タブーと秘密

タブーと秘密　　　

　タブーは破られ、秘密は暴かれる。熱湯のプールの縁にパンツ一丁でしがみつき、「押すなよ、押すなよ！絶対に押すなよ。-----早く押せよ。」芸人は言う。黄泉の国に行き、死んだ妻イザナミを取り戻したイザナギは、妻と約束をする。「黄泉の国を出るまでは、決して振り返ってはなりません。」美しい妻の姿になった鶴は、我が身から羽根を抜き、それを使って美しい布を織る。妻は夫に言う。「私が織っている姿を、決して覗いてはなりません。」
　しかし結果は決まっている。イザナギは振り返って、ウジにたかられ腐った妻のおぞましい姿を見てしまう。イザナミは怒る。「見－たなー」。鶴の夫はそっとふすまを開けて、鶴が羽根を抜く痛さに涙を流しながら機を織る姿を見てしまう。鶴の嫁は去る。
　人は禁じられれば、禁じられるほどタブーを犯す誘惑に勝てない。「王様の耳は、ロバの耳」。秘密は漏れる。必ず漏れる。社内不倫で、廻りに気づかれていないと思うのは、本人達だけだ。ギャンブル依存も同じだ。「次は勝つ。もし少しでも今日勝って5千円でも1万円でも稼げたら。負けが込んで金廻りが苦しいが、いつかのようにｘ万円一気に勝てば----」しかしやる前からほぼ結果は見えている。泥沼に銭をこれでもかと投げ入れ、後で激しい自己嫌悪に悶えることになる。
これほどまでに弱い人間に、ギャンブルの場、カジノを与えるのは如何なものか。パチンコ・パチスロ、競馬・競輪、まあ宝くじで破産する人間はいないだろうが、パチンコがあれだけ流行るのは手軽に現金を得る可能性があるからだ。その場で現金、手軽さがミソだ。カジノは対象となるゲームが多く、賭け金の額も無制限だ。またパチンコ屋は夜閉まるし、一日中やっても10万円負け続けるのは難しい。ところがカジノは24時間で、一回の掛け金は100万でも1億でも可能だ。一日で、数時間で全てをを失うことも、財産の大小に関わりなく可能なのだ。
　犯罪が増えたりしなければ良いのだが。問題の一つは、金貸しがカジノに入り込むことが出来るかどうか。ATMはコンビニでもあるのだから良いとして、サラ金の自販機はどうするのだろう。
　またカジノとは話が違うが、今日は犯罪者にとっては実に便利な世の中だ。金や宝石、ブランドバックや高級酒を簡単に買い取る〝お宝や〟のような店が増え、容易に換金出来るからね。繰り返すが、あまり手軽に賭博が出来るのは感心しないな。FXも株式も賭博も、客の負け金を収益としているのだから、生かさず殺さず、長く骨をしゃぶってくるだろう。その裏を取るのは容易なことではないし、楽しいことでもない。