インドラネット

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昔の人は賢く、偉かった

2018-10-19 22:39:39 | 日記

今日読んだ資料に

「郷土の先輩」(S54)というのがあって

この中に徳之島が生んだ偉大な教育家

龍野 定一先生の生い立ちを

ご自分で書かれたものがありました。

途中、龍野先生を育てた両親の言葉に感動を覚えましたので、

このブログに転載させていただきたいと思います。

 

その前に、ちょっとだけ先生を紹介しておきます。

龍野先生は、

明治22年生まれ。

「厳訓無処罰」といって

難しいが、シンプルな教育方針で

次々と、日本の各地で崩壊しかけていた学校を建て直していった方です。

学生(旧制中学)たちが

「放火事件」、「傷害事件」、その他いろいろな事件を起こしても

決して退学や犯罪扱いといった処分はしませんでした。

教師とは、

「生徒が間違ったことをしたとき、正しい道に導くことこそがその使命である」

といって、

問題を起こした生徒を校長自ら(龍野先生は30過ぎから既に校長を任されていた)

直接、指導にあたりました。

 

あるときは、問題を起こした生徒を何ヶ月も校長室に預かり、

勉強を見、物事の善し悪しについて教えました。

また、あるときは喧嘩をして

ナイフによる傷害事件を起こした生徒に

被害者、加害者両方の親を説得して、

怪我を負って入院した子の面倒を見させます。

病院に寝泊りさせて、苦しむ被害者の世話をさせるのです。

もちろん龍野先生も一緒に病院に泊まります。

その中で、自分が犯した罪がどんなものかを自覚させ、

深い反省を促すのです。

この二人の場合、その後、無二の親友になり、

また、険悪だった両家は、大変親密な間柄になって、その付き合いは長く続いたといいます。

このようにして、1件1件の問題をつぶしていくのです。

一方で、学校の中に生徒会組織を立ち上げさせて、

学校の運営を生徒に任せます。

「学校は生徒のためにある」

という信念のもと、教師は常にそのフォローにあたります。

 

龍野先生が書かれた本は『話せば子供はわかる』など数冊ありますので、

教育に興味のある方は、ぜひ図書館などで読んで見てください。

「目からうろこが落ちる」かもしれません。

 

さて、先生の両親の言葉です。

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四、父の教えの思い出二つ三つ

(1)仲よく団結する

   私の母かねの父安田佐和応は、学問は委しく、私もいろいろ教えていただきましたが、父前定の父、龍禎用喜(リュウ テイヨキ)は鉄砲や弓のことに委しく、私たちが子供のときまで大富里(ウフザト・屋敷名)の家の居間の大床には、朱塗りの鉄砲掛けに五つの鉄砲が飾られてありました。

   それで私は、父から鉄砲や猪狩りの話をいろいろ聞かされましたが、ある時の話に

 「昔の火薬は煙硝といって、硫黄と硝石と木炭の三つを混ぜて作るものであった。硫黄も硝石も木炭もすべて火をつけて燃やすと、くすぶって燃えるぐらいのもので爆発などする力は無いのである。その三つを混ぜ合わせて一つにすると恐ろしい爆発力のある火薬にもなる。人間の働きも同じである。硫黄や硝石や木炭のように平凡な力の持ち主であって、特に秀ぐれた力はない人間でも、三人、五人と多人数が心を合わせ、力を合わせて働くと非常に優れた大きな力を発揮し、一人ではとても出来ない立派な仕事がなされるものである。

   それで世の中に出て大きな立派な仕事をするには、兄弟はもちろん多くの友人と争わず、みな仲よく心を合わせ、力を合わせて働くように心がけ、努めなければならない。それでこそ平和な幸せな世の中は出来上がるのである。

   昔は、冬になって猪狩りを始めるとき、徳之島全島三間切(マギリ・行政区画のこと)の有力者が集まって、親睦の宴会をするのが例であった。その時、鉄砲はもちろん、狩り犬などの品評会みたようなもので龍野の家がその中心であった。前評判がいろいろあったある年の集まりに、祖父禎用喜は、自分の家で生ませて育てた四頭の兄弟犬だけを犬ひきの男にひかせて行ったが、隣村のある金持ちが、全島から買い集めた大きな犬ばかり十六匹連れてきた。龍野の犬は兄弟犬だから大きなものもおれば小さなものもいたので、その晩の主人たちの宴会中に十六匹の犬ひきの男たちが度々龍野の犬にけしかけるので、龍野の犬ひきは困ってしまい、これを避けて争わせまいとすると余計にけしかけてきて避けようがなくなってしまったのである。そこで龍野の犬ひきが祖父にそのことを申し上げると、『かまわないからけんかをさせてみよ』と言われたので、安心して喧嘩に都合の良い広い場所で休んでいたところ、隣の犬ひき男がまた十六匹を連れてけしかけたら、龍野の犬ひきが犬を放ったので、大げんかになり、龍野の犬が隣の犬をかみ倒しておさえたが、小さな二匹は隣の大犬にかみ伏せられた。すると二匹の大犬がこれを見て自分でかみ伏せた犬を捨てて隣の大犬にかみつき、それをかみ伏せて二匹の子犬を救い、また隣の犬をかみ伏せ、助け合って戦ったので、そのうちに隣の大犬の一匹が泣いて逃げ出したところ、他の犬もみな逃げてしまった」

という話をして、

「犬でも兄弟の情があって、団結すると小数でも強くなって勝つ。烏合の衆は多くても大きくても、愛情が無く、団結しないから弱いものだ。」

と、昔から歴史話をして聞かされました。私たちが貧しくても、りっぱな仕事をするには、資金よりも人間であることを知り、兄弟だけではなく、友人たちとも仲よく協力し、団結して働くことの大切なことを知ったのは、父に教えられたのであります。

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長くなるので、今日はここまで。

こんなことを息子に話せる父親って、かっこいいですね。