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昭和27年締結「行政協定」からみた岸田内閣総理大臣訪米の目的 -台湾有事に参戦させられる自衛隊-

2023-01-06 | 小日向白朗学会 情報
2023年1月3日付け朝日デジタルに『岸田首相、ラジオで「米国の役割果たしてほしい」 早期訪米にも意欲』とする記事が掲載された。
『……
岸田文雄首相は3日の文化放送のラジオ番組で、「今年早いうちに日米同盟の強化、確認のためにも米国に行きたい」と述べ、早期訪米に改めて意欲を示した。日本の防衛力強化について「米国にも理解してもらい、日米同盟に基づいて米国の役割をしっかり果たしてもらいたい」と語り、それぞれの役割をバイデン米大統領と確認し、信頼関係を高める考えを強調した。
 番組は昨年12月19日に収録された。首相は「(バイデン氏に)防衛力強化のありようについてしっかり説明する。日米同盟の抑止力・対処力を高めることにつながるので、米国にもしっかり協力してもらいたい。こうした確認をすることは大事だ」と話した
……』
岸田総理大臣は、第211回国会(常会)が開催される令和5年1月中旬までに、日米同盟(日米安全保障条約)を締結しているアメリカを訪問して、日本周辺の緊張が高まる中で安全保障に付いて会談を行いたいということを述べたものである。
日本とアメリカとの間で締結している安全保障条約は長い歴史がある。昭和26(1951)年9月8日サンフランシスコで講和条約を締結したその日に「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」いわゆる(旧)日米安保条約を締結している。それは次のようなものである。
『……
日本国は,本日連合国との平和条約に署名した。日本国は,武装を解除されているので,平和条約の効力発生の時において固有の自衛権を行使する有効な手段をもたない。……よつて,日本国は平和条約が日本国とアメリカ合衆国の間に効力を生ずるのと同時に効力を生ずべきアメリカ合衆国との安全保障条約を希望する。……これらの権利の行使として,日本国は,その防衛のための暫定措置として,日本国に対する武力攻撃を阻止するため日本国内及びその附近にアメリカ合衆国がその軍隊を維持することを希望する。
……
第一条 平和条約及びこの条約の効力発生と同時に,アメリカ合衆国の陸軍,空軍及び海軍を日本国内及びその附近に配備する権利を,日本国は,許与し,アメリカ合衆国は,これを受諾する。この軍隊は,極東における国際の平和と安全の維持に寄与し,並びに,一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によつて引き起こされた日本国における大規模の内乱及び騒じようを鎮圧するため日本国政府の明示の要請に応じて与えられる援助を含めて,外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄与するために使用することができる。
第二条 第一条に掲げる権利が行使される間は,日本国は,アメリカ合衆国の事前の同意なくして,基地,基地における若しくは基地に関する権利,権力もしくは権能,駐兵若しくは演習の権利又は陸軍,空軍若しくは海軍の通過の権利を第三国に許与しない。
第三条 アメリカ合衆国の軍隊の日本国内及びその附近における配備を規律する条件は,両政府間の行政協定で決定する。
……」
であった。この条約の最も核心部分である日本の防衛のために駐留するアメリカ三軍が日本国内で如何なる条件なのかについて記載がなく、第三条の行政協定で取り決めるとなっている。つまり批准を必要とする条約内には安全保障を遂行する軍隊に関係する事項を記入せず、批准を必要としない協定に入れて軍事のことを伏せている。問題の行政協定には、当時の交渉過程を記録した文書が残されていて、その中に指揮権を秘密裏に決定してゆく様子も残されていた。
『1……
第四章 集団的防衛措置
(一)日本国域内で、敵対行為又は敵対行為の緊迫した危険が生じたときは、日本国地域にある全合衆国軍隊、警察予備隊及び軍事的能力を有する他のすべての日本国の組織は、日本国政府と協議の上合衆国政府によって、指名される最高司令官の統一的指揮の下に置かれる。
……』
ここでいう警察予備隊とは後の自衛隊である。つまり警察予備隊はアメリカ軍の指揮下に入ることになっていた。この条項は、その後、整理されて第24条としてまとめられることになった。
『……
第二十四条
日本区域において敵対行為または敵対行為の急迫した脅威が生じた場合には、日本国政府及び合衆国政府は、日本区域の防衛のため必要な共同措置をとり、かつ安全保障条約第一条の目的を遂行するため直ちに協議しなければならない。
……』
と、アメリカ軍が警察予備隊の指揮権を握ることは記載されずに密約となった。その後、昭和35年に安保条約を締結し、昭和55年に同条約は改定されている。しかし、軍事の核心部分である自衛隊の指揮権はアメリカが掌握したままなのである。また、日米安保を締結した岸信介は、日米安保の本質は「憲法を改正して自衛隊を海外派兵できるようにすること」だと断言していた。
したがって岸田総理大臣がアメリカでバイデン大統領と安全保障に関して会談する際の条件は「自衛隊がアメリカ軍の指揮下に入っている」ということが大前提で、次に「自衛隊が海外派兵できるように努力している」なのだ。
ところで、岸田総理大臣は、行政の長であることは自明である。その中でも自衛隊に関してはこれまた特別な地位を与えられている。それを定めているのは「自衛隊法」である。
『……
(自衛隊の任務)
第三条 自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとする。
2 自衛隊は、前項に規定するもののほか、同項の主たる任務の遂行に支障を生じない限度において、かつ、武力による威嚇又は武力の行使に当たらない範囲において、次に掲げる活動であつて、別に法律で定めるところにより自衛隊が実施することとされるものを行うことを任務とする。
一 我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対応して行う我が国の平和及び安全の確保に資する活動
二 国際連合を中心とした国際平和のための取組への寄与その他の国際協力の推進を通じて我が国を含む国際社会の平和及び安全の維持に資する活動
3 陸上自衛隊は主として陸において、海上自衛隊は主として海において、航空自衛隊は主として空においてそれぞれ行動することを任務とする。
……
第二章 指揮監督
(内閣総理大臣の指揮監督権)
第七条 内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有する
……』
岸田総理大臣が自衛隊の最高指揮権を有しているのだ。つまり自衛隊の最高指揮権を有する岸田内閣総理大臣が訪米して安全保障に付いて会談するということは、日米安保条約で自衛隊の指揮権を握るアメリカ大統領に自衛隊の状況を報告に行くということなのだ。自衛隊の指揮権をアメリカに移譲したのは国内法であることから、行政の長である岸田がアメリカに出かけて「移譲していることを確認する文書」に署名してくる以外にないのだ。岸田総理大臣に限らず歴代自民党総裁で内閣総理大臣になった者も含め流石に日本国内で「移譲していることを確認する文書」に署名することはできないはずで、おのずと訪米ということになる。吉田茂が、講和条約締結したその日に、国防権を売却した方法と同じなのだ。
では、岸田総理大臣は、アメリカの最高指揮官に安全保障問題で如何なる案件を報告しようとしているのか。それを知るには、令和4年9月22日、内閣総理大臣岸田文雄が「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」の開催を決定したことから見えてくる。
令和4年09月30日(17時00分から17時50分)に開催された第一回目の会議には、有識者として上山隆大、翁百合、喜多恒雄、園部毅、黒江哲郎、佐々江賢一郎、中西寛、橋本和仁、山口寿一が、政府側として岸田内閣総理大臣.木原内閣官房副長官〔官房長官代理〕、林外務大臣、鈴木財務大臣、浜田防衛大臣等が出席した。
 冒頭、木原内閣官房副長官より同会議の開催趣旨について説明がった。その要点は次の通りであった。
我が国を取り巻く厳しい安全保障環境を乗り切るためには……自衛隊の装備及び活動を中心とする防衛力の抜本的強化のみならず、自衛隊と民間との共同事業、研究開発、国際的な人道活動等、実質的に我が国の防衛力に資する政府の取組を整理し、これらも含めた総合的な防衛体制』の強化について、検討する必要がある。
……』
次いで、座長の選任が行われ外務省OBの佐々江賢一郎が選出された。続いてこれもまた外務省出身の秋葉剛男国家安全保障局長より「安全保障環境の変化と防衛力強化の必要性」について説明をおこなった。つまり秋葉が提出した資料が、現在の日本が抱える安全保障上の問題箇所だということになる。
『……
  • 国際秩序は深刻な挑戦を受けている。
  • 今回のウクライナへの侵略のような事態は、将来、インド太平洋地域においても発生し得るものであり、我が国が直面する安全保障上の課題は深刻で複雑なもの。
  • ロシアによるウクライナ侵略は.力による一方的な現状変更であり、国際秩序の根幹を揺るがす深刻な課題
  • 中国は、力による一方的な現状変更やその試みを継続し.ロシアとの連携も深化.更に.今般の台湾周辺における威圧的な軍事訓練に見られるように、台湾統一には武力行使の放棄を約束しえない構え
  • 北朝鮮は、弾道ミサイルの発射を繰り返しているほか、核実験の準備を進めているとされており、国際社会への挑発をエスカレート
……』
と、日本が抱える安全保障上の問題点を整理している。
その後、政府側として最初に発言したのが林芳正外務大臣であった。つまり「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」は、外務省の要請により設置した諮問機関であるということになる。したがって「力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」という日本の安全保障を提言する有識会議は、日本政府が今後採用する安全保障に関する方針なのだ。
では日本の安全保障上問題となる国、いわゆる仮想敵国はどこか。この疑問に対して明確に答えている資料がある。それは同有識者会議に内閣官房国家安全保障局が提出した「安全保障環境の変化と防衛力強化の必要性」である。その一部を添付しておいた。
結論から言うと外務省は、日本政府に対してロシア、中国、北朝鮮を仮想敵国とすることを提言しているのだ。そして、台湾有事を導火線に尖閣諸島に日本の安全保障上に大きな影響が生じるという参考資料を事務局が提出している。つまり事務局は、有識者会議が出すべき結論を示しているのだ。いわゆる、出来レースということになる。それはさて置き以下がその回答である。
「……
経済財政運営と改革の基本方針2022 について(抄)〔令和4年6月7日 閣議決定〕
第3章 内外の環境変化への対応
1.国際環境の変化への対応
(1)外交・安全保障の強化 国際社会では、米中競争、国家間競争の時代に本格的に突入する中、ロシアがウクライナを侵略し、国際秩序 の根幹を揺るがすとともに、インド太平洋地域においても、力による一方的な現状変更やその試みが生じており、安全保障環境は一層厳しさを増していることから、外交・安全保障双方の大幅な強化が求められている。(略) また、NATO諸国においては、国防予算を対GDP比2%以上とする基準を満たすという誓約へのコミットメントを果たすための努力を加速することと防衛力強化について改めて合意がなされた(注)。(略)
また、前述の情勢認識を踏まえ、新たな国家安全保障戦略等の検討を加速し、国家安全保障の最終的な担保となる防衛力を5年以内に抜本的に強化する。(略)
本年末に改定する「国家安全保障戦略」及び「防衛計画の大綱」を踏まえて策定される新たな「中期防衛力整 備計画」の初年度に当たる令和5年度予算については、同計画に係る議論を経て結論を得る必要があることから予算編成過程において検討し、必要な措置を講ずる。
(注)NATO諸国の中でG7メンバーでもあるドイツは、国防予算を対GDP比2%とすることを表明し、そのために憲法に相当する基本法を改正し、 新規借入によって1,000 億ユーロの特別基金を設立しつつ、その償還方法については別途法律で定めることとしている。

令和5年度の予算の全体像(抄)〔2022年7月29日 経済財政諮問会議〕 
2.令和5年度予算編成に向けて 
新たな「中期防衛力整備計画」の初年度に係る施策、(略)については、予算編成過程において検討する。(略) このため、骨太方針2022に基づき、別紙の取組を進める。 (別紙)2.重点分野への投資促進等 l
・科学技術イノベーションと防衛費:スタートアップ含め国内防衛生産・技術基盤の維持・強化、CSTI等との連携強化、デュ アル・ユース技術の活用など

平成31年度以降に係る防衛計画の大綱について(抄)〔平成30年12月18日 国家安全保障会議決定・閣議決定〕
1 Ⅲ 我が国の防衛の基本方針
1.我が国自身の防衛体制の強化
(1)総合的な防衛体制の構築 これまでに直面したことのない安全保障環境の現実に正面から向き合い、防衛の目標を確実に達成するため、あらゆる段階において、 防衛省・自衛隊のみならず、政府一体となった取組及び地方公共団体、民間団体等との協力を可能とし、我が国が持てる力を総 合する防衛体制を構築する。特に、宇宙、サイバー、電磁波、海洋、科学技術といった分野における取組及び協力を加速するほか、 宇宙、サイバー等の分野の国際的な規範の形成に係る取組を推進する。
我が国が有するあらゆる政策手段を体系的に組み合わせること等を通じ、平素からの戦略的なコミュニケーションを含む取組を強化する。(略)
また、国民の生命・身体・財産を守る観点から、各種災害への対応及び国民の保護のための体制を引き続き強化し、地方公共団 体と連携して避難施設の確保に取り組むとともに、緊急事態における在外邦人等の迅速な退避及び安全の確保のために万全の 態勢を整える。
さらに、電力、通信といった国民生活に重要なインフラや、サイバー空間を守るための施策を進める。
……』
有識者会議が提案すべき防衛予算の捻出の仕方まで懇切丁寧に模範解答を示しているのだ。そして令和4年11月22日、「岸田総理は、総理大臣官邸で国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議の佐々江賢一郎座長から報告書を受け取りました」となったのだ。
その結果、令和4年12月から防衛費の大幅増額が急浮上することとなった。それもこれも、すべて「自衛隊の最高指揮官であり行政の長である内閣総理大臣岸田文雄」が渡米して、日米安保条約の定めに従い極東の有事に対応できる軍備拡張を計画し実行していて、予算も確保したこと、「自衛隊指揮権を移譲していることを確認する文書」に署名するためなのである。以上のような現地司令官からの状況報告を受けたアメリカは、自衛隊を海外派兵して台湾有事に活用する道が開かれることになるのだ。

ではアメリカが思い描く台湾有事と自衛隊の関係を思い描いてみる。
台湾有事の場合に、日本は台湾有事に尖閣諸島に自国領防衛という名目で海岸堡を構築することで台湾に侵攻する中国軍を側面から脅かす布陣となって台湾正面に対する圧力を軽減させるであろう。併せてバシー海峡にアメリカ海軍が布陣することで台湾の太平洋側に中国軍は回り込むことができなくする。これに対して中国軍は「祖国統一」を旗印に尖閣諸島に対する侵攻を決意して外洋への出口を探ることになる。つまり、尖閣諸島で日本は「祖国防衛」、中国は「祖国統一」でぶつかりあうことになる。

帝国憲法には第11条で陸海軍の指揮権が、第13条には開戦と講和についての検眼が明記されていた。しかし、現行憲法は、開戦も講和も何ら規定されていない。それは日本国憲法前文に戦争放棄を謳っているため戦争に関係する条文は存在しないことから日本から戦争を開始することはない。さらに、日本は陸海空自衛隊の指揮権をアメリカに譲渡していることからアメリカ軍の都合で開戦が決定してしまうのだ。
全く持って馬鹿げた話である。
そもそも尖閣諸島の領有を蒋介石に勧めたのが岸信介である。その話に応じた蒋介石が尖閣諸島の領有を宣言し、周辺の海域の石油採掘権をガルフ石油に売却した。その後のガルフ石油は日本政府に石油開発を諦めることを約束したが、当の台湾は尖閣諸島を自国領と宣言したことをいまだもって取り消していない。これは巧妙の罠である。
つまり、中国は、台湾に侵攻した場合に尖閣諸島も攻略する必要がある。そのため中国は、台湾に侵攻を決意した場合に日本との開戦となることを覚悟する必要がある。つまり台湾は、中国が台湾に侵攻することを躊躇させる抑止材料として尖閣諸島問題を利用しているのだ。(寄稿:近藤雄三)

以上


 
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