2019年後半は The Who の年でした。
1969年に発表されたコンセプトアルバム”TOMMY"を1975年にケン・ラッセル監督が映画化した「TOMMY」が日本でリバイバル上映され、さらにアルバム1973年に発表された”Quadrophenia (四重人格)"を原作とし1979年に映画化した「さらば青春の光」もリバイバル上映されました。
特に「TOMMY」は私にとってはThe Whoのファンになるきっかけになった映画で、主人公を演じたThe Whoのボーカルのロジャー・ダルトリーのファンになりました。またこの映画は「苦しんでる弱者は心の中で必死に助けを求めていても人に伝える力を失ってしまう。そのため周りは気付かないままでいる。」という事を寓意的に表しているように感じました。
改めて銀幕で鑑賞したら、映画の画面の華やかさ、インテリアやファッションもとても素敵で、音楽はポップで親しみやすく、最後に力強く立ち直るTOMMYが歓喜と共に”Listen to You I get music”を歌うシーンで私もカタルシスを感じ深い感動がありました。
傑作だと思います。
そしてそして、12月6日に12枚目のアルバム「WHO」をリリース。これがもう、素敵でかっこよくて・・・。
The Who の音楽は大音量の激しい曲もありますが、やはりポップで親しみやすいメロディが多いです。このアルバムもしかり。時に、自分たちが開拓していった音楽が再現されているのも嬉しいです。60歳代の頃は音程がちょっと揺れていたロジャー・ダルトリーの声が70歳代になって安定して張りがあって若返っているのが驚異です。よほどご自身をきちんと管理されているのでしょうね。声域は若い頃より少し低音で年齢の厚みを感じます。そして繊細なピート・タウンジェントの歌は都会的で洒落た趣とちょっと哀感があって味わい深い。最初の曲”All This Music Must Fade”で二人がかけあうところは心震えました。
若くはないお二人は健康面でもいろいろ抱えてしまっています。でも瑞々しい感性は健在で、コンポーザーとしてソングライターとしてのピートの枯渇を知らない才能の凄みを感じずにはいられません。
ザック・スターキーの重量感のあるドラムもいい感じ♪
このアルバムは何より友情の結実、ピートが自分のメッセージの為ではなくロジャーに歌ってほしくて作った曲だと聞いてます。ああ、お二人が好きだ
さて、今年もクリスマスにお気に入りの曲を載せたいと思います。
今回は「TOMMY」を制作したケン・ラッセル監督が、もう一回ロジャーを主人公に作った映画「リストマニア」から1曲を選びました。
私は中学生の時にこの映画のサウンドトラック盤を買って聞いて、その13年後に映画をやっと見ました。内容はリストの恋愛遍歴を綴っていて、かなりぶっ飛んでいます・・。もちろん、これはケン・ラッセル監督なりのクラッシック音楽への愛情だと感じましたよ。きっとクラッシック音楽はこうあるべき、音楽を愛する事はこうでなくてはいけないという、見えない常識をけ破って多様な愛し方のうちの一つを示したかったのだろうと思ったんです。制作された1970年代は多様性への萌芽の時代で新しい表現を開拓していた背景も感じます。
リック・ウェイクマンが音楽監督を担当。リック自身がクラッシック音楽を本格的に学んだ方なので、リストやワーグナーの曲をオーケストラを導入しながらロックにアレンジしています。
私はフランツ・リストという作曲家をこのアルバムで知りました。だからこのアルバムで聞いたリストの曲はすべて初めてでした。
アルバムの2番目の曲「愛の夢」はリストの作曲した楽譜通りにリックがピアノを弾いて、控えめな音量でオーケストラをつけてアレンジして、ロジャーがメロディに合わせて歌ってます。
これがとてもいいんです。30代前半のロジャーの声は若々しくて青春の薫りがして瑞々しくて、恋にとまどいつつも愛する喜びを歌いあげているように感じました。この歌に感激したので「愛の夢」のピアノ楽譜を買いました。弾けないけれど、楽譜をたどりながらこの曲を何度も聞きました。
以前にも「オルフェウス・ソング」をここのブログで載せたことがありますが、リック・ウェイクマンの音楽はクラッシックの原曲に敬意と愛情を持ってアレンジしているのが感じられます。
この歌が使われている映画のシーンはロジャーがチャップリン風の服装をしてパントマイムをしてます。そして、実際の内容は私が感じていたのとは違っていました。それも面白いのですが、私にとっては恋する青年の歌の印象でずっと聞いていたので、今回も敢えて映像は使わず、アルバムジャケットのみが映る動画を載せます
#2 - Love's Dream - Rick Wakeman/Roger Daltrey