったと思い、ATMの建物に入りました。好奇心でスキャン用の機械を触ってみると、簡単にポロッと取れました。両面テープでATMのそれらしい所に貼ってあるだけだったのですね。「うわ、取れちゃった」と思って焦ったのですが、その機械を後ろの棚に置いてATMの操作を続けることにしました。ゴミ箱に捨てようか迷ったけど、後で持って帰るのも面白いかなという好奇心が、その時は勝りました。

ATMを使おうとすると、ここのATMは表示がスペイン語のみなので、何がなんだかよくわからなかったです。それでどのボタンを押したらいいのか、いろいろと試したりしていると、最初の銀行で会ってここの銀行の場所を教えてくれたベネズエラ人がやってきました。「スペイン語なのでわからないんだよ」と言うと、彼は操作を教えてくれました。その代わりずっと画面を覗いてくるので暗証番号を見られるかと心配になってきました。入力ミスをして、操作を初めからやり直さなくなったのを機に、彼に順番をゆずりました。しかし、彼は特にATMを使うそぶりが無く、そうこうしているうちに別の人が来てATMを使って出て行きました。その間、僕と彼と二人で待っていました。この人は何を求めているんだろう?と疑問に思いながら舞っていました。そして警察がATMに入ってきました。

警察は有無を言わさずに、僕と彼を近くの警察署まで連れて行きました。警察署は、その銀行から徒歩3分くらいの所でした。倉庫のような暗くて狭い部屋に押し込まれた僕と彼は、荷物や服のポケットを徹底的に捜索されました。おそらく僕がATMから外して棚に置いたスキャン用機械を探しているのではないかと思ったのですが、それを口にすると余計に面倒な事になると思い(スペイン語も話せないし)、ただただ「私は何もしていません。ただATMを使おうとしていただけです。この人はスペイン語がわからない僕に機械の操作を教えてくれていただけです。」と必死に片言のスペイン語と身振り手振りで訴えました。しかし、警察は僕の持ち物に対する捜索を止めずに何度も荷物をひっくり返しては何かを探しています。服もパンツ一枚に脱がされました。その上、股間のふくらみさえも疑ったみたいで、激しく掴んで確認されました。それも2回も。もう、半泣きです。もう一人のベネズエラ人にいたっては、壁に両手をつかされた上に全裸にさせられていたので、僕はまだマシだったのかもしれません。そんな感じで散々取り調べると、警察は僕に対する捜査を止めて開放してくれました。元々、悪いことをしようとしたベネズエラ人と被害者の東洋人という認識だったのだとは思います。「君はいっていいよ。あいつはきっと逮捕されるけどね」と最後に言っていました。僕は自分がスキャン用機械を外したことで彼が疑われているのではと罪悪感を感じて「彼は機械の使い方を教えてくれただけで、悪い人ではない」と警察に言いましたが、彼らは「OK、OK」と言っただけでした。まあ、あのベネズエラ人も僕の暗証番号を熱心に見ようとしていて怪しいので、後は警察に任せることにしました。それにしても、あのスキャン用機械をカバンに入れなくてよかったです・・・。

そんなこんなで、危ないベネズエラのATMなので、みなさんもベネズエラに来る際は気をつけてください。

<エンジェル・フォール>
2泊3日のツアーに参加しました。メンバーは総勢15人くらい。ほとんどが欧米人なのですが、同年代の日本人男性Tさんと香港人のおっちゃんYさん(英語ペラペラだが聞き取りやすい。古い日本映画について日本人以上に詳しい)の東洋人二人がいたので今までのツアーのように英会話と孤独との戦いになるということはなかったです。

初日はボリビアでのアマゾンツアー同様小さいボートに乗ってエンジェルフォールの麓のキャンプサイトまで行きます。数時間乗りっぱなしなのでかなりお尻が痛いです。

しかし、周りの景色は想像を超える素晴らしいものでした。鮮やかに赤い水の川、両岸に広がる鬱蒼と茂る森、その奥に聳え立つ幾つものテーブルマウンテン達、その壁を静かに流れ落ちる幾筋もの白い滝。恐竜が飛び回っていてもおかしくない世界です。まさにロストワールド。しかし、動物はほとんどいなく、鳥もあまり飛んでいないので辺りは静かです。それが現実感の無い風景の現実感の無さを強調していました。


途中急流下り風の所があってスリル満点です。岩と岩の狭い間をくぐりぬけたり。みんなライフジャケットを着ているという事は転覆の可能性もあるということか・・・。


川の水は綺麗な赤でした。泳いだときに結構飲んだけど体調は大丈夫でした。


二日目の午前中にエンジェルフォールを間近に見に行きました。1時間ほど森の中を登っていくと、突然視界が開けてエンジェルフォールが現れました。久しぶりに風景を見て鳥肌が立つほどの感動をしました。

テーブルマウンテンの壁がエンジェルフォールを中心にカーブを描いていて、それがまるでオペラハウスのような豪華な印象を与えます。滝はあまりもの落差(800m)のために落下地点は霧のようになっていて、天子の羽がふわりと舞っているかのようです。

このテーブルマウンテンの名前は地元の言葉でAuyan・Tepuiといい、意味は「悪魔の神」だそうです。悪魔の山から落ちる天使の滝。ああ、なんとファンタスティックな場所なんでしょうか!!!(余談ですが、エンジェルフォールのエンジェルという名前は、初めてこの山を発見したアメリカ人の名前らしいです。なーんだ、という感じですよね。でも、彼は金塊を探しにセスナでやってきてこの山の頂上に不時着したらしいです。そこから一緒にいた奥さんを連れて山を自力で降りたとか。その話は相当すごいです。)

エンジェルフォールの滝壷で泳ぎましたが、寒い!


3日目は別の小さな滝の下をくぐるというイベントがありました。

初日には3mくらいの岩の上から川へ飛び降りるというイベントもあったりして、風景を楽しむ以外の楽しさが満載のツアーでした。雨季なのに天候にも恵まれたのも大きかったです。

カナイマの湖のビーチ。南国テイストと滝が同居していて面白かったです。


<ロライマ山トレッキング>
エンジェルフォールツアーから帰ってきてすぐにTさんと夜行バスでブラジルとの国境の町サンタ・エレナに行きました。ロライマトレッキングの拠点となる町です。さっそくツアーを申し込みました。ツアー会社の人(会社名はミスティックツアー。オーナーはミステリーおやじ)が言うにはロライマには不思議なポジティブなパワーが発生しているとか。それに不思議なパワーも発生していて、そのパワーに引き寄せられるのかUFOの目撃例が多いとか。うーん、怪しい。

ここでまた別の日本人長期旅行者Sくんと偶然出会い、ツアーは欧米人5人と日本人3人という組み合わせに。こういうツアーで日本人が3人も揃ったのは初めてだったので、これだけでもとても楽しかったです。欧米人も全員良い人ばかりでした。ツアーは5泊6日です。キリマンジャロの4泊5日を超える長丁場です。その上、設備が整っているキリマンジャロとは違い、ロライマは6日間、電気も水道も全くなく全てテント泊です。しかもポーターがテントと食料しか運ばないので、着替えや寝袋、マットなどは自分で運ばなければいけません。荷物は10kg以上です。麓は暑く、頂上(2泊する予定)は寒いという環境の変化があるので、服も用意しなければいけません。その上、プリプリという名のサンド・フライ(ハエの一種)が大量にいて(なんちゅう変な名前だろう)、そいつに刺されると3週間くらい痒さが続くとか・・・。僕は全部で50箇所くらいやられました。痒いです。しかし、結論としては、奇跡的な楽しさでした。驚くべき風景の数々、平和な雰囲気、全員ナイスガイなツアーメンバー、美味しい食事(こういうツアーにしては珍しい)、雨季なのに晴が続いた天気(エンジェルフォールに続き)、、、一生忘れられない6日間になりました。

◆初日

スタートの村。遥か向こうに見えるロライマ(右奥)に向けて5泊6日のツアーがスタート!


緩やかなアップダウンのある草原の道を延々と6時間11km歩きます。


初日のハイライト。靴下での川渡り。靴下だと滑らないらしいです。その代わり膝から下をプリプリに刺されます。


タンザニアのサファリツアー以来のテント泊。3人用テントに日本人3人で泊まり色々話ができました。真剣にくだらない話から真剣に人生や世界の話まで。しかし時に盛り上がりすぎて欧米人に「静かにして」と怒られたのも、良い思い出です。


ちなみにトイレは草むら。風呂は川です。どちらも肌をさらすのでプリプリの格好の餌食になってしまいます。ちなみに僕は6日間でお尻に合計15箇所も刺されました。

◆2日目
標高1150mから1800mまで上がります。4時間9kmの道のりです。

眺めが良くなってきました。


昼過ぎにベースキャンプに到着。ロライマは目の前です。


◆3日目

2700mの頂上に向けて出発です。さすがにきつい傾斜が続きます。でも、珍しい植物が多いし、滝の下を通ったり、道のりは変化があって面白いです。そして、4時間半のトレッキングの末ついに登頂できました。


登頂したぞ!


ロライマは頂上についてからも面白く、ここで2泊もします。テーブルの上をがんがん歩いて珍しいものを見て回ります。変な形の岩が多いし、変な植物もあるし、端からの眺めは素晴らしいし、霧がしょっちゅうでてきてミステリーな雰囲気を盛り上げるし、2日では足りないくらいです。
ちなみに頂上でのトイレは岩の上にぽつんと置いてあるバケツでした。



「El Hotel」といわれるキャンプサイト。岩の下で風雨を防ぐわけです。


人の顔にも見える変な岩。こんなのがそこらじゅうにありました。


◆4日目
この日は1日テーブルの上を歩き回ります。一日中岩の上を歩いたので、くたくたになりました。洞窟探検などもあり。

クリスタルの川。クリスタルって全部6角形なんですね。一つくらい持って帰りたかったけど、やっぱりそれは禁止されていました。


岩を這うエビの仲間。うそ。エビのような植物。この植物は頂上に物凄い数がいて、一人で「イセエビ星人だ!」と興奮していました。




霧が出るとダークな雰囲気に。


夕方。晴れるとキラキラとします。


◆5日目
朝早起きして初日のキャンプサイトよりもさらに下を目指して下山していきます。きつい傾斜を急いで降りたので、足の筋肉がパンパンになりました。キャンプサイトにつくと頂上にはいなかったプリプリ達と再会です。ぞっとするくらい大量にいました。テント設営時にチャックが開けっ放しだったのでプリプリがテント内にわんさかはいっちゃっていました。それをテントの中に決死の覚悟で入って、一匹ずつたたき殺して全滅させてやりました。この5日間の憎しみもあり、大いに盛り上がりました。ああ、すっきり。

下山時は良い眺めを見下ろしながらなので、楽しかったりもします。


◆6日目
最終日は初日と同じゆるいアップダウンなのですが、前日の疲れが筋肉痛として残っている僕としては、この日が最もしんどかったです。暑かったし。

昨日の朝までいたロライマがあんな遠くに。


そして、サンタ・エレナの町でツアーメンバーみんなでビールで乾杯しました。ファンタスティックな6日間の締めくくりにふさわしい素晴らしい夜になりました。



ということで、ベネズエラ観光は終了です。せっかく国境まで来たのだからこの後はブラジルに行こうかと思います。物価が高くめちゃくちゃ国土の広いブラジル。南米唯一の先進国とも言われる国。この後北上しなければいけないのに南下するというもどかしさもありますが、旅人からの評価が高いブラジルをそこそこに楽しみたいと思います。


<追伸>
このブログを書いている時に洗濯して干しておいた靴を盗まれました。くそっと思いながら食べようとしたカップラーメンの蓋を開けると中から蛾のような虫が飛び出してきました。中で卵から孵化して具を食べながら成長したみたいです。ベネズエラ、最後まで楽しませてくれます・・・。