オペラ「サルタン王物語」を観に行ってきました。(2005年6月12日・東京二期会会館第一スタジオ〔千駄ヶ谷〕)
二期会ロシア・東欧オペラ研究会第4回定期演奏会として上演されたもので、どちらかというと「研究発表」のようなものでした。
オペラは抜粋、ピアノ伴奏。舞台装置も衣装もあり合わせのもので取り繕った(失礼)ようでしたが、それにもかかわらず非常に面白いものでした。実際、オペラにこのような楽しみ方があるとは新しい発見でしたね。劇場でフルオケの演奏、豪華な舞台装置で観るのもいいですが、こうした公演形式がもっと広まってもいいのではないでしょうか。
では、どんな点が良かったのかを列記してみます。
まず、抜粋形式であったこと。
要は「おいしいとこ取り」ですから、退屈な部分を我慢して聴く必要がありません。特に《サルタン》もそうですが、ロシア民話ってどうでもいいようなことを繰り返し延々と述べるような特徴があって、正直かったるいところがあるのですが、そういう箇所は全部カット。魔法をかけられていた島の住民がグヴィドン王子をたたえる素晴らしい合唱までもがカットされたのは、無い物ねだりであきらめるほかありませんが、しかし結果として全体が引き締まって、聴く方も集中力がとぎれずに鑑賞できたように思います。
次に各場面のはじめに解説があったこと。
今回の公演には、ロシア文学研究の早稲田大学伊東一郎先生が言語指導などで関わっておられたようで、解説も先生がされていました。
このそれぞれの演奏直前の解説が効果覿面で、これから聴く場面がどのような内容なのかをあらかじめ知ることができて、非常に参考になりました。
オペラのあらすじはあらかた知っているつもりでしたが、冒頭の3人姉妹の歌の歌詞が、有名な民謡「一週間」に基づくものであるということを、私は先生のお話で初めて知りました。こんな「発見」ができたのもこのような上演ならではの収穫です。
最後に、演奏をとても近くで聴けたこと。
会場は二期会のスタジオで、要は練習場みたいなところでそれほど広いところではありませんでしたが、これがかえって演奏者を間近で聴くことになり、普段ではできない貴重な体験となりました。オペラ歌手の声量に改めて驚かされるとともに、特に指揮者も体力勝負であるということを実感させられました。というのも、私は指揮者のすぐ右隣で聴いていたのですが、彼はここぞという時に全身力がみなぎって、ぐもももと床を踏ん張るのが、ダイレクトに伝わってくるのですね。
私もCDなんかを聴いているときに手をひらひらさせて指揮のマネをしたりしてしまいますが、指揮はそんな甘っちょろいものではなくて、やっぱり腕立て伏せに腹筋かと。楽器にしろ、指揮にしろ、結局は運動神経と体力 。ドン臭い私には無縁ですが、音楽ってスポーツそのものなんですね。
歌手のみなさん良かったですが、特に印象的だったのは「意地悪3人組」。二人の姉が冒頭で歌うメロディーは、《サトコ》や《皇帝の花嫁》で歌われる合唱の節回しに良く似ていて、リムスキーのオペラでは馴染みの旋律ですが、お二人は楽しそうにいかにも「さあ、おとぎ話が始まりますよ」という雰囲気で歌われていて非常に良かったです。あとで婆さん共々蜂に刺されてさんざんな目に合いますが、憎めない悪役どころとしての演技も上々でした。
3人組のもう1人は「意地悪婆さん」ことババリーハ役は筧聡子さん。私は1994年に、彼女がリムスキー=コルサコフ生誕150周年記念の歌曲コンサートを開催したのを聴きに行ったことがあったのですが、その時の凛々しいお姿と、今回の役とのギャップがありすぎて、ちょっとびっくりしてしまいました。でも意地悪っぷりも堂に入っていて、結構ステキ?でしたよ(?)
今回の公演の企画者でもある大御所岸本力さんは、出番が少な目でちょっと残念でしたが、コミカルな演技が絶品。間抜けっぽい王様の表情は私の抱いていた岸本像とは完全に別物 。あの「予言者」(リムスキーの歌曲)をクールに次第に熱く歌い上げていた人物とは同じとはとても思えません。
グヴィドン王子と白鳥の王女の二重唱はCDなんかで聴いているとそうでもありませんが、やはりナマで観ると感情移入の度合いが全然違ってきます。ちょっと泣けてきましたね、ここの部分。
有名な「熊蜂の飛行」は、もちろんピアノでの演奏でしたが、グヴィドン王子役が棒につけた蜂のぬいぐるみを持ってぶんぶん走り回るという、単純な演出ではありますが、会場の笑いを誘っていました。
ともあれ、この公演が今回限りで終わってしまうとすれば、とてももったいない感じがしました。ぜひとも全曲公演につなげていただきたいものです。
二期会ロシア・東欧オペラ研究会第4回定期演奏会として上演されたもので、どちらかというと「研究発表」のようなものでした。
オペラは抜粋、ピアノ伴奏。舞台装置も衣装もあり合わせのもので取り繕った(失礼)ようでしたが、それにもかかわらず非常に面白いものでした。実際、オペラにこのような楽しみ方があるとは新しい発見でしたね。劇場でフルオケの演奏、豪華な舞台装置で観るのもいいですが、こうした公演形式がもっと広まってもいいのではないでしょうか。
では、どんな点が良かったのかを列記してみます。
まず、抜粋形式であったこと。
要は「おいしいとこ取り」ですから、退屈な部分を我慢して聴く必要がありません。特に《サルタン》もそうですが、ロシア民話ってどうでもいいようなことを繰り返し延々と述べるような特徴があって、正直かったるいところがあるのですが、そういう箇所は全部カット。魔法をかけられていた島の住民がグヴィドン王子をたたえる素晴らしい合唱までもがカットされたのは、無い物ねだりであきらめるほかありませんが、しかし結果として全体が引き締まって、聴く方も集中力がとぎれずに鑑賞できたように思います。
次に各場面のはじめに解説があったこと。
今回の公演には、ロシア文学研究の早稲田大学伊東一郎先生が言語指導などで関わっておられたようで、解説も先生がされていました。
このそれぞれの演奏直前の解説が効果覿面で、これから聴く場面がどのような内容なのかをあらかじめ知ることができて、非常に参考になりました。
オペラのあらすじはあらかた知っているつもりでしたが、冒頭の3人姉妹の歌の歌詞が、有名な民謡「一週間」に基づくものであるということを、私は先生のお話で初めて知りました。こんな「発見」ができたのもこのような上演ならではの収穫です。
最後に、演奏をとても近くで聴けたこと。
会場は二期会のスタジオで、要は練習場みたいなところでそれほど広いところではありませんでしたが、これがかえって演奏者を間近で聴くことになり、普段ではできない貴重な体験となりました。オペラ歌手の声量に改めて驚かされるとともに、特に指揮者も体力勝負であるということを実感させられました。というのも、私は指揮者のすぐ右隣で聴いていたのですが、彼はここぞという時に全身力がみなぎって、ぐもももと床を踏ん張るのが、ダイレクトに伝わってくるのですね。
私もCDなんかを聴いているときに手をひらひらさせて指揮のマネをしたりしてしまいますが、指揮はそんな甘っちょろいものではなくて、やっぱり腕立て伏せに腹筋かと。楽器にしろ、指揮にしろ、結局は運動神経と体力 。ドン臭い私には無縁ですが、音楽ってスポーツそのものなんですね。
歌手のみなさん良かったですが、特に印象的だったのは「意地悪3人組」。二人の姉が冒頭で歌うメロディーは、《サトコ》や《皇帝の花嫁》で歌われる合唱の節回しに良く似ていて、リムスキーのオペラでは馴染みの旋律ですが、お二人は楽しそうにいかにも「さあ、おとぎ話が始まりますよ」という雰囲気で歌われていて非常に良かったです。あとで婆さん共々蜂に刺されてさんざんな目に合いますが、憎めない悪役どころとしての演技も上々でした。
3人組のもう1人は「意地悪婆さん」ことババリーハ役は筧聡子さん。私は1994年に、彼女がリムスキー=コルサコフ生誕150周年記念の歌曲コンサートを開催したのを聴きに行ったことがあったのですが、その時の凛々しいお姿と、今回の役とのギャップがありすぎて、ちょっとびっくりしてしまいました。でも意地悪っぷりも堂に入っていて、結構ステキ?でしたよ(?)
今回の公演の企画者でもある大御所岸本力さんは、出番が少な目でちょっと残念でしたが、コミカルな演技が絶品。間抜けっぽい王様の表情は私の抱いていた岸本像とは完全に別物 。あの「予言者」(リムスキーの歌曲)をクールに次第に熱く歌い上げていた人物とは同じとはとても思えません。
グヴィドン王子と白鳥の王女の二重唱はCDなんかで聴いているとそうでもありませんが、やはりナマで観ると感情移入の度合いが全然違ってきます。ちょっと泣けてきましたね、ここの部分。
有名な「熊蜂の飛行」は、もちろんピアノでの演奏でしたが、グヴィドン王子役が棒につけた蜂のぬいぐるみを持ってぶんぶん走り回るという、単純な演出ではありますが、会場の笑いを誘っていました。
ともあれ、この公演が今回限りで終わってしまうとすれば、とてももったいない感じがしました。ぜひとも全曲公演につなげていただきたいものです。