Title:空間のオブジェ/アクリル画
以前、具象の作品「私ではない誰か2」の表彰式で、抽象専門の批評家の先生に、「絵描きはカナリア」という主旨の希少なご意見を伺える機会に出会えました。
具象画でカナリアになれるかは分かりませんが、また自らカナリアになりたいと思うのも間違いですが、「自分で何を描いているのか分かっていない」作品が描けなければならないのかもしれません。
それが意味するのは、学生時代の教授の「絵描きは分かっていない」という痛烈な批判に、自ら怒られるのを承知で向かっていってしまうシーンが浮かんでしまいます。
もし、そのときそれを描いてしまっていたなら、卒業できずに今の自分はいません。
小さい頃、西洋写実表現を写実主義にまですすめず、あるいはすすめられず、自然主義的な現象に重きを置いてデッサンを描いていた理由の一つとして、「描きたかったのは、絵なのではないか」という答えを出して、この作品を描きました。
まだ、答えを出すには早すぎたのかもしれません。
「空間のオブジェ」というタイトルは、絵画について学習した鑑賞者ではなく、絵描きの目で見てもらいたかったからです。
それは、私の思い描く鑑賞者でもあります。
それに耐え得る絵画となると、その答えが分かってしまうとカナリアにはなれませんが、描いていたのはデッサンではなく素描であり、まだ素描としては、ポジティブに思えば、可能性がありすぎるのだと思うことにしています。