まちおもい帖2

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世田谷区の住民参加についての覚書

2016-12-20 11:50:25 | 日記

世田谷区は、かなり以前から公園のありようを住民参加で考え、住民が公園の管理をするなど、「住民参加」が盛んなように思えていた。

数年前に「公共空間のデザイン」というテーマでイベントを実施したおり、「一般社団法人世田谷トラストまちづくり」の浅海さんに基調講演をしていただいたこともある。

どうして、こんな仕組みが出来ているのか、今更ながら不思議に思って、いろいろ調べてみた。

まず、早稲田の卯月教授に、お話を聞きに行った。卯月先生は、以前、世田谷トラストまちづくりの前身である「世田谷まちづくりセンター」の所長を勤められていたことがあるからだ。

知らなかったのだが、卯月先生によると、東京23区の区長は、戦後は、東京都の一部とされ、公選制ではなかったとのこと。調べてみると、1974年(昭和49年)に地方自治法が改正されて1975年(昭和50年)から区長公選制が復活したとある。

公選制になってはじめて、それぞれの区長は、隣の区とはことなる施策を打ち出すことになった。

卯月先生によると、1963年、67年、71年の統一地方選挙で、全国に革新系首長が当選し、美濃部都知事(任期:1967年4月~1974年4月)、飛鳥田横浜市長他があえて選挙公約で使用した言葉が「まちづくり」であったという。

それまでは、国が定める国土計画や国中心の都市計画、都市開発であったが、そうではなく、地域独自の計画や環境を主体に、地域が自ら進める都市づくりや地域主権主義をたからかに訴えた。表は、卯月先生による。

また、まちづくりに参加できる住民の定義が、土地や建物を有している住民だけでなく、地域に在住、在勤、在学する住民全てに参加する権利を認めた。   

また、居住者によって構成される「まちづくり協議会には、自治体に対してまちづくり計画を「提案する権利」を認めた。
(出所)卯月盛夫「住民参加とまちづくり」『アカデミア』vol.101

世田谷区では、大場啓二区長が1975年4月に当選し(2003年4月まで)、まちの憲法ともいえる「基本構想」「基本計画」を作った。それにあたっては、学者などのブレーンを集め、①区政の自主権機能の拡充と②住民参加を打ち出した。

注目すべきは、住民参加を謳いながらも、「まちづくりの主人公である区民は、同時に区民の意図するまちを自主的につくりだす権利と責任がある」と、「権利」とともに「責任」を明記していることだ。
(出所)『世田谷区基本計画 昭和54年~63年』の巻頭「福祉社会をめざすヒューマン都市実現のために」

簡単に言うと、住民は、「権利」があるので、自分の住むまちをこのように変えたいと意見を言うことは可能であるが、Aさんが言うことと、Bさんが言うことは違っていることもある。しかし、「責任」もあるのであって、Aさん、Bさん、Cさん・・の意見を「まちづくり協議会」で話し合って取りまとめて下さい。そうなったうえで、提案してくるのであれば、行政は、それに対応しますということらしい。

しかし、Aさん、Bさん・・・の意見をまとめるのは、そう簡単ではない。時には、土木や法律などの専門的な知識も必要になる。そのために、ワークショップなど意見を取りまとめ支援をするために「世田谷まちづくりセンター」がつくられ、また、行政から、専門家の派遣も行うという仕組みを作っていったのだという。

ここで、明確なのは;

1.市長の公選制と相まって、世田谷区が「住民参加」でまちづくりをすると謳ったこと。

2.そのために、住民の「権利」と「責任」を明記したこと。

3.それを実行性あるものにするために、「世田谷まちづくりセンター」をつくり、住民参加の手法を模索・構築していったこと。

しかしながら、先生のお話をうかがっただけなので、方向性のようなものは理解できたが、年代的なことがあいまいなので、再度ネット検索をしたところ、原さんという方の「世田谷まちづくり」に関する論文を見つけた。

次には、この論文を読みながら、流れを整理してみたい。

なお、卯月先生は、1982年に、世田谷区に入庁し、都市デザイン室の主任研究員、のちに世田谷まちづくりセンター所長となる。この都市デザイン研究室も、世田谷区が「緑の多い良い住宅地」であり、その景観、デザイン、文化を重視していこうという方向性のなかから設置されたとのこと。

また、1992年4月にまちづくりセンターが、同年12月のまちづくりファンドがつくられた。ファンドは、行政、区民、企業の寄付によって3億円くらいあつめようと意図したが、結果的には、1億円ちょっとしか集まらなかった。区民が実行するまちづくりに5万~10万円出して、意見すりあわせのために他地域の先進事例の勉強をしたり、小さく行動に移すためのお金として使われる。

 


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