霧の中の赤いボール
サッカー日本代表 今年最後のゲームは、オーストリアでの対メキシコ戦。
時差の関係で試合開始は11月17日、日本時間の午前五時、すこし早寝していてもやはり眠い。
コロナの関係で観客無人の試合、在オーストリアの前・日本監督のオシムさんも自宅での観戦であったよう。スポニチとのインタビュー(11月28日配信)では「ちょうどメキシコ戦の前日から昼間の外出も制限され、ロックダウンが強化された。こういう状況で試合をアレンジしたサッカー協会、代表チームの選手・スタッフのみなさんは大変だったと思う。試合は無観客だったが、直前で中止になってもおかしくなかった」と話されている。
ご覧になっておられない方も居られると思うので、すこし説明を加えておこう。
終わってみれば圧倒的な力の差といえるのだろうが、前半12分にMF原口元気がカットインから強烈なミドルを放つ。同15分には原口のラストパスからFW鈴木武蔵が相手ゴールキーパーと一対一の決定機を迎える。老練な岡崎がいたら相手ゴールキーパーの動きを察して、ボールをフワッと浮かしたかもしれないが、鈴木は一直線に押し込もうとして阻まれる。こぼれ球を拾ったMF伊東純也のシュートも、相手GKに阻まれた。
テレビに釘付けで観ている当方にとって、瞬時、瞬時の相手ゴールキーパーの神業的運動神経に、悔しさ7分だが感嘆せざるを得なかった。この間〆て十数分くらいか、終わってみればこの時間帯が眠気も冷めて、テレビにかじりついていたことになる。
後日(19日)サッカージャーナリスト中山淳さんの談を読むと、ウ~ンとうなってしまった。
前半の25分前後のシーン。
伊東に激しいチャージを受けた相手15番は、ホイスッルが鳴ると、伊東の胸を手で押して威嚇、その後レフェリーは二人を呼び、特に伊東に注意をうながした。
その2分後、今度は逆サイドで鈴木がジャンプしながらチャージした場面で、ファールを受けた相手2番が、立ち上がろうとした鈴木の背中を両手で押して威嚇。危険なチャージをした鈴木にはイエローカードが提示された。
メキシコにとって苦しい時間帯の出来事、「親善試合では怪我の危険性のある激しいファールはするな!」のアピールで、日本側はそれから大人しい守備に一変されてしまった。
これが、それ以降メキシコがボールを握ってリズムを取り戻した要因のひとつであり、メキシコ選手たちのしたたかさと経験値を示した、と指摘されている。
オシムさんも「前半25分以降、日本の
チャンスが途切れたのは、メキシコがや (写真あり)
り方を変えてきたからだ」と話されている。
前半の終わりころから霧が立ちこみ始め、後半からは赤いボールが使用された。
写真は日本サッカー協会提供のもので
後半戦の終わりに近いシーンだが、テレビの画面ではこれほどはっきりとは見えなかった。選手たちにはこの程度の感覚で見えていたのだろうか、テレビでは突然選手が現れたり、消えてしまったり。
もちろん監督やベンチの指示も見えなかったに違いない。
メキシコは後半12分と18分にシュートとドリブルで2-0とし、そのまま押し切った。
今年の親善試合はこれで終わった。
一勝一敗二分け、強い相手FIFA11位のメキシコとはやはり力の差が歴然としていた。
仮に前半に得点が入っていても、後半では押し切られて負けていただろうというのが大方の見方だがオシムさんも含めいまの日本に不足するのは、選手とチームの「自主的判断力」との指摘が多い。
オシムさんはつぎのようにアドバイスされている。
「ベンチの指示を待たずに、選手同士が話し合い、対応できるようになってほしい。ベンチからの声は満員のスタジアムでは聞こえない。相手が変化してきた場合、選手こそが相手の最も近いところにいるのだから、自分たちで意見交換して修正しなければならない。そういう能力や習慣を身につけてもらいたい。日本人のもっとも苦手な分野であると知っているからこそ、あえて言っておきたい」
霧の中から飛んでくる赤いボールは、サッカーボールだけとは限らない。
オシムさんのアドバイスには、もっと深い意味が込められているのかもしれない。
(2020年12月2日 記) 霧の中から
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