油圧機器大手「KYB」による免震・制振装置の検査データ改ざん問題は、対象物件が47都道府県で1千件に上る。
KYBという聞きなれない会社だが、萱場工業(カヤバ工業)のことだ。さまざまな油圧機器を製造販売している会社だ。
どうして、こうも、次から次へと、企業のデータ改ざんが起こるのだろう。
私は、前職で、自動車産業の調査担当をしていた。当時は、日本の自動車産業は、品質もよく、燃費や排ガス基準で素晴らしい成果を上げ、世界中に輸出が伸びていた時期だ。
お蔭で貿易摩擦が生じ、欧米へと工場進出を進めていた。
自動車に限らず、日本の製造業は、ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われ、それに従事する人も企業も、「誇らしげ」であった。
自動車メーカーなどからの「乾いたぞうきんをさらに絞る」と言われるコスト的に厳しい要求も、技術革新や工場の効率化を進めることで要求以上にクリアし、ちゃんと儲けてもいた。
自動車メーカーも部品メーカーも、どうしちゃったんだろう!
昔は、データ改ざんなどをしなかったのだろうか。していても、会社のため、やはり隠していたのだろうか。
最近では、罪を公にし、それを改善していくことが評価される傾向にあるので、次々と事件になっているだけなのだろうか。
それにしても、自動車や鉄道であれば、人の命に直結するし、今回のビルの、免震・制震装置であれば、地震などがあったおり、多くの人々に多大な影響を及ぼす。社員一人ひとりがそうした「想像力」に欠けていたのだろうか。
いろいろな批判や問題点はあるが、日本的な終身雇用の時代には、一社員でも、まるで社長であるかのように企業のことを思い、企業をより良くすることを考えていたし、悪いことは、自分のことのように、恥ずかしいことだと思い、直そうとしていたような気がする。働く人が、自分の製品に愛着を持たなくなれば、製品が作られるどこかの過程に不具合があっても、それを自分ごととしては、考えないだろう。
当時、日米の製造業を比較し、アメリカでは、設計する人、製造工程で作る人と検査する人などが、皆、立場も、役割も違うので、日本では、たとえば、目の前の機械に不具合があれば、すぐに自分で直す、あるいは、修理するよう手配するのに、アメリカでは、製品が出来上がってから検査して、不具合を見つけるので、不良品がやまほど出来てしまうと聞いたことがある。グローバル化するなかで、日本企業も役割が細分化し、設計は自分のことではないし、検査は自分のことではないし・・というようになってしまっているのだろうか。
もともと人種も学歴も多様な国では、違うことを前提にマニュアルが整備され、事故を未然に防ぐ方法が作られてきたのだが、日本では、誰でも同質だと思い、これまで一体的に仕事をしてきたので、多様化する社会のなかでのやり方が追い付いていないのだろうか。
落語で、魚やが与太郎に店番を頼み、「ネコを見張って居ろと言ったら、ネコが魚をくわえていくのを見ていた」という話がある。職場に外国人が増えているというようなことだけでなく、世代間の価値感の違いや、職種の違いが鮮明化しているかもしれないなかで、言葉やあうんの呼吸が通じなくなっているのかもしれない。グローバル化が外に出て行くことだけでなく、そうした内なるグローバル化も進むなか、もしかしたら、企業だけでなく、社会全体で、多様化・分断化への対応を迫られているのかもしれない。
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