今月もトラブルがあり、まったくアクアスクータは油断のならない道具だと思い知らされた。
今回は長くなってしまうので、2回に分けることにし、作業内容を忘れないうちに早めに投稿することとした。本稿の続きと八丈島遠征・その他は、7月末を目標に投稿したい。
1、遠征先で始動不良=キャブレタの塩詰まり
Blog 第22回に記したように、6月の八丈島で排気ホースの接続部からAS650型に浸水してしまった。浸水は少量で、始動ロープを引くことが出来たため、上陸してプラグを外してみるまで本当に浸水なのか判らなかった。しかしその場で水抜きをし、内部をガソリン洗浄してそのまま数日に亘って使用することが出来た。これは通常の処理方法だ。
遠征終了時には内部にオイルを注入して現地に残置し、2週間後の再遠征時にも問題なく使用できた。そこで今回の水没の影響は全く無くなったと考え、再びオイルを注入して現地に残置した。
さて、更に2週間経ってまた遠征し、そのまま使おうとしたが・・・・エンジンが不調で初日は使えなかった。
症状としては、始動はするが、数秒でエンストしてしまう。1~2分後にはまた始動するのだが、やはりエンストする。暫く回転を維持することもあるが、繰返し始動しようとすると反応しなくなる。また試してみると同じ現象が起きるというもの。
プラグはきれいだが、それは燃料が充分送られてないことの証左だと見当を付けた。
そこで燃料系統の点検で、タンク内のフィルタ=つまり燃料吸込口が液面よりはみ出していないか、燃料コックが詰まっていないかなどと点検するも、異常なし。
仕方なくタンクを取り外し、キャブの点検をした。
流量調整膜を見ると正常な形状を保っており、問題ない。

キャブの混合気通路と吸気ポート(インテークマニフォルド)にも大量の塩などは付着しておらずきれいだ。


あれれ、キャブはOKだったのかとそのままキャブを取付始めたが、待てよ・・・・と、再度取外し、普通はトラブルが無いので気にしていなかったポンプ膜を念のために見ると、膜ではなくアルミ表面が異常に汚れているのが解る。慌ててガスケットとポンプ膜を取除いた状態が次の写真:

全体に汚い状態で、周りから海水が滲込んで塩が析出した部分もある。こんな状態になるまで多分半年以上点検していなかったと大いに反省した。
特に黒く変色して汚れのひどいのは、クランク室の脈動圧をキャブへ導く入口付近で、1の孔に塩が析出して通路を塞いでいた。
2の穴はめくら穴なので、塩がしっかり詰まっていたが一応機能には無関係と思われる。この穴は同じHDAシリーズキャブレタの、別の品番のキャブの為の物かもしれない。それとも、蓋の側に設けられた空間が脈動の蓄圧部の働きをし、その一部なのだろうか。私には理解できない構造だ。
この時点で、今回の「始動はするがすぐエンストする」症状の原因はこの塩の詰まりがポンプの駆動を妨げていることだと断定し、それ以上いじるのはやめて、キャブを持参の予備品に交換することとした。
ポンプの機能が低下し、燃料は僅かづつ上部燃料溜まりに送られるだけになってしまっている。そのため始動はするが、補給が追い付かず、すぐエンストする訳だ。
整備済みキャブのポンプ部アルミ表面はこのようにきれいな状態だ

キャブ交換、赤茶色に見える部分は、ガスケット自作のため型を取った朱が付着している。

キャブ交換後は水密テストをすべきだが、漏れやすいエルボはエアタンク側のみ取外したので、その部分にボンドSUを塗り、他にはシリコングリスを塗って済ませた。
一応これで調子は戻り、2日目からは正常に使うことが出来た。この脈動圧伝達部分の塩詰まりによる不具合と言うのは初めての経験だった。
2、持帰ってのキャブ点検修理
次の写真では、脈動圧は吸気ポートに接する1から2へ伝わり、3の溝形空間(蓄圧部?)を通り内部へ導かれるが、その肝心の2の孔が塩で塞がりかけていた。その元になる海水は、ガスケットの隙間から浸み込んだ可能性も否定は出来ないが、普通に考えればクランク室から来たわけで、更に途中の通路にも塩が析出しているかもしれないと心配した。しかし遠征先では魚突き優先でそこまで点検などしてられない。そのまま数日間快調に使い、今回は本機を持ち帰って整備した。なお、4は上に触れたように、3につながるめくら穴で、機能は不明。

このような塩の析出や汚れを見ると、やはり一旦水没したら、内部を徹底的に清掃した方が良さそうだ。また、海上では浸水せずとも、少量の塩分は常にスノーケルから吸込まれている筈だから、内部の点検も適度に必要と思われる。
また、汚れが内部に溜まらぬよう、間を置かずに=毎週?= ある程度運転した方が良いとも思われる。このことは、本ブログ第19回で、離島の仲間の使用法として紹介した通りだ。
本機は常に持帰り、手入れを怠らぬようすべきだと、またも思い知らされた。
キャブの修理
内部をよく見るとベンチュリ部にも少し塩が析出していたため、ニードルバルブ、バタフライバルブ軸などを外して清掃した。流水で洗い、パーツクリーナを吹付け、グリスアップなど済ませた。ポンプ部のキャブボディ表面は、下の写真程度に水ペーパーで磨き、ポンプ膜は勿論新替した。

チョークバルブ軸の動きが固かったが、これもグリスを詰替えた。この部分は使用頻度にもよるが、1年も使うとグリスが固まったり流失したりしてしまうようだ。水に漬けると滑らかに動く事が多いが、鋼球をバネで押し付けて節度を持たせているので、基本はグリス交換が必要だ。重要部分ではないが、一応気を配っている。
なお、浸水して固くなったアクセル軸を直すComer社サービスセンタのビデオを以前紹介した:
https://www.youtube.com/watch?v=PXl1obytAX4
折角アクセル軸からバタフライを外し、清掃・注油したのだから、ついでにチョークバルブ軸のグリス交換もしたら良さそうなものだと、このビデオを見ながら思ってしまう。
以上の様に、難しい整備はせずにキャブの整備は完成したものとして、これを今度は予備キャブレタとして遠征に携帯することになる。
泊りがけの遠征にはこのように、予備部品と必要な工具を必ず用意している。
本機と共に携帯すべき工具をしつっこく繰返し紹介してきたが、何はさて置きL/H調整ネジ回しは必ず本機に取付けてある。プラグレンチは、入水前に必要になることも多く、これも本体に(私の場合は取っ手に)取付けて絶対に持って行く。点火プラグは安心料とも言えるが、これらは謂わば三種の神器と言うべきか。
3、本機のオーバーホール=恐怖の残滓
このようにキャブの塩詰まりを経験して、改めてエンジン内部が気になってきた。またBlog第21回で紹介した、仲間のスーパーマグナム・プロペラシールからの浸水も気になって、分解整備をすることにした。今回のアクアスクータは、途中まで分解したことは有るが、ベアリング、シール類を交換したのは多分09年の購入以来初めてだ。
内部はきれいだと初めだけは安心したものの、分解が進むにつれて重大なトラブルが判明した。
通常通りタンクを外し、キャブレタ周りを取外す。スタータ部を外したら、フライホイルプラーを使ってフライホイルを外す。ここまでは何も異常はない。
高圧部には、点火タイミング合せ用に、初めからCDIユニットの止めネジ位置にマークが付けてあるが、更に印を付けた上で取外した。

クランク室はトラブル時の処置が効いたらしく、きれいで保存用に滴下したオイル?が排出されずに僅かに残っていた。

ピストンが露出すると、スカートに擦れ痕があり、嫌な予感がした。

ピストンの反対側をみてびっくりしたが、縦傷が走っており、もう駄目かと観念した。焼付し掛かった可能性が大だが、縦傷はひどく深くはないし、ピストンリングもシリンダ内壁もきれい、何より予備品が無いので今回はそのまま再装着しようと考えた。

ピストンが首を振っているらしいが、触った感じでは特にがたがたする感じではない。小端部ベアリングの予備も無いので、やはりこのまま再利用しようと思った

しかし仲間の強い勧めでピストンピンを抜き、小端部ベアリングを見ると驚いたことに、ベアリングの縁が割れているではないか。この事とピストンスカートの傷との間に因果関係があるのかもしれない。

ピストンピンの表面もかなり荒れている。

交換用のベアリング(10x14x10) は仲間が融通してくれるというので安心し、このベアリングを、コネクティングロッドから外そうと、レンチソケットと万力を使って押出した。
だが、作業は失敗・・・・受けに使ったソケットが小さすぎて、押出したベアリングケースがソケットに圧入された状態になってしまった。
仕方なくまたしても反対側からドライバで叩いたところ、縁が割れるが取り出せない。

結局鏨で叩き壊して取り出した。それでも、なんとかベアリングケースの状態は観察できた。

縁のひび、欠けにまで至ったとは、ひどい油切れだったのだろうか。こんな状態を見ると、乾燥目的で空回して温度を上げたり、燃料を止めて停止するのはやめるべきかと感じる。燃料が止まれば潤滑油も無くなるから、このベアリングには厳しいことになる。
チョークバルブを閉じて、濃い混合気で失火させて停止する方法は、未燃潤滑油が残ってこのピストンベアリングには良いのかもしれない。ただ、今まではプラグ被りの原因になりかねないとして私は好まなかったのだが。


こちらは取外した、クランクシャフト後側、つまりプロペラ側のベアリングやシールなど

メインベアリングは再使用可能な状態だった。オイルシールはどうせ交換だからと雑に扱ってて壊してしまった

プロペラ水シールは完全に機能しており、浸水の痕は無かったが、アルミ内面に接する側面には塩というかアルミの錆というかが付着している

専門家はドライバを突っ込んで簡単に外せるというのだが、内壁に傷をつけそうで中々シールが外せなかった。そこで、先にニードルベアリングを外せば何とかなるかと、プロペラ側からドライバーを突っ込み、ニードルベアリングを叩いたらやはり割れてしまった。以前にも同じ過ちを犯したような気がする。

そこでシールを外すために急造した道具 3ミリの棒を曲げて先端を削っただけ。初めから工夫すれば良かったのだが・・・・これで引掛けて外すことが出来た。

シールをやっと取除き、レンチのソケットを押出しピンとして、万力でプロペラベアリングを押出した。そして内面を観察すると・・・・シールが嵌る位置にドライバの傷が付いてしまった。傷を大きくしないよう、鉄丸棒を差込んで擦り、どうやら表面の傷を滑らかにした。

クランクシャフトの傷状態:プロペラ側 オイルシールの当り面に筋が入り、メインベアリング当り面は荒れている。

前側も同様だ

前側メインシャフトオイルシールも異常無く、また矢印の脈動圧の送出口はきれいで、心配したような塩の付着は無い。
前側シールは再利用可能な状態 前側用メインベアリング、右は新品

恐怖の!マフラ内残滓
マフラに廃液が溜まって、いつまでもじくじくと出てくるのは普通だ。そのせいで始動しづらくなったことはあるが、それが大した問題だとは認識していなかった。
普通はばらしても内部はきれいで、今回も無用かと思いながら、まあ折角のオーバーホールだからと、仲間に作ってもらった治具で外した。その瞬間には思わず大声を発した程の驚きだった。廃液の塊・・・・残滓が一杯に詰まっておりショックを受けた。

残滓はペースト状で、逆さにして少し垂れる程度の硬さ。周囲温度は30℃

マフラ容積の3分の2程がこの残滓で埋まっていた!こんなことは初めてで、ホース排気にしたせいかと疑ったが、手入れを怠っていたので、冬の間に徐々に付着していたらしい。これでは、排気口から僅かに浸水しても、たちまちシリンダへ達してしまい、始動不良の原因となるだろう。今回排気ホース取付部から浸水して不調になったのは、まさにこれ故だったと思われる。

ぼろきれ、ガソリン、パーツクリーナでやっと清掃

仲間が実行しているように、毎回クリーナを吹き込んできれいにした方が良さそうだ。
全体を上下逆さにし、排気口から吹込んで揺すってから捨てるのだという。
マフラのOリングはいつもの如く、塩の結晶で表面が多少凸凹している。清掃しても凸凹が残るので、交換が望ましい。予備リング手持があると勘違いしていたが、再利用するか、新たに購入するかで現在もたついている。このOリングは組立後も交換が容易なので、このまま再利用し、もし不調ならその時点で交換しても良いだろう。
なお、外しにくいときは竹やプラスチックのへらを使うと安心で、金属では溝を傷つけてしまう。

以上本機オーバーホールの、分解までを取敢えず紹介した。
冒頭に記したとおり、次号で組立状況を紹介したい。
また、遠征結果なども示したい。
以上
Blog 第23回 キャブレタ塩詰りとオーバーホール① 終り
=小坂夏樹=
今回は長くなってしまうので、2回に分けることにし、作業内容を忘れないうちに早めに投稿することとした。本稿の続きと八丈島遠征・その他は、7月末を目標に投稿したい。
1、遠征先で始動不良=キャブレタの塩詰まり
Blog 第22回に記したように、6月の八丈島で排気ホースの接続部からAS650型に浸水してしまった。浸水は少量で、始動ロープを引くことが出来たため、上陸してプラグを外してみるまで本当に浸水なのか判らなかった。しかしその場で水抜きをし、内部をガソリン洗浄してそのまま数日に亘って使用することが出来た。これは通常の処理方法だ。
遠征終了時には内部にオイルを注入して現地に残置し、2週間後の再遠征時にも問題なく使用できた。そこで今回の水没の影響は全く無くなったと考え、再びオイルを注入して現地に残置した。
さて、更に2週間経ってまた遠征し、そのまま使おうとしたが・・・・エンジンが不調で初日は使えなかった。
症状としては、始動はするが、数秒でエンストしてしまう。1~2分後にはまた始動するのだが、やはりエンストする。暫く回転を維持することもあるが、繰返し始動しようとすると反応しなくなる。また試してみると同じ現象が起きるというもの。
プラグはきれいだが、それは燃料が充分送られてないことの証左だと見当を付けた。
そこで燃料系統の点検で、タンク内のフィルタ=つまり燃料吸込口が液面よりはみ出していないか、燃料コックが詰まっていないかなどと点検するも、異常なし。
仕方なくタンクを取り外し、キャブの点検をした。
流量調整膜を見ると正常な形状を保っており、問題ない。

キャブの混合気通路と吸気ポート(インテークマニフォルド)にも大量の塩などは付着しておらずきれいだ。


あれれ、キャブはOKだったのかとそのままキャブを取付始めたが、待てよ・・・・と、再度取外し、普通はトラブルが無いので気にしていなかったポンプ膜を念のために見ると、膜ではなくアルミ表面が異常に汚れているのが解る。慌ててガスケットとポンプ膜を取除いた状態が次の写真:

全体に汚い状態で、周りから海水が滲込んで塩が析出した部分もある。こんな状態になるまで多分半年以上点検していなかったと大いに反省した。
特に黒く変色して汚れのひどいのは、クランク室の脈動圧をキャブへ導く入口付近で、1の孔に塩が析出して通路を塞いでいた。
2の穴はめくら穴なので、塩がしっかり詰まっていたが一応機能には無関係と思われる。この穴は同じHDAシリーズキャブレタの、別の品番のキャブの為の物かもしれない。それとも、蓋の側に設けられた空間が脈動の蓄圧部の働きをし、その一部なのだろうか。私には理解できない構造だ。
この時点で、今回の「始動はするがすぐエンストする」症状の原因はこの塩の詰まりがポンプの駆動を妨げていることだと断定し、それ以上いじるのはやめて、キャブを持参の予備品に交換することとした。
ポンプの機能が低下し、燃料は僅かづつ上部燃料溜まりに送られるだけになってしまっている。そのため始動はするが、補給が追い付かず、すぐエンストする訳だ。
整備済みキャブのポンプ部アルミ表面はこのようにきれいな状態だ

キャブ交換、赤茶色に見える部分は、ガスケット自作のため型を取った朱が付着している。

キャブ交換後は水密テストをすべきだが、漏れやすいエルボはエアタンク側のみ取外したので、その部分にボンドSUを塗り、他にはシリコングリスを塗って済ませた。
一応これで調子は戻り、2日目からは正常に使うことが出来た。この脈動圧伝達部分の塩詰まりによる不具合と言うのは初めての経験だった。
2、持帰ってのキャブ点検修理
次の写真では、脈動圧は吸気ポートに接する1から2へ伝わり、3の溝形空間(蓄圧部?)を通り内部へ導かれるが、その肝心の2の孔が塩で塞がりかけていた。その元になる海水は、ガスケットの隙間から浸み込んだ可能性も否定は出来ないが、普通に考えればクランク室から来たわけで、更に途中の通路にも塩が析出しているかもしれないと心配した。しかし遠征先では魚突き優先でそこまで点検などしてられない。そのまま数日間快調に使い、今回は本機を持ち帰って整備した。なお、4は上に触れたように、3につながるめくら穴で、機能は不明。

このような塩の析出や汚れを見ると、やはり一旦水没したら、内部を徹底的に清掃した方が良さそうだ。また、海上では浸水せずとも、少量の塩分は常にスノーケルから吸込まれている筈だから、内部の点検も適度に必要と思われる。
また、汚れが内部に溜まらぬよう、間を置かずに=毎週?= ある程度運転した方が良いとも思われる。このことは、本ブログ第19回で、離島の仲間の使用法として紹介した通りだ。
本機は常に持帰り、手入れを怠らぬようすべきだと、またも思い知らされた。
キャブの修理
内部をよく見るとベンチュリ部にも少し塩が析出していたため、ニードルバルブ、バタフライバルブ軸などを外して清掃した。流水で洗い、パーツクリーナを吹付け、グリスアップなど済ませた。ポンプ部のキャブボディ表面は、下の写真程度に水ペーパーで磨き、ポンプ膜は勿論新替した。

チョークバルブ軸の動きが固かったが、これもグリスを詰替えた。この部分は使用頻度にもよるが、1年も使うとグリスが固まったり流失したりしてしまうようだ。水に漬けると滑らかに動く事が多いが、鋼球をバネで押し付けて節度を持たせているので、基本はグリス交換が必要だ。重要部分ではないが、一応気を配っている。
なお、浸水して固くなったアクセル軸を直すComer社サービスセンタのビデオを以前紹介した:
https://www.youtube.com/watch?v=PXl1obytAX4
折角アクセル軸からバタフライを外し、清掃・注油したのだから、ついでにチョークバルブ軸のグリス交換もしたら良さそうなものだと、このビデオを見ながら思ってしまう。
以上の様に、難しい整備はせずにキャブの整備は完成したものとして、これを今度は予備キャブレタとして遠征に携帯することになる。
泊りがけの遠征にはこのように、予備部品と必要な工具を必ず用意している。
本機と共に携帯すべき工具をしつっこく繰返し紹介してきたが、何はさて置きL/H調整ネジ回しは必ず本機に取付けてある。プラグレンチは、入水前に必要になることも多く、これも本体に(私の場合は取っ手に)取付けて絶対に持って行く。点火プラグは安心料とも言えるが、これらは謂わば三種の神器と言うべきか。
3、本機のオーバーホール=恐怖の残滓
このようにキャブの塩詰まりを経験して、改めてエンジン内部が気になってきた。またBlog第21回で紹介した、仲間のスーパーマグナム・プロペラシールからの浸水も気になって、分解整備をすることにした。今回のアクアスクータは、途中まで分解したことは有るが、ベアリング、シール類を交換したのは多分09年の購入以来初めてだ。
内部はきれいだと初めだけは安心したものの、分解が進むにつれて重大なトラブルが判明した。
通常通りタンクを外し、キャブレタ周りを取外す。スタータ部を外したら、フライホイルプラーを使ってフライホイルを外す。ここまでは何も異常はない。
高圧部には、点火タイミング合せ用に、初めからCDIユニットの止めネジ位置にマークが付けてあるが、更に印を付けた上で取外した。

クランク室はトラブル時の処置が効いたらしく、きれいで保存用に滴下したオイル?が排出されずに僅かに残っていた。

ピストンが露出すると、スカートに擦れ痕があり、嫌な予感がした。

ピストンの反対側をみてびっくりしたが、縦傷が走っており、もう駄目かと観念した。焼付し掛かった可能性が大だが、縦傷はひどく深くはないし、ピストンリングもシリンダ内壁もきれい、何より予備品が無いので今回はそのまま再装着しようと考えた。

ピストンが首を振っているらしいが、触った感じでは特にがたがたする感じではない。小端部ベアリングの予備も無いので、やはりこのまま再利用しようと思った

しかし仲間の強い勧めでピストンピンを抜き、小端部ベアリングを見ると驚いたことに、ベアリングの縁が割れているではないか。この事とピストンスカートの傷との間に因果関係があるのかもしれない。

ピストンピンの表面もかなり荒れている。

交換用のベアリング(10x14x10) は仲間が融通してくれるというので安心し、このベアリングを、コネクティングロッドから外そうと、レンチソケットと万力を使って押出した。
だが、作業は失敗・・・・受けに使ったソケットが小さすぎて、押出したベアリングケースがソケットに圧入された状態になってしまった。
仕方なくまたしても反対側からドライバで叩いたところ、縁が割れるが取り出せない。

結局鏨で叩き壊して取り出した。それでも、なんとかベアリングケースの状態は観察できた。

縁のひび、欠けにまで至ったとは、ひどい油切れだったのだろうか。こんな状態を見ると、乾燥目的で空回して温度を上げたり、燃料を止めて停止するのはやめるべきかと感じる。燃料が止まれば潤滑油も無くなるから、このベアリングには厳しいことになる。
チョークバルブを閉じて、濃い混合気で失火させて停止する方法は、未燃潤滑油が残ってこのピストンベアリングには良いのかもしれない。ただ、今まではプラグ被りの原因になりかねないとして私は好まなかったのだが。


こちらは取外した、クランクシャフト後側、つまりプロペラ側のベアリングやシールなど

メインベアリングは再使用可能な状態だった。オイルシールはどうせ交換だからと雑に扱ってて壊してしまった

プロペラ水シールは完全に機能しており、浸水の痕は無かったが、アルミ内面に接する側面には塩というかアルミの錆というかが付着している

専門家はドライバを突っ込んで簡単に外せるというのだが、内壁に傷をつけそうで中々シールが外せなかった。そこで、先にニードルベアリングを外せば何とかなるかと、プロペラ側からドライバーを突っ込み、ニードルベアリングを叩いたらやはり割れてしまった。以前にも同じ過ちを犯したような気がする。

そこでシールを外すために急造した道具 3ミリの棒を曲げて先端を削っただけ。初めから工夫すれば良かったのだが・・・・これで引掛けて外すことが出来た。

シールをやっと取除き、レンチのソケットを押出しピンとして、万力でプロペラベアリングを押出した。そして内面を観察すると・・・・シールが嵌る位置にドライバの傷が付いてしまった。傷を大きくしないよう、鉄丸棒を差込んで擦り、どうやら表面の傷を滑らかにした。

クランクシャフトの傷状態:プロペラ側 オイルシールの当り面に筋が入り、メインベアリング当り面は荒れている。

前側も同様だ

前側メインシャフトオイルシールも異常無く、また矢印の脈動圧の送出口はきれいで、心配したような塩の付着は無い。

前側シールは再利用可能な状態 前側用メインベアリング、右は新品

恐怖の!マフラ内残滓
マフラに廃液が溜まって、いつまでもじくじくと出てくるのは普通だ。そのせいで始動しづらくなったことはあるが、それが大した問題だとは認識していなかった。
普通はばらしても内部はきれいで、今回も無用かと思いながら、まあ折角のオーバーホールだからと、仲間に作ってもらった治具で外した。その瞬間には思わず大声を発した程の驚きだった。廃液の塊・・・・残滓が一杯に詰まっておりショックを受けた。

残滓はペースト状で、逆さにして少し垂れる程度の硬さ。周囲温度は30℃

マフラ容積の3分の2程がこの残滓で埋まっていた!こんなことは初めてで、ホース排気にしたせいかと疑ったが、手入れを怠っていたので、冬の間に徐々に付着していたらしい。これでは、排気口から僅かに浸水しても、たちまちシリンダへ達してしまい、始動不良の原因となるだろう。今回排気ホース取付部から浸水して不調になったのは、まさにこれ故だったと思われる。

ぼろきれ、ガソリン、パーツクリーナでやっと清掃

仲間が実行しているように、毎回クリーナを吹き込んできれいにした方が良さそうだ。
全体を上下逆さにし、排気口から吹込んで揺すってから捨てるのだという。
マフラのOリングはいつもの如く、塩の結晶で表面が多少凸凹している。清掃しても凸凹が残るので、交換が望ましい。予備リング手持があると勘違いしていたが、再利用するか、新たに購入するかで現在もたついている。このOリングは組立後も交換が容易なので、このまま再利用し、もし不調ならその時点で交換しても良いだろう。
なお、外しにくいときは竹やプラスチックのへらを使うと安心で、金属では溝を傷つけてしまう。

以上本機オーバーホールの、分解までを取敢えず紹介した。
冒頭に記したとおり、次号で組立状況を紹介したい。
また、遠征結果なども示したい。
以上
Blog 第23回 キャブレタ塩詰りとオーバーホール① 終り
=小坂夏樹=