『夢』
『どろどろ』
夢は赤や黒や白のどろどろの世界である。その中からいつしか「私」という思考が作られていくが、
まだ思考のみで形は作られていない。私はそれに成る程と思っている。
『デートにお邪魔』
私はある男性に誘われてコンサートか何かに行く。私は黒いフレアのワンピースを着ている。
その人は眼鏡をかけた女性を連れている。二人は恋人同士のように見える。
私は彼女よりも私のほうが魅力的だと思い込んでいる。
屋根のないリキシャーのような乗り物で会場に向かうが、二人は私とは全く関係のない二人だけの話をしている。
私は誘われて来たのに、会話から全くの仲間はずれにされているのは、つまらないし、
二人の態度は失礼だとも思っている。同時に私が二人のデートを邪魔しているような気まずさも感じる。
だけど一人沈黙しているのも悪い時間の過ごし方ではない。
コンサート会場は本当に薄暗い。ロビーもそうだ。人の姿がシルエットで見える感じである。
男性と連れの女性は勝手に二人がけに座ってしまった。私は少し離れたベンチに一人で座った。
しばらくすると隣に男性が一人で座ってきた。お連れはどうしたのだろうと思うと
彼は突然私の身体を触り出した。女性はすぐ傍の二人がけテーブルにまだ座っているようだった。
「やめてやめて!」と背を向けたが、覆いかぶさって背中にキスをし続ける。
私はその男性とそういう中になりたくないと思った。逃げようと思うのだが、どうしてもふりほどけない。
感情的には嫌だが、肉体的には背中が気持ちがいいようにも思える。
それは私に与えられている唯一の生きた肉体の持つ温かみのように思えるからだ。
突然身体が動くように思ったので振り返ると、
上から見下ろした男性が私に向かって勝った様な馬鹿笑いをしている。
私は彼の邪悪さと醜さを心底感じ、
ものすごく頭に来て右の鉄拳でぶんなぐると彼はぶっ倒れて私の視界には見えなくなる。
途端に周りの人の視線を感じる。
こんな場所で身体にキスをされていた私は好機と嫌悪の目で見られていたのではないかと思う。
私はロビーから立ち去る。
『映画』
私は劇場の椅子に座る。しかしそれは私の見るべき作品の上映するホールではないようである。
お客は多く、取れてほっとした座席ではあったが会場から出る。
全ては薄暗い。シルエットのように闇にとけこんだ人たちが行きかっている。
階段の上にチケット売り場があるようだ。見たい映画はチャップリンの映画のようだ。
そこに映画のヒロインのように着飾った母がいる。若い姿だ。彼女も同じ映画のホールを探している。
私たちは幾分か他人行儀な感じもするが、私はここで知った安心できる人に会えたのが嬉しい。
切符は買ったが、彼女には会場がわからない。
「お母さんこっちだよ!」
私は映画館の入り口で叫ぶ。
これらの夢の中の私は、まるで誰からも認識されていないかのような気にもなる。
最後の母が私に気付いていたのかもはっきりとわからない。
唯一私が見られたと思えたのは私にキスした男性が笑った時だが、その時の彼の顔は頭のイカレた悪魔のようである。
日常的にコミュニケーションを取り合う人間に向けられた顔とは思えない。
夢の中の私は、夢の住人、からは同じ人として存在していなかったのかもしれない。
気がついたけど、父はちょっとだけチャップリンに似ているのかも。
画像はラクガキ、優等生の生徒会長と不良の馬
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