昨日は、12月だというのに、快晴でポカポカと気持ちの良い1日でした。
そんな日の午後、私は海岸通り沿いに車を走らせていました。
瀬戸内の島々が広がっていて、大好きな景色です。
水面が太陽の光りに反射されてキラキラしていました。
思わず、目を奪われそうで、気をつけないと前方不注意になりそうです。
BGMはコブクロの「ASB」ちょっと久しぶり。
そこから右折して小高い丘へと上がって行きます。
少し登ると、目的の場所に到着しました。
予定より少し早く着いたので、周りの景色や、背伸びをして海が見えるか
など確認していました。
海は、家々の隙間から、少し覗けました。
私が行った場所は「特別養護老人ホーム」です。
主人の母、認知症とはいえ、まだ自宅で介護できる状態なのですが、「特養」は
数年待ちが常識。無理だと思った時の為の順番取りといったところでしょうか。
アポを取っていたので、すぐに40代くらいのにこやかな男性職員が応対して
下さり、館内を案内して下さいました。
丁寧な説明と、職員の方の笑顔とは裏腹に、私は、次第に切なくて胸が苦しくなって
きました。
そこは、生きる屍と独特の異臭が漂う空間でした。
皆、うつろな表情をしていて、ただベッドに横たわっているだけ。
老人同士で、楽しいお喋りでもしているのかと甘く考えていた私は、ショックの
あまり、職員さんに「すみません。ちょっと待って下さい。切なくて苦しいんです」
そう言うと、彼は、優しそうに「大丈夫ですよ。今、そういうお気持ちになるのは
お母様がお元気だからですよ。本当に、ここに入所される時には、そういう感傷
さえ生まれませんから」。
確かにそうだろう・・・。その時は、すがるように、ここを訪れるのだろう。
皆、それぞれに、きっと語り尽くせないドラマがあったに違いない人達。
戦争も経験しているだろう。
恋もし、結婚、必死で仕事や子育てもしたであろう。
その最期がこの場所なんて・・・。
きっと、すでにそんな感情さえ持ち合わせていないのかもしれないけど。
いや、できればそうあって欲しい。
寂しいとか、恋しいとか・・・そんな感情を持っていて欲しくない。
でなければ・・・耐えられない。
一通り、館内を見学して、応接室に通され、後は事務手続き。
入所のお願いをしてきました。
主人は仕事だったので、私一人で行ったけれど、それで良かったと思いました。
実の息子や娘では耐えられないと思います。
必ず、自分を責めてしまうでしょう。
帰りの車の中では、もう海を眺める余裕はありませんでした。
コブクロの「風」「YOU」「miss you」が流れてきて、涙で霞んで、前方が
見えなくなりそうで、何度も涙を拭いました。