ようやく”桃源郷”と評されるパキスタン北部の山岳地帯にやってきました。暑くて空気が悪くてテロの危険もある平野部パキスタンをようやく脱出できました(刺激的で楽しかったけど)。平野部では暑いし蚊がいるので長い間安眠できていなかったのですが、山岳地帯に来てからは毎日ぐっすりと眠れています。涼しいし蚊がいないからです。油断すると10時間以上寝てたりして、これまでの睡眠借金を返しているかのようによく寝ています。それ以外にもちろん景色も素晴らしいし、空気も綺麗だし、噂どおりの良いところでした。
まずは、ペシャワールからミニバス(ハイエース)で悪路を14時間揺られてチトラールという村に行きました。しんどかったです。桃源郷へは楽をしては行けないみたいです。
道中、車で何度も川を渡りました。
写真の左側は谷になっていて、とても怖かったです。断崖絶壁の細い道を延々と通ったし、これまでの移動で最も恐怖度が高い移動でした(エチオピアやボリビアを越えるかも)。
猛暑のペシャワールから車で数時間山道を登ると、なんと氷河が見えて来ました。車の窓から吹き込む風もとても冷たくなってきました。なんという急激な環境の変化なんでしょう。
そして、チトラールに夜中の10時頃に着きました。
翌朝、チトラールのホテル屋上から見た景色は素晴らしかったです。
小さくてのんびりとした村チトラールで2泊ほどゆっくりとして、カラーシュの谷(カラーシュバレー)へと行きました。そこは、カラーシュ族という少数民族が暮らす谷です。カラーシュ族の特徴は女性の衣装です。赤ん坊からお年寄りまでカラフルなドレスと髪飾りで美しく着飾っています。
カラーシュ族の女性
青い目をしている人が多かったです。何でも、マケドニアのアレクサンダー大王遠征の末裔なのだとか。
宿の女の子
写真を撮られることが好きみたいです。撮られなれていました。
いつも鳥を肩に乗せて歩いている女の子。神秘的でした。
赤ん坊を抱いて、山をバックにかっこつける女の子
赤ん坊もカラフルな衣装を着ています。
でも、カラーシュ族の男性は他のパキスタン人とあまり変わりません。
何かの実をくれる小さな女の子。
実をもらった直後、下の写真の悪ガキ軍団との鬼ごっこが始まりました。ヘトヘトになるまで走らされました。
カラーシュ族は、男の子よりも女の子の方が、遥かに元気があって人懐っこかったです。
平和で美しいカラーシュの谷は何日でもいたくなる雰囲気なんですが、いかんせん食事があまりにも単調なので、2泊だけしてチトラールへ戻ることにしました。毎日毎日3食同じ味のものばかり食べ続けるのはつらいことなのだと再認識しました。
チトラールに戻った後は、すぐにシャンドール峠に向けて出発する予定だったのですが、ちょっとしたきっかけから滞在を伸ばすことになりました。
ポロ(馬に乗ってするホッケーでパキスタン北部の代表的スポーツ)の試合があるかもしれないという情報を得て夕方にポログラウンドに行くと、この日はポロの試合は無くて、子供や大人がサッカーやホッケーやクリケットをして遊んでいるだけでした。それをぼんやり眺めていると、サッカーボールを蹴って遊んでいた数人の大人に誘われ、一緒にサッカーボールを蹴ることになりました。彼らはアフガニスタン人で、ソ連のアフガン侵攻のためパキスタンに非難してきたアフガン移民の2世達でした。ほとんどの人はパキスタン生まれですが、中には赤ん坊の時にパキスタンに来た人もいました。この日は、軽くボールを蹴ったりしたくらいで終わったのですが(それでもヘトヘトに疲れました)、翌朝にアフガニスタン移民の草サッカー大会の試合があるらしく、しかもそれは準決勝で、その試合に是非来て試合に出てくれと言われたのです。翌日は朝のバスで移動する予定でしたが、そんな大事な試合に来てくれと誘われれば、行かないわけにはいきません。チトラール滞在を一日伸ばすことにして、サッカーの試合に行くことにしました。
ホッケーをしている子供。上手に球を打っていました。
1人だけポロの練習をしている人がいました。
翌朝5時30分に起きて、ポログラウンドへ向かいました。試合は早朝6時開始なのです。ねむいです。10分くらい遅れてグラウンドに着くと、試合は始まる寸前でした。試合と言っても、選手達はみんなシャワールカミースというパキスタン男子全員が普段から来ている民族衣装のままで(2、3人サッカーシャツの人もいた)、審判も主審が1人のみで線審はいないし、草サッカーというよりは、中学校の時とかに休み時間に遊びでやっていたサッカーのような感じでした。昨日一緒にボールを蹴ったアフガン人は僕を見つけると、「おーい」と手を振って「さあ、試合に出てくれ!」と言って、アップも何もしていない僕をいきなりスタメン出場させてくれました。相手チームのアフガン人たちも珍しいモノが紛れ込んできたという感じで興味津々で、「よろしく!」とか「日本から来たのか?」とか言いながらどんどん握手を求めてきます。
そんなこんなで試合は始まりました。僕は攻撃的MFで出場しました。プレーのレベルは高くなく、グラウンドもボコボコで、パス回しはほとんどなく、ただボーンボーンとボールを大きく蹴りあうサッカーでした。僕は元サッカー部とはいえ技術的には全然大したことないし、1年半以上もボールを蹴っていなかったけど、この日は相手チームのマークが甘いこともありプレーは絶好調で、アフガン人のチームメイトから徐々に信頼を集め始め、ボールをどんどん触れるようになってきて、とても楽しくプレーできました。昨日の夕方に軽く体を動かしていたこともあり、体は軽く、疲れも感じず、ただボールを追いかけているのが楽しかったです。チームメイトからも相手チームからも「ナイスプレー!」とか「お前はグッドプレイヤーだな!」などとおだてられて、どんどん気分は舞い上がっていきました。
試合は、0-0のまま後半に入りました。試合展開は一進一退という感じで、両チームの実力はほぼ互角でした。何人かの選手が入れ替わりましたが、僕はそのまま交代せずに出場し続けることになりました。そして、後半の20分くらい経った頃、相手陣内のフリーキックのこぼれ球がちょうど僕の前に来ました。苦手な左足でシュートしたボールは、ちょうど相手ディフェンダーやゴールキーパーのいないところに偶然飛んで行きました。そしてネットのないゴールに吸い込まれて行きました。
ゴール!やった!点を取った!
チームメイトからもみくちゃにされて祝福されました。相手チームの選手からも「ナイスゴール」と言われながら握手を求められました。旅をしていて、これほど自分に対して誇らしい気持ちになったことはありません。
試合は、僕のチームが追加点を取り、そのまま2-0で終了しました。来週に行われる決勝戦に進めました。本当に勝ってよかったです。その上、自分が点を取れるなんて・・・。その後、記念撮影大会があり、祝勝のジュースをおごってもらい、みんなと別れました。この試合の後、チトラールを歩いていると何度か「おーい、ジャパニーズ!フットボール!ゴール!」などとアフガン人に声をかけられました。素直にうれしいです。
爽やかな試合後
マンゴジュースで祝杯
この頃はまだ元気だったのですが・・・
でも、この日夕方から発熱し、その後3日間宿のベッドで寝込みました。この旅で1,2を争う高熱が出てしまいました。突然の激しい運動を標高1500mのチトラールでしたので、体がおかしくなったみたいです。なかなか物事はいいことばかり続かないですね。
しかし、チトラールの人は親切でした。ちょっと挨拶をすれば、お茶をおごってくれるし、いろいろモノをくれるし、不思議なほど親切でした。この旅で、最も親切にされた場所でした。
ある服の仕立て屋さん
なぜか挨拶をしただけで、仕立て屋の仕事場に招かれて、お茶をごちそうになり、2時間くらい仕事の見学をさせられました。他にもスパイス屋にはマサラスパイスや干しブドウをタダでもらったり、宿の男の子にもフルーツをもらったり、数え切れないくらい親切にされました。チトラール大好きです。
今はフンザという中国国境から近いところにいます。ここもまた桃源郷です。ということで、次回は”桃源郷 その2 フンザ”をお送りする予定です。
チトラールのポログラウンド兼サッカー場兼クリケット場兼ホッケー場
思い出の場所です。
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ありがとう!
旅に出て性格は日本にいたころよりもオープンになったと思うよ。でも、日本に帰ると、またクローズしそうな気もしてます。
MANAさん
ありがとうございます!
アフガン人にとって日本人のイメージはかなり高いみたいで、そのイメージをあまり崩さずにすんでほっとしてます。
カラーシュ族は素敵ですよねー。ほんとうに綺麗でした。
今は体調はかなり良いです。中華料理のおかげです。
ひろさん
実は、体調を崩したので決勝戦のある日までチトラールには滞在していたのですが、フラフラの状態で行っても迷惑をかけると思って、次の町へと泣く泣く移動しました。
2みん
確かにあの女の子はナウシカみたいやったね。目も綺麗で強くて。
サッカーはインド以外のほとんどの国でプレーされていて、ほんとうに素晴らしいスポーツだなあと思いますわ。
ナウシカみたいやん。
しかし標高1500mでサッカーでっか。そりゃあ体調も崩すでしょう。でもボールは国境越えるねぇ。素敵ですわ。
チトラールというところが、とっても親切な人が多くて、景色もすばらしくて、素敵なところだということが良くわかるレポートでした。
カラーシュ族の衣装もステキですねとっても!
どこの国、どこの民族でもやっぱり女性はおしゃれ好きなんですね~^^
今はもう体調も万全なんでしょうか?
なんだか毎回病気してるみたいで、日記見るたび心配です(笑)
ほんとにいろんなことあるね-
オープンな姿勢?素直な性格?のせいなのか…旅の神様がついてくれてるのか、、、
いろいろありながらも元気でよかよかやね
旅行記最後まで楽しみにしてま-す