この映画は、2002年制作の韓国、タイ、香港のホラー作品が入るオムニバス映画です。
今回は3話目の香港映画「going home 回家」(ピーター・チャン監督作品)の感想を書きたいと思います。
そびえたつ香港の中心街に立つ古い2棟が向かい合った大型アパート。これは日本では都営もしくは市営住宅のような建物に当たるように見えます。あと1か月で取り壊しになるというのに一組の父と子が引っ越してくる。父親チャン(エリック・ツァン)と8歳の息子ションである。
アパートに向かう途中にションは鎖でしばって南京錠のかかった木の扉の隙間から視線を感じ吸い込まれるような気配に身震いしてしまう。
不思議な事にションから見ると木の扉はきっちり締まっている。
ホラーは私は正直言って苦手なのですが、今回見る機会があり見てみると、ホラーはいつもの日常がちょっとずつずれる異質感、違和感に不安を掻き立てられてその先に異常な光景が現れて一気に怖くなるものではと思いました。幸い恐怖までにはならず、安堵しましたが。
殆ど人が去ってしまったアパートに住むのは年老いた管理人と向かいの棟に住む中年の夫婦。夫婦の家庭は妻ハイアル(ユージニア・ユアン)が身動きのできない体らしい。
夫ユウ・ファイ(レオン・ライ)は陰気でいつも大量の生ごみをゴミ捨て場に持ってくる。ションは二人の後についてくる誰かを見る。
壁には女の子の絵が、
あれ、絵が移動してるよ
ところで、これは知り合いの医師から聞いた事ですが
お風呂に浸かるのは癌の抑制効果があるそうです。癌細胞は熱に弱いそうでお風呂に入る習慣のある人はそうでない人より発生率が低いのだそうです。勿論、それでも発生することもあります。様々な原因で引き起こされる病でもあるし。
その話を聞いていたので、夫ユウ・ファイのやってることに実はけっこうすんなり納得してしまったのです。
ユウ・ファイは物言わぬ妻のハイアルにずっと話しかける。その愛情深さ、
浴槽に浸かってる妻の髪を整えながら・・・
「君の髪はイタズラだな。子供みたいだ
枝毛になるなと言ったのに言う事を聞かない
君と同じでいつも僕を困らせるけど
君を好きだから怒らないよ」
そして言う「あと4日だよ。もうすぐ故郷に帰れる、明日旅券を買ってくるよ」
父親のチャンは警察官でとある捜査のためにアパートに引っ越してきたのである。
翌日忙しい父にほっとかれてたションがいなくなる。
慌てて探すチャン
ほら、壁の絵が
向かいの夫婦に尋ねたがいないとそっけなく言われる。部屋の中が薬臭く不審に思い、息子を誘拐した犯人ではと怪しく思い侵入。そこで見たのは・・・・。
秘密を知られた夫ユウ・ファイ(レオン・ライ)に気絶させられ監禁される。
ユウは「あと3日」と言う
3年間誰も理解されないことをひっそりとやってきて、やっと3日後に念願成就できる。あともう少しで幸せが戻ってくる
だから事情を知らない他人に妨害されたくない
ユウ・ファイはなおも妻に話しかける
二人は漢方医の大学の同期だったようです
ユウ:授業が始まって2日目に新入生が紹介された時、名前を呼ばれて君は立って返事をしたね
みんな大笑い。先生も笑いながら”中学生じゃないから立たなくていいのよ”って
その言葉にまたみんな大爆笑
君と同じ研究班になれた時は本当に嬉しかったよ
嬉しくて校庭を走り回った。
実習で初めて君の手を握って脈を診たね
あの時の君は今と同じように脈拍がすごく早くなっていたね
顔を上げようとしなかった
ハイアル:もう診させてあげない
ユウ:毎日体を洗う仲なのにまだ恥ずかしい?
あれ、妻は物言わないはずじゃ?ええ、いいんです。これで
二人の親密さに心打たれる
ユウ・ファイを演じたレオン・ライは青白く地味な大陸からの移住者を情感をこめて演じてます。ピーター・チャン監督作品は他に「ラヴソング」でやはり大陸からの移住者を演じていましたっけ。監督にとって移住してきた北方中国人の典型なのでしょうか。人情の機微を表現するのに定評のある監督の作品に出てるレオン・ライはしみじみとした情感を醸し出してくる。とても相性の良い監督と俳優なんでしょうね。
それから警察官チャンを演じたエリック・ツァンは物語に親しみやすさ、人間的な暖かさを持たせてくれたと思います。どんな役をしてもはまってしまう存在感はさすが!同じく「ラヴソング」でも味わい深い役をしてましたね。
ハイアルを演じたユージニア・ユエンは美しい裸体を魅せる。ずっと表情を見せないのだけど・・・
二人の願いが成就する日、話は急展開します
これは深い愛情で結ばれた夫婦の物語でした
チャンが二人の間に介入しなければ・・・・
いえ、それでいいんです。
映画の世界では創造主は監督に当たると思います。その創造主は夫婦の切なる願いの向こうにあるもっと深い悲しみに味方したのです。
ユウ・ファイはそのことに無頓着だった。
大体チャンがユウ・ファイを疑い家に侵入したきっかけは息子ションの失踪が原因。
そのションを連れて行ったのはだあれ?
それから写真店主が写すのはパスポートのため。写真を撮ったら旅立っていく。そこにいるお客さんはみなそうなんじゃないかな
写真店のなかでは数日間は数十分にすぎないようでした。笑顔でバイバイされ、ションはそこにいても用事がない。写真店を出て振り返ると・・・。
ホラーだけど、愛情深く後味が暖かいのがなんとも不思議な作品でした。
しっかり反省して買いなおしました
ガキンちょ…じゃなかったショーンが行方不明にならなければ上手くいったのに…
しかしそれでは話にならないのか。この作品を見て思ったことを心のままに
感想を書いてしまうと、即、核心に触れてしまう、何とも感想の書きにくい物語
ではございますが、ただ一つ今言える事は、于輝(ユーファイ)さん、故郷に
帰る時の奥さんの衣装のセンス、あまりよくないと思うよ…。
な~んて言ったら固い物でパカーンと殴られるか、固い棒状の物で
連続殴打されて気絶させられるよ
多分自分ではホラーの文字にビビッて見ようとしなかったかと思いますが、貸していただいて見てみたら多少の怖さはあるけどグロではなく、愛情の物語でした。見て良かったです(^^)/♪
そうなんです。この物語に関してはこれから見る人のために詳しくは書いてはいけないなと思いました。意外性を楽しむ物語ですもんね!
この物語は、悲劇にも思えるしハッピーエンドにも思えるのです。これはきっとピーター・チャン監督が観客に判断をゆだねていて、私達も個人体験や気持ちによって判断が変わってしまうと思います。
話の巧妙さ、45分間で無駄も不足もない物語の運びといい、感想を書くために何度か見たのですが見るたびに新しく感じるところがあり、監督の手腕の冴えた中編映画ですね!
そしてユウ・ファイ(于輝と書くのですね)に固いもので殴られ気絶させられた後・・・針治療してくれるし美味しいおかゆを食べさせてくれるなら結構いいかも♪結構いい人だったですよね(^_-)-☆